#5 秘境の会場設営編 - 経験ゼロからフェス「岩壁音楽祭」を立ち上げるまで
5月に立ち上げたフェス「岩壁音楽祭」について、未経験者がフェスを開催することのリアルな内情を連載していきます。
5回目の今回は会場設営編。秘境すぎて会場図面がなく、測量から始めなくてはいけなかった岩壁音楽祭。現地調査から当日設営まで、会場をどのように作ったのかを公開します。
この連載はすべてこちらにまとめています。“オープンソースなフェス”として連載し、来年以降も継続していきます。
まずは現地調査
現地調査では会場の状況や人の流れを確認したり、具体的にどこにどうテントを置くかなどの設営をシミュレーションします。
が、いかんせん岩壁音楽祭の会場は田んぼの真ん中にある採石場跡。自然そのものなので、現地調査で確認をすることが山ほどありました。
①吹雪回(開催約3か月前)
東京の運営メンバーから紹介してもらったフェス制作のプロの方々と日程を合わせます。この日が初めての現地調査でした。
東京から山形まで来ていただき、プロの面々とはここで初めまして。
挨拶を交わし、いざ会場へ向かうと...
「雪つもり過ぎてて全然よくわからない」
雪が積もっているどころか全然吹雪いています。命がけかよ。雪国なめてました。
雪が邪魔すぎて全体像が見えないし、測量しようにも正確に測れない。
下見は雪がないときにやりたいですね。
とはいえ、雪はあれど現場を目視し、運営まわりについて話を詰めることができたのは大きな収穫でした。
なにより開催まで日がなかったので、雪解けまでに現場まわり以外の部分(予算の明確化など)を進めることになります。
②雪解け回(開催約2か月半前)
春の訪れとともに雪がなくなり、会場の全体像があらわに。
具体的にどこにどうテント置くとか、発電機はどこに置いてケーブルはどこを通すかなど、実際に現場を見ながら想定することができました。
③測量回(開催約2か月前)
ありえないほど遅いですが、Googleマップ図面でここまでしのぎました。
渡辺瑞帆さんに現地まで来ていただき測量してもらいました。
そしてやっと、正確な会場図面が完成です。感謝。
ステージの置き方、各種テントの配置、電源ケーブルの引き方などをようやく議論できる状態になりました。
岩壁への目線を徹底した会場配置
「②雪解け回」で想定した諸々の配置を、測量図面に書き込んでいきます。
特に意識したのは「岩壁の魅力を最大限引き出す」ということ。
例えば、「エントランスをくぐると巨大な岩壁が視界に飛び込んでくる」という体験を損なわないために、エントランスのテントはなるべく手前に配置。
「入る前はテントしか見えないが、入り口を抜けた瞬間にいきなりそびえ立つ岩壁が見える」というフェスの第一印象を演出しています。
他にも各エリアの設営を、ビフォー&アフターで紹介していきます。
リラクゼーション特化のCHILL AREA
まずはエントランスを入って左手すぐの一角。
岩場メインの会場で唯一、緑の生い茂るオアシス的エリアがあります。ここはリラクゼーションに特化した場所として「CHILL AREA」としました。
CHILL AREAでは会場に転がっていた石を椅子として活用し、休憩時も岩場を感じることができます。
音から離れ、シーシャ(水たばこ)やタイ式マッサージなど、一息つきながら見上げる岩壁も一興です。
涼みながら踊れるTHE CAVE
エントランス入場後 突き当りに位置する直方体の洞窟。
奥行きが約20mほどあり、フロアにするのに申し分ない大きさ。
ここはそのままクラブのように活用し、DJフロア(THE CAVE)としました。
まさに岩でできたハコ。
岩の質感を際立たせるため、あえて無骨に。
当日は快晴でとにかく暑かったのですが、洞窟の中はひんやり涼しい。「洞窟で踊りながら涼み、また別のエリアへ行く」というような回遊が生まれたのは会場の妙でした。
普段クラブに行ったりしない人も「涼みたいから」というモチベでこの洞窟に足を運び、結果 ダンスミュージックを楽しんでくれたのは意義深い。
日が沈むとプロジェクターを当てて壁面に映像を投影。ハードな雰囲気に激変します。
フェスのアイコンとなるWALL STAGE
そして会場の一番奥にある吹き抜けのエリア。岩のトンネルを抜けた先にこの光景が広がっていて、会場動線の終着点です。
ここをライブステージ(WALL STAGE)として、舞台と照明を組んでいくことになります。
「トンネルを抜けると圧倒的な岩壁に囲まれた 吹き抜けのライブステージエリアが目に入る」という目線の作り方に一番時間をかけました。
テントやステージなどの部材は岩壁を覆い隠してしまいます。観客がステージだけ見てしまうような配置にすると、せっかくのロケーションを活かしきれない。
何案も練り直し、会場に足を運んではシミュレーションして運営メンバーに共有。検討を重ねます。
儀式にしかみえないですが、ステージ配置・高さと観客の位置関係・目線を確認しています。ステージが高すぎると岩壁が隠れてしまうので、岩壁とステージが同時に視野に入る絶妙な配置を探ります。
結果、ステージ左側の岩壁も意識したこのような配置に。
岩壁音楽祭のアイコンになっています。
開催2か月前という土壇場から会場配置に本腰を入れたわけですが、圧倒的な岩壁のロケーションに魅了されて集まったチームだったので、その点で一丸となって間に合わせることができました。
それぞれのエリアに明確な役割を持たせることができ、当日も思ったように気持ちいい回遊が生まれていたのが印象的です。
・CHILL AREA:石に腰かけて一息つきながら見上げる岩壁
・THE CAVE:ひんやり涼しい洞窟で鳴り響くダンスミュージック
・WALL STAGE:270°岩壁に囲まれながらのライブ体験
次回は「集客・告知編」
今後は「集客・告知」について公開します。
「岩壁音楽祭2019」は初開催で、こうした秘境に約500人を集客。
そのうち300人以上が、東京など山形県外からの来場でした。
さらに、主な集客は東京近郊と現地 山形周辺でしたが、この2つも告知のアプローチがそれぞれ異なっていて、とても学びが多かった。
どのように告知し、何が集客に貢献したのか、紹介していきます。