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「菜根譚」を読む

拝啓 奥さんへ

「菜根譚」は、明末の洪自誠によって書かれた処世訓ですが、中国ではあまり重んじられず、かえって日本の金沢藩の儒者、林蓀坡によって文政五年に発行され、当時の我が国の人々に盛んに愛読され、文政八年にも重刊された書です。

「菜根」は「人はよく菜根を咬みえば、すなわち百事をなすべし」という故事に由来し、「野菜の根は非常に硬いが、それをかみしめるように、苦しい境遇に耐えることができれば、人は多くのことを成し遂げることができる」という古事に由来しています。

それでは、夫の好きな言葉をピックアップしてご紹介します。

耳中、常に耳に逆らうの言を聞き、心中、常に心に払るの事ありて、わずかにこれ徳を進め行いを修むるの砥石なり。もし言々耳を悦ばし、事々心に快ければ、便ちこの生を把りて鴆毒の中に埋在せしむるなり

菜根譚

耳にはいつも聞きづらい忠言を聞き、心にはいつも思い通りにならないことがあったならば、それではじめて人間を徳に進ませ、行いを修めることのできる砥石のような役割をはたすものとなるだけである。もし、言われる言葉がすべて快く耳に聞こえ、物事がすべて心に満足するようなら、そんなことではこの人生を自分で猛毒の中に投げ沈めてしまうようなものである。

理想の環境のようなものは存在せず、人生を猛毒の中に投げ沈めてしまうようなものという表現がいいですね。普段の日常生活が良く思えてきました。

醸肥辛甘は真味にあらず、真味は只だ是れ淡なり。
神奇卓異は三至人にあらず、至人はただ是れ常なり。

菜根譚

味の濃厚な美酒美肉や、辛いものや甘いものは、本当の味ではなく、本当の味は、ただ淡泊なだけの味である。
これと同じように、すぐれた人や他に抜きん出た人は、本当に道をきわめた人ではなく、本当の至人は、ただことさらに平凡な人なだけの人である。

こちらも平凡な夫としては勇気をもらえる言葉ですね。ついついグルメな食事に走ってしまいがちですが、やはり毎日の食事は淡泊なものが良いですね。

人と作りて、甚の高遠の事業なきも、俗情を擺脱し得れば、便ち名流に入る。学を為して、甚の増益の功夫なきも、物累を減除し得ば、便ち聖境に超ゆ。

菜根譚

平凡な人間と生まれて、特別になにも高尚で遠大な事業をしなくても、ただ名誉や利益にひかれる世俗的な心を払い落せたなら、それで名士の仲間に入ることができる。
学問をなして、特別に何も学識を増す努力をしなくても、ただ外物によって心をわずらわせることを減らし除くことができさえすれば、それでもう聖人の境地に到達できる。

これも日々の生活を見直す教訓となりますね。
菜根譚は寝る前に毎日2ページくらいを読むことにしています。
寝る前に心に染み入るような言葉を聞くのはいいですね。多謝。



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