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【暇人日記】暇人、ジムに通い始める

あと27分。
あと26分20秒…。
30分に設定された自転車マシーンのタイマーは、ここだけ時が止まっているのかと疑うほど、のんびり、のんびり、と時を刻む。

私は運動を忌み嫌っている。
運動するだけでもしんどいのに、運動をすることにお金まで払わなければならないジムなんて、わたしは一生行くことがないはずだった。

それなのにわたしは今、ジムの自転車マシーンを一生懸命漕いでいる。


…なぜこんなことになったのかというと、わたしが途方に暮れてしまうほどの暇人だからだ。
もう少し詳しく説明をすると、遡ること2週間前。

全社会人の中で、暇人ランキングがあったら上位1%に入るのではないかと思うほど終業後に時間を持て余していたわたしは、
近所の喫茶店でお店の人に「暇で暇で仕方がないんです。」とあまりにもちっぽけすぎる悩みを打ち明けた。
「それじゃ、いいとこがあるわよ!ここから徒歩数分のとこにね、お風呂も入れて運動もできるジムがあるのよ。ここの常連さんも行ってて〜(なんたらかんたら)」

…ほうほう。
お風呂、入れるのか。最近寒くなってきたしな。ガス代浮くし、まぁちょっとはトレーニングとかしちゃってダイエットになるかもしれないし、
何より暇を潰せるのなら中々いい案かもしれない。


その翌日、わたしはジムを契約した。
後先考えず、ぱぱっと決める能力だけは誰にも負けないくらい、長けているのだ。
会社から徒歩5分圏内の今の家も、そんなふうに1日でぱぱっと決めた。(このことが、時間を持て余すようになった最大の原因なのだが。)

ジムを契約してから2週間、何をしていたかというと、
「運動もしたくないし、お風呂だって家のお風呂で事足りてしまうし、今日じゃなくてもいいかな」なんて呑気に過ごしていたら、
生理が来てしまい、
「お腹いたいから無理だな」と1週間だらだら過ごして、今日に至った。
言い訳を理由にだらけることも大の得意だ。

とはいえ、さすがに自分が働いて得たお金で契約をしているわけなので、
ケチなわたしもだまってはいない。
「これじゃジムにお金を寄付してるようなものだよ、優雅に大金を寄付していられるほどお金に余裕があるわけではないのだから、元を取らなきゃ元を!」
2週間たってやっとケチなわたしの意見が優勢になり、今日初めてジムに行ったというわけだ。

とてもしんどかった。
夏でもこんな汗かかないのに、と思うほど汗が止まらず(人間って本当に汗をかくのですね。)、
中学生の頃、だだ校庭を走るだけの、先生だけが楽をする体育の授業を思い出した。
何度タイマーを見ても、10秒ほどしか進まない。
スマホを見てだらだらしている30分はあっというまなのに(30分どころか3時間経っていることだってあるのに!)
時間がとにかく進まない。
一秒の重みを感じた。

周りを見渡すと黙々と走る人、自転車マシーンに乗る人、ストレッチをしている人だらけだ。
中学の部活で、「吹奏楽やってる人に悪い人はいないよね!」というフレーズが流行ったのだが、
「ジムに来ている人に怠け者はいないよね」と思った。

90%のしんどい、と10%の汗をかくのが気持ちいいかも…という感情を持ちながら無事30分のトレーニングを終えた。
膝が笑っていて、更衣室までの階段で崩れ落ちそうになった。
でも、やり終えてから、「悪くはないな」と思った。(やり終えてから、という点が重要だ。)

猛烈に炭酸が飲みたくなった。

0カロリー。ジムの自販機のチョイスはすばらしい。

そうなんです。0カロリーに限る。
自転車マシーンで94カロリーせっかく消費したのに、ここでまた100カロリーのジュースを摂取するわけにはいかない。
炭酸が今までで一番おいしいと感じた。
うん、ジムも悪くはない。
一ヶ月後も行っているかは不明だが、ダイエットと健康のために少し運動してみようと思う。
暇人なので。

わたしは学生時代やそれ以前の人生においてもなんだか時間を持て余すことがとても多い。とても。
きっと残業ばかりの職種の人からしたら考えられないほど贅沢な悩みなのだろう。
もう暇であることは宿命なのだと割り切って、暇を潰すことに大忙しな人間になろうと思う。

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