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産業医からのにじいろ処方箋(処方箋#1:LGBTQ+の人が職場に存在することを知る)
産業医からのにじいろ処方箋とは
後手に回るマイノリティヘルスの視点
産業医・産業保健職の業界でLGBTQ+のイシューを大きく取り上げられることは多くありませんでした。企業においてLGBTQ+は女性の活躍、障がい者雇用、外国人雇用などと合わせて人事系の部門が管轄・対応することが多いようです。これらのマイノリティグループのうち、女性は相対的に人数規模も大きく、特有の健康問題(生理・妊娠・女性特有のがん)などが認識されやすく産業医や産業保健職が関わることも増えているように思います。
例えば健康経営度調査においても、女性特有の健康課題については別枠で評価されています。その一方で、LGBTQ+や障がい者、外国籍など他のマイノリティ集団については対応がさらに後手後手となり、取り組む優先順位が上がらないまま何もできずに、あるいは、ほんのわずかな活動に終始していることが多いように感じます。対象となる人数が少なく、多様なニーズに対してどう取り組んで良いかわからず、「そもそも困っている人なんていない。だって私はそういう人と会ったことも無いし、困っているという話も聞いたこともないから。」と問題を矮小化するケースにも多く遭遇します。しかし実際には、これらの周縁化された人々は確かに存在し、健康リスクが高いにも関わらず、必要な産業保健サービスにアクセス出来ていない可能性が高いのです。
あなたが気づいていない=存在しない?
あなたが「困っている人に出会っていない」のは、本当に困っている人がいないということなのでしょうか。
もしかしたら、本当は存在するのに、声を挙げられず周りに気付かれていない、あるいは気付かれないようにアイデンティティを隠しているからかもしれません。
日常的に差別的な発言が許容されるような職場で、当事者が声を挙げることは容易ではありません。そして、このような職場でメンタル不調に陥った時、私達産業医や産業保健職に突然バトンが渡ってくるのです。
その時に果たして適切に対応できるでしょうか?
また産業医・産業保健職は支援職として、声をあげられない状況にいる人達の声を拾い上げ、社内に訴えかけていく「社内アドボカシー」としての役割も求められます。
そのためには正確な知識を持ち、マイノリティ集団に属する人たちと信頼関係を築いていく必要があります。
このように従来は産業保健から少し離れたイシューとしてLGBTQ+は捉えられていましたが、産業保健に携わる医師・保健看護職が知っておくべきことは多くあります。このnoteシリーズでは主に産業医・産業保健職に向けてLGBTQ+のイシューについて伝え、LGBTQ+及びその他の周縁化されやすい労働者が活躍できるようサポートするための方策を、ともに学んでいきたいと考えています。
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