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十社様物語 その①

神武天皇の兄であり、高千穂神社の祭神である「三毛入野命」またの名を「十社様」。高千穂一帯を荒らしていた「鬼八」を退治したという高千穂に残される神話は一度は聞いたことがあるだろう。

もしかしたら、その高千穂では王道な物語は実は知らないのではないか?

今回はその王道な高千穂でしかない神話をまとめてみようと思う。

三毛入野命(以下命とする)は神武天皇と共に大和地方へ国の平定のため向かわれた。

がしかし、海上風波により、常世の国へ行かれてしまう。

常世の国より、日向の国、戸鷹の宇戸へ入られた。

※ 現在の日向市大御神社内、鵜戸神社

「さて、どこへいったらよいものか?」

と迷っていると、ある所より高い山があるというお告げがあった。

そこへ向かう途中、ある峰を見てみると、何やら光るものが見える。

あれは、我らを妨げようとするものではないか!?と深山へ入って行った。

ここが高千穂の峰というところである。

高千穂郷へ入るや旧七折村において、川水が氾濫し、容易にわたることができない。そこで里人たちにその浅瀬を聞き、そこに綱を張り渡し、これに取りすがりながら渡ることができた。それで、この川を『綱の瀬川』といい、この地域を『綱の瀬』といった。

さて、次に阿下集落へ命が通過された際、ここに御泊まりになった。その際、ある岩に旅衣をかけた。
よって、ここの地名を『御泊(おとまり)』といい、この岩を『座敷のもと』という。
更に上り、舟の尾を通過の際、食糧を入れた俵を積み重ねた所を『俵石』という。

ある所へ来ると、高千穂一帯を支配していた鬼八は何者かが、向かってきている情報が入ったのか、神通力を使い、俄かに大雨を降らせ川水を増やさせ、進路を絶とうとした。

命は「いったい誰の仕業なのだ!」とお怒りになり、「まだ雨は止まぬのか!」と、空を仰ぎ、天つ神にお祈りになった。
すると、不思議にも雨ははたと止み、日の影が射し始めた。

※ イメージです。(恐らくこのようなじょうたいだったのではないか。)

川水は見る見る減り、川を渡ることができた。
よって、この地を『日之影』という。

その後、命は現東宮水森下(もした)を通過の際、俄雨にあわれ、路傍の樟の大木の洞で休憩された。雨が止み出発の際、記念に自然石二個を安置された。里人はこの神石を御神体とし、命を奉祀し、現在は宮水神社に合祀され、この自然石も同社に存している。

命は宮水で大雨に遭われ、袴のすそが泥で汚れてしまった為、里人は汲んでいた水でこれを洗われた。よって、この地を『袴谷』という。

次に波瀬地区へ入る。ここで休息した際に腰掛けた岩を『腰掛石』といい、中が少し窪んでおり降雨の時は二合ほどの水が溜まるという。

※ 波瀬神社入り口にある。

また更に上っていくと、喉の渇きを覚え、路傍の清水を掬って召し上がられた。その水があまりにも美味しかったので「ああ、一の水だ〜」と称され、この地を『一ノ水』という。

※ 一ノ水神社

鹿川地区を越え、諸和久に着かれた命は同行していた祖母(乳母との説も)の杜女の命が旅の疲れから病床に伏せてしまった。仕方なく、村人に頼み、命は先を急ぐこととした。

つづく

参考文献
日之影町史
高千穂の故事伝説・民話
高千穂皇神の御栄え
旭大神十社大明神記
高千穂十社御縁起

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平井俊徳
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