AI創作は映画監督のように - 表現力を高める実践テクニック(後編)
前回のブログでは、「AIの文章は標準レンズ的」という気づきと、それを改善するための映画監督的アプローチについて紹介しました。
今回は、その理論を実践してみましょう!
AIと一緒に青春小説を書いてみる
まずは「秋の花火大会と切ない恋」をテーマに、Geminiに青春小説の一節を書いてもらいました。
肌寒い夜風が、もう秋なのだと告げていた。
それでも、僕は浴衣姿で、季節外れの花火大会に来ていた。人混みをかき分けながら、沙耶を探す。
屋台のりんご飴は、もう冷たくて、蜜が固まっていた。まるで、僕の片思いみたいだ、と自嘲気味に笑った。
夏の終わりを告げるかのように、夜空に花火が打ち上がる。オレンジ色や青色の光が、一瞬だけ夜空を彩る。
それは、沙耶への届かぬ想いを映し出しているようだった。
沙耶は、僕の少し前を友達と歩いている。夜空を見上げながら、楽しそうに笑っている。
その笑顔は、花火よりもずっと綺麗で、僕の胸を締め付ける。
沙耶に気づかれないように、少し距離を置いて後を追う。沙耶が楽しそうに話す声、友達と笑い合う声。
どれもこれも、僕には届かない音だった。
握りしめていた線香花火に火をつける。パチパチと音を立てる火花は、すぐに消えてしまう。
まるで、僕の叶わぬ恋みたいだと思った。
「来年は、沙耶と一緒に来れたらいいな」
そう心の中で呟く。叶うはずのない願いだと分かっているのに。
夜空に咲く花火は、どんどん数を減らしていく。
祭囃子の音も、小さくなっていく。静けさの中で、僕は一人取り残されたような気がした。
沙耶は、友達と別れ、一人になった。僕は、沙耶に話しかける勇気を振り絞った。
「綺麗だったね、花火」
ありきたりな言葉しか出てこなかった。沙耶は、僕の方を振り返り、微笑んだ。
「うん、綺麗だった」
その笑顔は、僕に向けられたものではなかった。
それでも、僕は嬉しかった。沙耶と、少しでも言葉を交わすことができたのだから。
季節外れの花火は、もう終わってしまった。
でも、僕の心には、沙耶への想いがまだ残っていた。それは、切なくて、そして、苦い想いだった。
夜風が、冷たさを増していく。
僕は、沙耶が去っていく後ろ姿を、ただ見つめることしかできなかった。
もう二度と戻ってこない、夏の終わりの夜。
僕は、季節外れの花火と片思いの記憶を胸に、一人帰路についた。
いかがでしょうか?やはり全体的に平坦で、説明的な台詞が多いですよね。シナリオの授業でよく言われる「語るな、見せろ」が全くできていません(笑)
ただし、以下の二箇所には少しだけカメラワークが入っています:
ズームイン
屋台のりんご飴は、もう冷たくて、蜜が固まっていた
握りしめていた線香花火に火をつける。パチパチと音を立てる火花は、すぐに消えてしまう
トラッキングショット
沙耶に気づかれないように、少し距離を置いて後を追う
では、映画監督になってみよう!
1. 冒頭シーン:ズームイン
このシーンを映像的に考えるときは、まずは「全体像としての花火大会」から主人公にどんどん視界が小さくなる絵が浮かんでみましたので、以下の指示を出してみました。
プロンプト
以下の段落について、ズームインの"カメラワーク"を採用し、花火大会全体から主人公にカメラを当たるようにブラッシュアップ:
改善前
肌寒い夜風が、もう秋なのだと告げていた。
それでも、僕は浴衣姿で、季節外れの花火大会に来ていた。
人混みをかき分けながら、沙耶を探す。
屋台のりんご飴は、もう冷たくて、蜜が固まっていた。
まるで、僕の片思いみたいだ、と自嘲気味に笑った。
改善後
肌寒い夜風が、浴衣の袖口から入り込み、少しだけ鳥肌が立った。
祭りを楽しむ人々の賑やかな声、屋台の呼び込みの声、遠くから聞こえる祭囃子。
秋の花火大会は、夏のそれとは違う、どこか寂しげな雰囲気を纏っていた。
それでも僕は、淡い期待を胸に、人混みをかき分けて進んでいた。
浴衣姿の沙耶の姿を探しながら。屋台に並ぶりんご飴は、夏の終わりを告げるように、もう冷たくて、蜜が固まっていた。
まるで、僕の片思いみたいだ、と自嘲気味に笑う。
届かぬ想いだけが、胸の中で冷たく固まっていくようだった。
いかがでしょうか?「人混みをかき分けて進んでいた」という表現で、臨場感が一気に上がりましたね。
2. 接近のシーン:トラッキングショット
主人公が沙耶に近づくシーンは、後ろからのトラッキングショットで撮ることにしました。
プロンプト
以下の段落について、トラッキングショットの"カメラワーク"を採用し、主人公が沙耶に少しづつ近く映像を撮るに具体性をもってブラッシュアップ:
改善前
沙耶は、僕の少し前を友達と歩いている。夜空を見上げながら、楽しそうに笑っている。
その笑顔は、花火よりもずっと綺麗で、僕の胸を締め付ける。
沙耶に気づかれないように、少し距離を置いて後を追う。
沙耶が楽しそうに話す声、友達と笑い合う声。どれもこれも、僕には届かない音だった。
改善後
浴衣姿の沙耶は、僕の数歩先を友達と歩いていた。
人混みの中でも、彼女の姿はすぐに目に飛び込んできた。
夜空に打ち上がる花火を見上げながら、沙耶は楽しそうに笑っている。
僕は、沙耶に気づかれないように、少し距離を保ちながら後を追う。
薄い水色の浴衣に、白い帯。髪には、花火の模様が描かれた簪。
いつもより少し大人びて見える沙耶の姿に、僕は思わず息を呑んだ。
屋台の焼きそばの匂い、金魚のヨーヨーすくいの水音、子供たちの楽しそうな叫び声。
祭りの喧騒の中、僕は沙耶の姿だけを追い続けていた。まるで、彼女だけが僕の視界に存在するかのように。
彼女との距離は、少しずつ縮まっていく。あと少しで、沙耶に追いつく。心臓が、ドキドキと高鳴る。
彼女に話しかけるべきだろうか。それとも、このまま遠くから見つめているべきだろうか。
葛藤しながら、僕は沙耶の後ろ姿を追い続けた。
改善度が一気に上がってきましたね。ただし、AIは原文より長く書く傾向があるので、「長く書かないで」と指示するか、自分で削る必要があります。
3. 取り残されるシーン:ズームアウト
主人公の孤独感をより際立たせるために、ズームアウトのショットを採用しました。
プロンプト
以下の段落について、ズームアウトの"カメラワーク"を採用し、主人公が一人であることを立たせるように、主人公から花火大会全体にズームアウトしてブラッシュアップ。あまり長く書かないで:
改善前
夜空に咲く花火は、どんどん数を減らしていく。
祭囃子の音も、小さくなっていく。静けさの中で、僕は一人取り残されたような気がした。
改善後
夜空に咲く花火は、数を減らし、やがて最後のひとひらが散った。
祭囃子の音も、次第に小さくなり、遠くへ消えていく。
周囲の人々は、連れ立って帰路につき始める。
楽しげな会話の声、子供たちの笑い声、恋人たちの囁き声。
僕だけが、その流れから取り残されたように、一人立ち尽くしていた。
広大な夜空の下、祭りの熱気が冷めていくのを感じながら、僕は深い孤独感に包まれた。
改善前の文より、主人公の気持ちが伝わるようになりましたよね?
4. 出会うシーン:スローモーション
二人の出会いは、やはりスローモーションで表現。時間の流れを操作することで、感情の機微を表現します。
プロンプト
以下の段落について、スローモーションの"カメラワーク"を採用し、ブラッシュアップ:
改善前
沙耶は、友達と別れ、一人になった。僕は、沙耶に話しかける勇気を振り絞った。
「綺麗だったね、花火」
ありきたりな言葉しか出てこなかった。沙耶は、僕の方を振り返り、微笑んだ。
「うん、綺麗だった」
その笑顔は、僕に向けられたものではなかった。
それでも、僕は嬉しかった。沙耶と、少しでも言葉を交わすことができたのだから。
季節外れの花火は、もう終わってしまった。
でも、僕の心には、沙耶への想いがまだ残っていた。それは、切なくて、そして、苦い想いだった。
改善後
友達と別れた沙耶が、一人になった。その瞬間、世界が静止したように感じた。
僕は、ゆっくりと息を吸い込み、沙耶に話しかける勇気を振り絞った。
「綺麗だったね、花火」
声は、震えていたかもしれない。
沙耶は、まるで時間が伸びたように、ゆっくりと僕の方を振り返った。そして、微笑んだ。
「うん、綺麗だった」
その声は、僕の耳に届くまでに、長い時間がかかったように感じた。
沙耶の笑顔は、僕に向けられたものではなかった。
それでも、その一瞬の出来事が、永遠に続くかのように感じられた。
季節外れの花火は、もう終わってしまった。祭りの喧騒も、遠い記憶のように感じる。
残ったのは、沙耶の笑顔と、切ない想いだけ。
それは、時間が止まったかのような、忘れられない一瞬だった。
少し大袈裟かもしれませんが、自分で調整すれば良い感じになりそうです(笑)
5. 最後のシーン:フェードアウト
物語の終わりは、フェードアウトで優しく締めくくります。
プロンプト
以下の段落について、フェードアウトの"カメラワーク"を採用し、シーンの終わらせるようブラッシュアップ:
改善前
夜風が、冷たさを増していく。
僕は、沙耶が去っていく後ろ姿を、ただ見つめることしかできなかった。
もう二度と戻ってこない、夏の終わりの夜。
僕は、季節外れの花火と片思いの記憶を胸に、一人帰路についた。
改善後
夜風が、冷たさを増していく。僕は、沙耶が去っていく後ろ姿を、ただ見つめることしかできなかった。
彼女の浴衣の裾が、夜の闇に溶けていく。
もう二度と戻ってこない、夏の終わりの夜。
季節外れの花火の残像が、僕の目に焼き付いている。
沙耶への切ない想いを胸に、僕は一人帰路についた。
街灯の光が、僕の影を長く伸ばす。
その影は、次第に薄くなり、やがて闇に消えていった。
完成した作品
冗長や説明的な部分を削除し、全文を添付しました!
肌寒い夜風が、浴衣の袖口から入り込み、少しだけ鳥肌が立った。
祭りを楽しむ人々の賑やかな声、屋台の呼び込みの声、遠くから聞こえる祭囃子。
秋の花火大会は、夏のそれとは違う、どこか寂しげな雰囲気を纏っていた。
それでも僕は、淡い期待を胸に、人混みをかき分けて進んでいた。
浴衣姿の沙耶の姿を探しながら。
屋台に並ぶりんご飴は、夏の終わりを告げるように、もう冷たくて、蜜が固まっていた。
浴衣姿の沙耶は、僕の数歩先を友達と歩いていた。
人混みの中でも、彼女の姿はすぐに目に飛び込んできた。
夜空に打ち上がる花火を見上げながら、沙耶は楽しそうに笑っている。
僕は、沙耶に気づかれないように、少し距離を保ちながら後を追う。
薄い水色の浴衣に、白い帯。髪には、花火の模様が描かれた簪。
いつもより少し大人びて見える沙耶の姿に、僕は思わず息を呑んだ。
屋台の焼きそばの匂い、金魚のヨーヨーすくいの水音、子供たちの楽しそうな叫び声。
祭りの喧騒の中、僕は沙耶の姿だけを追い続けていた。まるで、彼女だけが僕の視界に存在するかのように。
彼女との距離は、少しずつ縮まっていく。あと少しで、沙耶に追いつく。心臓が、ドキドキと高鳴る。
彼女に話しかけるべきだろうか。それとも、このまま遠くから見つめているべきだろうか。
僕は沙耶の後ろ姿を追い続けた。
握りしめていた線香花火に火をつける。パチパチと音を立てる火花は、すぐに消えてしまう。
「来年は、沙耶と一緒に来れたらいいな」
そう心の中で呟く。叶うはずのない願いだと分かっているのに。
夜空に咲く花火は、数を減らし、やがて最後のひとひらが散った。
祭囃子の音も、次第に小さくなり、遠くへ消えていく。
周囲の人々は、連れ立って帰路につき始める。
楽しげな会話の声、子供たちの笑い声、恋人たちの囁き声。
僕だけが、その流れから取り残されたように、一人立ち尽くしていた。
広大な夜空の下、祭りの熱気が冷めていくのを感じながら、僕は深い孤独感に包まれた。
友達と別れた沙耶が、一人になった。その瞬間、世界が静止したように感じた。
僕は、ゆっくりと息を吸い込み、沙耶に話しかける勇気を振り絞った。
「綺麗だったね、花火」
声は、震えていたかもしれない。
沙耶は、まるで時間が伸びたように、ゆっくりと僕の方を振り返った。そして、微笑んだ。
「うん、綺麗だった」
その声は、僕の耳に届くまでに、長い時間がかかったように感じた。
沙耶の笑顔は、僕に向けられたものではなかった。
それでも、その一瞬の出来事が、永遠に続くかのように感じられた。
季節外れの花火は、もう終わってしまった。祭りの喧騒も、遠い記憶のように感じる。
残ったのは、沙耶の笑顔と、切ない想いだけ。
それは、時間が止まったかのような、忘れられない一瞬だった。
夜風が、冷たさを増していく。僕は、沙耶が去っていく後ろ姿を、ただ見つめることしかできなかった。
彼女の浴衣の裾が、夜の闇に溶けていく。
もう二度と戻ってこない、夏の終わりの夜。
僕は一人帰路についた。
街灯の光が、僕の影を長く伸ばす。
その影は、次第に薄くなり、やがて闇に消えていった。
実践から学んだこと
カメラワークを改善するプロンプトは確かに有効。AIは”カメラワーク”ということを理解してくれます。
カメラワークの指定方法は二種類がある。今回は執筆後に添削する方法を取りましたが、最初からカメラワークを意識してもらうようなアプローチもあり。
AIのクセを言語化することがとても大事。AIの文章が下手と思った時、ただ「下手だな」と言うのが、誰でもできます。が、「どこが下手なのか」を言語化できれば、改善につながります。
終わりに
映画監督的アプローチは、いかがでしょうか?次回は最初からカメラワークを意識する執筆にチャレンジしてみます。
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