初心者用、お話の構成。プロットとシーンのリズム:おはなしを書くこと4
こんにちは、くぼひできです。売れてない作家をやっています。ジャンルは児童文です。児童文学というほうが一般的です。noteでは大人向けの話も載せました。
創作論の4つめ。今回は構成の話。
プロットが必要かどうか、というのは、創作関係の人の話に必ず出てきますね。小説創作サイトなんかでも盛り上がる話題です。
プロットが必要かどうかといえば必要なんですが、事前に作る必要があるかどうかといえば、条件があります。
作品によるし、人による。
のです。その人の筆力や調子、集中力、時間。興味の持続性。ほかの仕事(労働や家事)との兼ね合いで変わるものです。
私事ですが、『カンナ道のむこうへ』という本になっているわたしの作品は、最初は「カンナは夏に」という公募原稿でした。一回とある地方の賞に出して落ちて、数年後に少し手を入れて出したところ日本児童文学者協会の長編児童文学新人賞をいただき、小峰書店から出版していただきました。毎年増刷していただいてありがたい限りです。
内訳をはなすと、あれは150枚の原稿です。小6の女子が主人公ですが、それくらいの学年ならその枚数で1冊の長編です(量を読める子には少ないけど、お話読むのが苦手な子には大長編)。
あれはお話らしいお話がないんですよね。主人公が「将来の夢」について考えなくてはならなくなって、それをひと夏延々悩む話(このあたりyamada5さんがやってる「児童書読書日記(仮)」での評がくわしいです)。
この話、最初からプロット組むのって逆に難しいんですよ。そしてこれを初めて書いたころは、いつも力まかせに書いてたのでプロットなんて組んだこともなかったのです。この150枚も力まかせでした。
地元は広島なんですが、締切の数日前に大阪の1泊千円の安ホテルに泊まりこんで、2晩くらいで書いたんです。一度、Kinko'sという出力できる店で印刷して紙に赤入れ推敲して、それで手直ししたものを投稿しました。
だからプロットがない。
でも筆力があればとりあえず150枚くらいは書けるのですね。それは二つ前くらいの「おはなしを書くこと」でしるしたように、短編の書き方をある程度心得ていて、それで節ごとに区切っていったからです。
では、まったくプロットを意識しなかったか。というとそうではありませんでした。
枚数制限がありましたし(最初の落ちた賞は120枚で、あとの賞が150枚)、それを超えてもいけないし、少なすぎてもいけない。
だからちょうど真ん中のあたりにプロットポイントを置こうと考えました。さらにその前後をさらに二つにわって、プロットポイントを置こうと。
となると、1作品のなかにプロットポイントが3つありますね。1/3ずつ出てきます。そこで少し話に変化が起こる。子どもの何気ない日常ですが、それでも変化はあるものです。
となると、120枚なら30, 60, 90枚め。150枚なら37, 75, 112枚め。前後すこしずれるにしても、それくらいにポイントをおく。
『カンナ道のむこうへ』では真ん中のポイントで、リアリズム作品なのに主人公が精霊と出会います(作中では本物の精霊か白昼夢かをあいまいにしています。出会ってしまった人にとっては本物ですしね。ある意味、マジック・リアリズム)。
あと、1節の長さを考えました。マンガに慣れている子達が読めるように、1節がだらだらしてないほうがいい。このへんは昔、眉村卓さんがエッセイで「(昭和40年代に)最近の子は昔のようにだらだらしたものは読めない。だから1つの区切りで5枚か6枚くらいがちょうどいい」と書いてらっしゃったのを思い出しました。で、そこから時代が下っているのだから、4枚くらいでやってみようと(例外はあり。本にするときは5枚にしました)。
1節は1シーンです。1シーン1見開きと考えればある意味、マンガの構成のようでもあります。
1節4枚なら全体120枚は30シーンになります(1節5枚でも150枚は30シーン)。
とすると7or8シーンめ、14or15シーンめ、20~22シーンめあたりがプロットポイントです。
あの頃のスタイルは1行目が降りてくるまで延々悩み、良い1行目が出てきたらすらすら書いていくというイタコスタイルでした(このへんは今も変わらない。良い1行目は作品のテイストを決めます)。
あるシーンを規定の枚数くらいで終わらせる。終わらないなら削ったり、次のシーンや別のシーンに入れる。1つのシーンを2分割した場合も、それぞれのシーンに別の意味合いをもたせる。プロットポイントには絶対に何かをいれる。入らないでだらだら続いてたら、前に戻ってシーンごと削る。
と、こういった感じで、書きながらプロットをしていったのです。プロットって「置く」って意味もありますよね。トランプなんかでもそういうことがあります。タロットとかでも。だからシーンを置いていけば書ける。
プロットポイントおよびシーン枚数という2つの道しるべによって、リズムをつくることができました。
そういう方法もあるということなのです。
最初に、作品による・人による、と書いたのはこういう感じなんですね。その後、完全に最初にプロットを建てた作品を書いてみました。それはそれで書きやすかったですが、公刊されてないので今は内緒です。
プロットを書いたほうがやりやすいという人はそうする。考えずに書くほうがいい人はそうする。どちらにも大事なのは柔軟さです。
プロットが必要な人は、プロットを途中で崩すことが必要ならためらわずにそうしてください(あらたにその先のプロットを組めばいい)。
プロットがいらない、書けないという人は、つれづれと書いていくことになりますが、竜頭蛇尾になったりだらだらしたり尻切れトンボになってしまわないために、書くためのリズムを外形的な数値に落としこむ(いつ最終回になるかわからない作品をネットに連載するとしたら、各話を同じ行数くらいにして最後は必ず引きにする)。
まあでも初心者用と言っているので、おそらく勢いで書く人向け。ならばリズムを作っていきましょう!
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