〈データ分析〉ビジネスデータ活用の方向性〜4つのシナリオ〜
こちらの記事は一時ブログに移していましたがNoteに戻しました。
Noteのエディタの方が書きやすくて手が動く、という理由です。
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こんにちは。くにです。
ビジネスでデータを活用していくという話は、ますます重要になっていますね。これはWebサービスを展開する企業だけでなく、リアル店舗を持つような企業も同じだと思います。
例えば、スターバックスはデータテック企業だという記事もありました。店舗のマーケティングだけでなく、不動産や商品開発にも影響を与えているというのは大変興味深いです。
ところで、みなさんはビジネスでデータを活用すると聞いてどのようなイメージを持ちますか。それはWebサービスのA/Bテストのようにグロースハック的なものでしょうか。それとも、スターバックスの事例にもあるような店舗ビジネスでの活用でしょうか。
この記事では、ビジネスでのデータ活用の方向性を整理してみます。具体的には、以下2つの観点で考えます。
観点1: 何のために活用するのか?
観点2: 何をターゲットとするのか?
サマリーを初めに掲載しておきます。以下の図のように、2つの観点の組み合わせで、ざっくりと2×2=4のシナリオを考えることができます。
以下では、2つの観点をひとつずつ取り上げて、その違いを考えていきます。最後に、冒頭で引用したスターバックスの事例に戻り、スターバックスがどういった狙いでデータを活用しているのか探っていきます。先に結論を言うと、スターバックスでは、これらすべての領域でデータを活用していることがわかりました。すごいですよね。
本記事は、ビジネスサイドの方にとっては、どのようなビジネスシーンでデータを活用できるのか、アイデアの広がりを把握する上で参考になると思います。一方、データサイエンティストやエンジニアの方にとっては、上流検討や問題設定での問題の切り分けに参考になるでしょう。
観点1: 何のために活用するのか?
ビジネス上のデータ活用は多種多様です。需要予測、製品開発、ECサイトのレコメンドなど、実に様々なシーンで利用されています。しかし、これから新たにデータ活用をしてみよう!と思い立ったとき、どこから手を付けたらよいか分からなくて困ったことはないでしょうか。逆に、チームメンバーでブレストをしたらいろんなアイデアが出てきてしまって、収集がつかなくなったということはないでしょうか。
このようなとき、「目的を明確にしましょう」とよく言われます。つまり、データを使って何がしたいのか明確にしましょうということですね。言い換えると、どういうビジネス課題に対して、データを活用したいのかを明らかにするということです。これはどのようなプロジェクトでも大切なことだと思います。
しかし、目的を明確にせよ、と言われてもなかなか答えるのが難しいこともありますね。そこで、まず以下の問いに答えるところからスタートするのが良いと思います。
「誰のどんな業務を改善したいのだろうか。」
「データ分析の結果や予測した結果を誰に見せたいのか。」
「誰の行動を変化させたいのか。」
誰のためのデータ活用か、ということを改めて考えてみましょう。
そんなことは分かりきっているよね、と思う方も多いかも知れません。しかし、こうした本質的なところを確認していくと、プロジェクトメンバーで意見が違うこともよくあります。
例えば、画像データを使って製造プロセスの改善をやりたいと思ったとします。これだけだと情報が足りませんね。それは、製造プロセスそのものの問題を発見したいのでしょうか。それとも、製造の品質検査作業を効率化したいのでしょうか。どっちもやりたくなるかもしれませんが、プロジェクトの方向性は大きく違う気がします。
製造プロセスの問題を発見するというケースでは、製造ラインの管理者や経営層向けにデータを活用するという話になります。これは意思決定支援といってもよいでしょう。
一方、品質作業の効率化のケースでは、エンドユーザーが品質検査員ということになりますね。こちらはビジネス的にいうとオペレーションの効率化ということになります。
ビジネスでのデータ活用は、意思決定支援とオペレーションの効率化で実は大きくアプローチが変わってきます。このため、誰のためのデータ活用なのか、という問いを明らかにすることはとても重要なのです。
◆意思決定支援の場合
意思決定支援の場合、データ活用の目的は、少数の経営層や専門職に対して、その判断を助けるための定量的な情報を提供することになります。データから洞察された情報は、ビジネスの重要な意思決定に利用されます。しかし、その洞察は参考情報の位置付けで、その情報だけで100%決まるようなものではないでしょう。ビジネスインテリジェンスとでも言うべきものだと思います。最終的には意思決定者の選択に委ねられるのです。
こうした経営層や専門職における意思決定は、判断が難しいものが対象となります。100人が100人とも同じ答えになるようなビジネス課題は対象とはならないでしょう。もし100人とも同じ答えを出せるような問題なら、それはオペレーションの領域になってしまうからです。
この場合、意思決定者がデータから得られた洞察を活用するのですから、明快さや説明性が重要になります。したがって、分析のアプローチとして、可視化やシンプルな統計モデルがよく使われることになります。
◆オペレーション効率化の場合
データ活用によってオペレーションの効率化を目指す場合、今の作業プロセスで非効率な箇所を特定し、それを自動化することがゴールとなります。したがって、まず自動化をしたい箇所を見つけなければなりません。
この対象を見つけるためには、まず今の作業プロセスの詳細を明らかにすることから始める必要があります。具体的には、プロセスと情報をあわせて紐解いていきます。この時点では、実現可能性や技術選定に走らないのが大切です。ここで技術から入ってしまうと、それに引っ張られてしまうからです。
データ活用において特に重要なのが「情報」です。情報にはITシステムの中にあるものと、システム外で人が参照している何か、そして人の暗黙知が含まれます。そして、その情報を見た人が100人いたとして、その内80人くらいが同じような判断を下すような作業が自動化の第一候補となります。もし100人が100人とも同じ判断をするようなものだったら、それはルール化できるようなものでしょう。
オペレーション効率化のもう一つの対象が、検索のようにもともと不確実性のある作業です。例えばある調べ物に時間がかかるとき、それをそっと支援しようというタスクになります。企業内の総務への問い合わせ対応を効率化するようなタスクや、ECサイトにおけるエンドユーザーの商品検索を効率化する話もあるでしょう。
最終的にはシステム化が必要になります。このため、機械学習的なアプローチが好まれます。
観点2: 企業内か外向けか?
ここまで、ビジネスでのデータ活用を考える1つ目の観点として、誰に向けた話かということを書いてきました。これに加えて、その対象が企業内に価値を与えるものか、それとも外向けの商品やサービスに付加価値をつけるものなのか、という観点で分けて考えることも重要になります。これが2つ目の観点です。
◆企業内業務の場合
企業内の業務をターゲットとしたデータ活用というのは、どういったものでしょうか。分かりやすいところでは、経理、人事、総務、製造、情報管理といった企業内の業務そのものが考えられます。この場合、更に観点1で考えた意思決定支援とオペレーションの効率化に分けられます。
・企業内の業務×意思決定支援
企業内の意思決定とは、まさに経営管理や構造改革に直結するような経営判断です。会社のヒト・モノ・カネ・情報といったリソースが分析の対象となります。このため、実験的なアプローチというよりは、現状課題の把握から始めることになり、自然と観察研究的なアプローチとなるでしょう。
・企業内の業務×オペレーション効率化
一方、企業内のオペレーション効率化を対象とする場合、作業プロセスの改善が主たる目的になります。したがって、仕組み化できることが優先されます。これまでITシステムを導入してきたような業務も含めて全体を見直し、データ活用の目線でプロセスを刷新するような取り組みになります。ルールベースの外側にある業務をあぶり出し、システム化の最適化の範囲を再発見するようなアプローチとなるでしょう。
◆外向けの場合
外向けの商品やサービスに付加価値をつけるためにデータを活用しようというケースを考えます。もっとも分かりやすい例はWebサービスでしょう。こちらも、観点1で考えた意思決定支援とオペレーションの効率化に分けられます。
・外向け×意思決定支援
スタートアップ企業は、市場のニーズを見つけて素早くWebサービスをリリースし、継続的にUXやサービス内容を改善しならがサービスを発展させていくというやり方を取ることがあります。この時に重要となるのが、ユーザーからのフィードバックです。サービス利用者の反応をデータから解析し、より反応がよかったサービスに切り替えていくのです。A/Bテストと呼ばれるランダム化比較対照実験的なアプローチを活用し、市場を学んでいきます。これは、データを活用したプロダクトマネジメントにおける意思決定支援と言っても良いでしょう。
・外向け×オペレーション効率化
一方、外向けの商品やサービスの利用者自体のオペレーションを効率化するためにもデータを活用することが可能です。代表的な例は、ECサイトで一般的になっているパーソナライズされたおすすめ機能です。レコメンドですね。
このレコメンドは、利用者からすると商品検索の手間を削減するものと言えるでしょう。レコメンドが普及する前は――随分前の話になりますが――ECサイトの利用者がほしいものを「ECサイトの外」で調べて、ある程度正確な商品名をECサイトの検索窓に打ち込む必要がありました。ECサイトでレコメンドがワークするようになると、利用者はECサイトの外で作業する時間を削減できました。それによってECサイトの滞留時間が増えただけでなく、これまで売れなかった商品まで売れるようになったのです。これはエンドユーザーのオペレーション改善がサービスの付加価値を押し上げた分かりやすい例だと思います。UXの高度化とも言えますね。
この例はBtoCの典型例ですが、マーケットプレイスを提供するCtoCも似たような傾向があると思います。一方、BtoBで商品単価が大きく内容も複雑な商材の場合は、付加価値の差し込む場所も複雑になる傾向にあります。
4つのシナリオとスターバックス事例の比較
ここまで、ビジネスでのデータ活用の方向性を、2つの観点で整理しました。
この2つの観点の組み合わせを考えると、ビジネスにおけるデータ活用のシナリオとして4つの方向性が見えてきます。具体的には以下のようなマトリックスになります。(冒頭に示した表の再掲です。)
実際の業務では、この中間に位置するタスクがあったり、組み合わせて一気に走らせることもあるでしょう。
それでは、冒頭で取り上げたスターバックスの事例を改めて考えてみましょう。この例では、スターバックスにおける5つの取り組みが紹介されています。どれも興味深いので、詳しくは元の記事を読んでみてくださいね。
事例1:パーソナライズされたプロモーション
事例2:洞察駆動型の商品
事例3:洗練された不動産プランニング
事例4:動的メニュー
事例5:マシンメンテナンスの最適化
これらの取り組みを先程整理したマトリックスにマッピングしてみました。そうすると、すべての領域でデータを活用していることが分かりました。これは凄いですね。まさにデータテック企業です。
まとめ
この記事では、ビジネスデータの活用シナリオについて整理しました。
どのようなアイデアであっても、誰のためのデータ活用であるのか、それによってどんな付加価値を期待するのか、ということを考えるのは重要です。
この基本的な問いは、ビジネスサイドの方、データサイエンティストの双方に焦点を与えるものとなるでしょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!