AI創作は映画監督のように - 表現力を高める実践テクニック(前編)
前回参加したイベントでは、山川先生の言葉が私の心に刺さりました。
「AIで書かれている文書は標準レンズです。平坦な文書しか書けません。」
確かに!ChatGPTの文章がすぐバレるのは、どこか"味気ない"からなんですよね。でも、この"標準レンズ"という表現で、やっと理由が分かった気がしました。
では、どうすれば個性的な作品が作れるのか?答えは意外にもシンプルでした。
私たち人間が"映画監督"になればいいんです。
標準レンズをいじってみよう
以下の文はChatGPTによって生成された”標準レンズ”的な文章です。
雨の降る駅のホームに、佐藤は立っていた。
傘を持たずに来てしまい、雨宿りをしている。
ホームには数人の乗客がいて、みんな電車を待っている。
駅員が巡回をしている。雨は次第に強くなってきた。
どこからか雨の匂いが漂ってくる。佐藤は時計を見た。
まだ電車の到着まで10分ある。雨は止みそうにない。
読みやすいけど、どこが味気ないですよね。
それではまず、シンプルなカメラワークを試してみましょう。
パン(視点の移動による情景描写)
雨の降る駅のホームを、水滴が左から右へと流れていく。
ベンチに座る老婦人、キオスクの店員、黄色い線の内側で携帯を見る学生たち。
そして最後に、傘を持たずに立ち尽くす佐藤の姿が見えた。
すべてが雨に濡れ、すべてが灰色に染まっていく。
ホームの端から端まで、雨は容赦なく降り注いでいた。
このカメラワークでその場の雰囲気がバッチリ伝わります。そこにいるような感覚になれるんです。こういった技法を使うと、読者の皆さんはまるで映画を見ているような感覚で物語を楽しめるんですよ!
ズームイン(細部への焦点化)
雨の降る駅のホーム。
佐藤の視線は、自分の革靴の先端に落ちる雨滴に釘付けになっていた。
つま先に命中する一滴、また一滴。飛沫が白い靴下に跳ね、暗い染みとなって広がっていく。
靴底からジワジワと染み出す冷たさが、足の裏全体を覆い始めていた。
ズームで細かいところまでじっくり描くことで、登場人物の気持ちや心の動きを象徴的に表現できちゃうんですよ。主人公の表情のちょっとした変化を描くと、心の中で揺れ動く気持ちがバッチリ伝わるんです。
ズームアウト(全体像から捉える)
上空から見下ろすように、雨雲が覆う街全体が見える。
無数の建物の間を縫うように走る線路。
その上に点在する駅。
そのうちの一つ、北口駅のホームに、傘を持たない人影が一つ。
何千という雨粒の中で、佐藤は自分だけが異質な存在のように感じていた。
ズームアウトを使うと、主人公と周りの世界との関係が、パッと浮かび上がってくるんです。特に、孤独感や疎外感(という意図)を表現したいときには、ピッタリ!主人公がどんどん小さく見えていくことで、「ああ、この人は本当に一人なんだな」って感じが伝わるんです。
トラッキングショット(動きに寄り添う描写)
雨の降る駅のホームを、佐藤はゆっくりと歩き始めた。
足を前に出すたびに、水たまりを避けるような小さな迂回を繰り返す。
通り過ぎる柱の影、張り出した屋根の切れ目から落ちる雨垂れ、すれ違う乗客たちの傘。
すべてが佐藤と同じ速度でゆっくりとホームを移動していく。
動的なショットです。まるで映画を見ているみたいに、時間と空間の変化を同時に感じられるんですね。臨場感溢れ出ています。
クローズアップ(感情表現の強調)
雨の降る駅のホーム。
佐藤の顔に浮かぶ困惑の表情。
眉間にできた深いしわ、かすかに震える唇、まつげに付着した雨粒。
その一粒が、ゆっくりと頬を伝い落ちる。
いらだちか、それとも諦めか。
表情は何かを語ろうとしているようで、しかし何も語らない。
深みを感じるショットですね!登場人物の表情や仕草を細かく描くことで、その人の心の中をのぞき見しているような感覚になれるんですよ。何か続きが気になりませんか?
オーバーザショルダー(主観と客観の混在)
雨の降る駅のホーム。
佐藤の肩越しに、対向ホームが見える。
向こう側では、傘を差した人々が整然と列を作っている。
彼らの姿が、雨のカーテンによってぼんやりとかすむ。
佐藤は無意識に肩を震わせた。
向こう側の秩序正しい光景が、こちら側の自分の惨めさを際立たせているようで。
文学的な作品だとこういうショットが多いような印象です。主人公の内面と周りの状況を同時に描けるから、物語がより立体的になるんです。主人公により感情移入がしやすくなりますね。
次は少し小難しいテクニックでやってみましょう。
スロー・モーション(時間の引き延ばし)
雨の降る駅のホーム。
佐藤の目には、すべてが緩やかに動いているように映る。
ホームに落ちる雨粒が、まるで宙に浮いているかのよう。
駆け込んでくる乗客の動きも、水中を泳ぐように滑らか。
傘が開かれる瞬間、無数の水滴が放射状に飛び散る様子も、スライドショーのように一コマ一コマが克明に見える。
時間だけが、やけに遅く流れていた。
細かい描写を丁寧に書くことで、登場人物の感情がより豊かに表現できるんですよ。主人公の悲しみや孤独感が強調されたりするんです。映画らしい技法ですよね。
マクロ撮影(微細な描写による心情表現)
雨の降る駅のホーム。
佐藤の手の平に、一粒の雨が落ちた。
その瞬間、水滴は無数の小さな粒となって四散する。
それぞれの粒が光を屈折させ、虹色の輝きを放つ。
まるで今の自分の心のように、一つだった想いが無数の感情に砕け散っていく。
それは美しくもあり、どこか切なくもあった。
隠喩を込めた表現です。その水滴の中に映る世界を描くことで、主人公の心の中を覗き見ているような感覚になれるんです。
なぜAIはそうなるか?
Claudeは私より自分のことが詳しいので、以下はClaudeの答えです。
1. 学習データの平均化による制約
これが根本的な原因です
大量のテキストデータからの学習は、必然的に「平均的な表現」に収束
独特な表現や実験的な手法は、統計的に少数派として処理される
結果として、無難で標準的な表現が優先される
極端な視点や特異な表現は「ノイズ」として除外されやすい
2. 時間軸の扱いの単純さ
基本的に線形的な時間軸に沿った表現しか生成できない
以下のような時間操作が不自然になりやすい:
フラッシュバック(回想)
フラッシュフォワード(予感)
スローモーション
同時進行する複数の出来事
主観的な時間の伸縮
3. 感覚的体験の欠如
実際の視覚体験や身体感覚に基づく表現が困難
以下のような感覚的要素が平板になりやすい:
空間の奥行きや広がり
温度や湿度の微妙な変化
光や影の揺らぎ
触覚的な描写
複合的な感覚体験
4. 意図性の欠如
表現技法の選択に必然性や意図が伴わない
以下のような判断が機械的になりやすい:
視点の選択
描写の強弱
展開のリズム
象徴的な要素の配置
伏線の張り方
5. リスク回避的な性質
システムとして「安全な出力」を優先する傾向
以下のような要素が抑制される:
実験的な表現
型破りな視点
過度な感情表現
曖昧さや多義性
慣習に反する表現
なるほど、納得しました。AIは「どう書くか」ができるけど「なぜ書くが」がわからない。そういう意図がないんです。例えば、佐藤を「孤独な人」として描きたいのような意図がないと、平坦的な文になってしまいます。今の時点は、そういう仕事はやはり人間がやらなければならないです。
終わりに
AIは確かに「標準レンズ」かもしれません。でも、それは私たち人間が演出を加えるための"素材"と考えることもできます。
AIを「味方」「アシスタント」として考えるのが、やや安直だと最近思ってきました。
AIはあなたの意図をわかってくれない。AIの出力は添削されるべき。
そういうマインドを基に、次回は人間が映画監督になる方法を更に探究したいと思います。
後編(実践編)がこちら
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