STEPNは、どのように"ポンジ/ねずみ講"から抜け出そうとしているか?【保存版・BCGの教科書】
更新履歴
2022/6/1 有料部分更新しました。
この記事は、前半(無料)で、「STEPNがポンジ/ねずみ講*であるカラクリ」を説明した上で、後半で運営がそれに対して取り組んでいることを私の解釈を交えてご紹介します。前半はネガティブなことが中心で、後半はポジティブです。気合を入れて書いた結果、トータル20000文字以上になりました。無料部分だけで1万文字超えてます笑。。お時間ある時に読んでみてください。
ちなみに、私は、2月に実際に投資してから、今も毎日歩いています。ポジショントークにならないように、なるべくフラットに書いたつもりです。(基本的に素晴らしいプロジェクトと思っているので、最後は少しポジトーク入っているかもしれません。)
私の理解が間違っている可能性もあります。ご意見等ございましたら、Twitterなどで教えて欲しいです。@zou_crypto
はじめに
"歩くだけで稼げる!"と話題のSTEPNをご存知ですか?私も毎日歩いたり、走ったりしながら、稼がせて頂いてます。恐らく現時点では、参加している方がほぼ全員、利益を積み上げている状態です。
いかにも怪しいですよね!!
今や、「STEPNで稼げるから、会社やめた」とか「借金してSTEPN始めた」といった、傍から見ると、危なっかしいリスクを取っている人たちもいるようです。逆に、やってもないのに「STEPNは稼げない」「騙されいてるだけだ」との批判もあります。
今、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長しているSTEPNは、2月に2万人程度だったユーザーが、3月末に20万に到達し、4月半ばの現時点では30万人。5月中に100万人までユーザー数が増えると予測されています。
でも、ちょっと待ってください。100万人が全員、毎日歩くだけで儲かり続けるシステムって、存在しうるのでしょうか?そんな打ち出の小槌があれば、世界から貧困がなくなります。当然ながら、そんなシステムは普通に考えてありえません。
だから、STEPNは「ねずみ講」だ、「ポンジスキーム」だ、「後から入ってきた人は全員養分だ」、「崩壊は突然やってくる」、などと言われます。そう言われると、今から参入するのもためらいますよね。
でも、ここで、怖い怖いとただ逃げるのも芸がありません。
重要なのは、
* STEPNの抱える構造的な問題を理解した上で、
* 運営がどのように問題を解決しようとしているのか?
を考えることです。
さらに、STEPNはシンプルが故、dAppsやBCG(ブロックチェーンゲーム)投資の教科書としても、非常に優れていると思います。今後、別の投資機会に出会った際に、STEPNの構造を深く理解した経験は、きっと役に立ちます。
このNoteを読んで得られること
BCGの構造的な欠陥と、解決のための取り組み
を把握することで、以下の状態を目指します。
STEPNプロジェクトが抱えるリスクを正しく把握する
現時点で、投資(再投資)すべきか?のヒント
いつ、撤退すべきか?のヒント
プロジェクトのが継続する場合の最適な戦略のアイデア
この記事では細かなSTEPNの戦術的な話はしません。鳥の目、虫の目でいうと、鳥の目でプロジェクトの構造や運営のやりたいことを俯瞰することを目指します。
説明の流れ
【第一章】STEPNのねずみ講的なモデルをざっくり理解する
【第二章】運営による短期的なアプローチ
【第三章】根本的かつ長期的なアプローチ
内容に入る前にお断りですが、この情報は公式なものではなく、私が様々な情報をもとに考えた内容です。このnoteをもとに投資をして、損失が発生した場合も、私は一切の責任を取りません。
実際にプレイしている方の話を見聞きすると、まるで打ち出の小槌を見つけたかのように、「お金が湧いてでくる!」と目をキラキラ輝かせているように見えます。それを見ると、「あなた騙されてるよ!目を覚まして!」と言いたくなる気持ち、私もとても分かります。
しかし、STEPN運営チームは、「STEPNはねずみ講の構造を持っている」という問題を十分に理解した上で、その壁を突破しようとしていると考えています。
今後も、BCG(ブロックチェーンゲーム)は引き続き、雨後の筍のようにリリースされてます。本記事の無料部分だけでも、「今後騙されない」ための教養として十分に役に立つと思いますので、お時間ある時に読んでみてください。
ということで、内容に入ります。
【第一章】STEPNのねずみ講的な構造の解説
実際のゲームは、様々なルールがあって複雑ですが、まずは、理解しやすくするために、ごくシンプルな前提を作ります。(GMTやSolanaといったトークンは第一章では無視します)
(前提①)STEPNは、GSTの価格が維持されることで成立している
GST*の価格が維持されることが、非常に重要です。というのも、GSTが下がると、「そんな程度しか稼げない靴*に価値はない」となって靴の価格が下がります。GSTと靴の両方が一気に価格崩壊すると、ゲームは実質的に崩壊するものとします。
(前提②)GSTの価格は、需要と供給がバランスすることで決定される
一般的に価格は、需要と供給がバランスして決まります。
<GSTの供給>
・ユーザーが毎日、運動することによって生み出され、発行量に上限はありません。
・1日の供給量 = 既存ユーザー数 × 平均獲得GST/日 で決まります。
ユーザーがレベルアップするごとに、あるいは、ユーザー数が増えるごとにどんどん発行枚数は増えます。
<GSTの需要>
White paperによると、GSTは次の5つの利用方法(利用価値)があります。
・靴のMint*
・靴のRepair
・靴のレベルアップ
・靴のGemアップグレード
・靴のソケットアンロック
全部靴に関連したものですね!上記の中でも、実際はMintによる消費割合が圧倒的に多いと思われます。私も実際、これまで使用したGSTの9割以上?はMintにつぎ込んでいます。ここでは、単純化するために、他の要素を一旦無視して、ユーザーは靴のMintでGSTを使用する、とします。(他の要素はこの記事の後半で説明します)
ユーザーがGSTを靴のMintのみで使う世界では、「ユーザーが靴のMintをしなくなると、GSTは利益確定で売り込まれ、価格は下落」(逆にmintの需要が多いと値上がりする)
このくらい単純にした前提で一度考えてみます。
単純化したSTEPNの世界の日毎の経過
STEPNがこの世に生まれた日を0日目とします。記念すべきユーザー第一号のみがいるSTEPNの世界です。1日目からの経過を見てみます。
一日の終わりの靴の在庫は常に0で、価格はバランスしているものとします。 4日目以降も、既存ユーザーの倍の新規ユーザーが入ってくる限り、靴の需要と供給は1:1でバランスして価格変動はしないです。
前提は図にかいた通りですが、①既存ユーザーは1日1足Mintしてマーケットで売る、②新規ユーザーは登録した日に必ずマーケットで靴を1足だけ買う、という2つです。新規ユーザー数が足りないと、在庫が出て価格が下がります。
ここで、「靴の価格を維持するために必要な新規ユーザー数」をYとした時に、以下の式で求めることができます。
Y = 2 ^ (x) (2のx乗)
※0日目が上の図のDay1で、初めての新規ユーザーが入ってくる日、とします。
上記の指数関数は、定数部分が2の場合、常に前日の値を2倍のユーザーが必要な状態を表します。
0日目は、2の0乗で1人のユーザーが必要です。
1日目は、2の1乗で2人のユーザーが必要です。
2日目は、2の2乗で4人のユーザーが必要です。
例えば、10日後に必要な新規ユーザー数は、2^10(2の10乗)で1024人です。今のSTEPNを見ていると1000人くらいどってことないですね!
しかし、この式の場合、x=20(20日後)では、Yは100万人を超えます。こんな数の新規ユーザーは、いくらなんでも維持できるわけがありません。
グラフにするとこのような形です。横軸xが経過日数で、縦軸Yが「必要な新規ユーザー数」です。グラフのメモリは適当です。
指数関数の特徴は、時間が経過するごとに、増加率が大きくなるです。
しかし、どう考えても、無理のあるグラフです。
もう少し現実のSTEPNに近づけてみます。
指数関数の底の部分である2をaに置き換えて、一般化すると、
Y = a ^ x(aのx乗)
となります。(指数関数を忘れてる人は雰囲気だけ理解でOKです。)
上の例で書いたのは、a=2の事例です。これは、流石に急激に数字が大きくなりすぎます。
実際には、全てのユーザーが毎日必ず1足靴をMarketに売り出すことはしないし、靴を作らず、別のGSTの消費先を選ぶこともありますので、もっと複雑な要素が絡み合ってaの値は決まります。
ただ、実際のY = a ^ x の底aは2よりも、もっと小さい、とはいえそうです(そうでないと、すでに破綻してるはずです)
以下のグラフは、Y軸はマーケット価格を維持するために必要なユーザー数で、青い線が 上の例で書いたY = 2 ^ xで、赤い線は、aをうんと小さくして1.1 ^x (1.1のx乗)にしたグラフです。
上図の青い線は、先程の20日後に100万人の新規ユーザーが流入しないと破綻するという式です。一方で、赤い線である1.1のx乗はかなり緩やかですね!このくらいの曲線なら、STEPNなら余裕だ!と安心した皆様、、、
残念ながら、指数関数は時間の経過で恐ろしさを増します。。。グラフをもっと遠くから見てみましょう。
先程と全く同じ数式です。ただ、遠くから(スケールを大きくして)みただけです。このように、指数関数は時間の経過ごとに増加率が大きくなっていく恐ろしい式なのです。(グラフのxとyのメモリ数値は適当です)
今は、STEPNのユーザー数は、文字通り「指数関数的に」伸びています。まだまだ伸びていくと予想されています。しかし、潜在ユーザー数には限りがあるので、いずれ絶対に「増加率」は減少していきます。
おそらく、以下のような具合に、増加率は徐々におちついていくでしょう。
赤が上記のY=1.1^nで、黒いラインが実際のユーザー数の推移だとします。STEPNの潜在ユーザー数は限られているので、投資に積極的なアーリーアダプターを取り終えると、徐々に増加率は緩やかになっていきます。
見た通り、時間の経過とともに、赤いラインとの乖離が大きくなってきます。
必要な新規ユーザー数を確保できなくなると、何がおきるのか?
マーケットを支えるために必要なユーザー数が不足すると、靴の在庫が大量に残るようになってきます。買い気が旺盛な新規ユーザーが足りないので、靴が売れないわけです。マーケットの靴の在庫が増加するとどういう状況になっていくか、を考えてみます。
①靴の価格下落
マーケットに靴の在庫がダボつくと、まずは、靴が売れなくなるので、価格が下落します。
② mintのインセンティブ減によってGSTが利益確定->価格下落
ユーザーがmintして靴をマーケットで販売するのは、mintによって利益を出せるからです。(あるいは、靴にそれだけの価値があると、多くのユーザーが信じて自分で保有するからです。)
靴が値下がりしている状況では、mintする理由がなくなるので、GSTは利益確定さして、USDCやSOLなどに換金されるようになります。ゲーム内で使われず、利確されるとGSTは当然値段が下がります。
③ GSTが十分に下落すると、靴単価 > Mint費用 となり、再度GSTがBurnされるようになるが、、、
靴の価格が下がると、これまで「靴が高いから参入できない」と敬遠してきたユーザーが入ってきます。また、安いGSTで靴をMintできるので、靴の価格下落は一時的にとまるかもしれません。
しかし、ある程度時間が経過して、ユーザー数が十分に増えた状態では、既存ユーザーの大量の売りを支えることは難しそうです。
さらに追い打ちをかけるように、大きな問題が発生します。靴の価格の下落によって、既存の靴ホルダーの資産価値が大きく目減りします。今の評価額で数百万のゲーム内資産を持っている人は、かなり沢山います。500万の評価額のユーザーが10%値下がりすると▲50万、20%値下がりで▲100万の目減りです。
異変を察知したホルダーは、逃げ遅れまいと、我先に(安値で)靴を売りに出すと思われます。すると、更にマーケットに靴の在庫が溢れて、売りが売りを呼んで、靴の価格下落が一気に進みます。
このスパイラルに入るとどうなるでしょうか?
売りが売りを呼び、まさに落ちるナイフとなった靴とGST。この状態では、価格下落は止まりません。もはや、新規ユーザーの買い圧力だけでは下落を止めることは不可能です。
こうなると、後期に参入してきたユーザーは、高いNFTを購入して、安いGSTしか稼げない状態、つまり、現実的に原資回収すら出来ない、という状態になります。
この状態を下のグラフで表現してみます。
グラフのx=0の地点がDay0です。崩壊の始まりのXデイをX軸のメモリx=30とします。「必要なユーザー数」とは、靴の価格を支えるために「必要な数」です。
グラフの値は適当なので雰囲気だけで捉えてください!
X軸が経過日数で、x=30くらいを「必要なユーザー数と実際のユーザー数」に大きな乖離がではじめる「X Day」とします。
グレーの曲線が「参入時期別の累積利益」とします。初期に入った人は、(かなり極端なグラフですが)莫大な利益を手にしています。
そして、緑色をy=8の水平線を平均損益分岐点(益出し分>初期投資額)のとした場合に、赤くハイライトしたx=14あたり以降で入ったユーザーは全員赤字(赤いハイライト部分)でX dayを迎えてしまいます。(ここで利益は、靴の評価額を含みません。)
プロジェクトが実質的な終焉を迎えた後、最終的に黒字でフィニッシュできた人と、赤字でフィニッシュになった人の比率は計算が困難ですが、指数関数であることを前提にすると、おそらく黒字で逃げられる人の方が少なくなる可能性が高いです。
冷静に考えて、無から有は生み出せないので、
ユーザーと運営が確定した利益額 = ユーザーが損した額
です。
上図の例は、かなり極端ですが、このような結果になると、最終的には、概算で70%以上の人が損をして、30%の人が大きく利益を上げて終了、、ということになります。
実際のSTEPNにおいて、今時点が、まだx=1の辺りなのか、もう既に10を超えているのかは、残念ながら分かりません。いずれにせよ、今の私の利益は、今後に参入する方々の投入資金によって支えられている、ということになります。
以上がSTEPN(もしくは、ほとんどのBCG)が「ねずみ講」「ポンジスキーム」などと言われる理由です。こうやって単純に捉えると、先行者が極端に有利なことは明白です。
わかりやすくするために、極端な例を書きましたが、今のルールととても似ていると思いませんか?
例えば、「アクティベーションコードは、1人ずつが10エナジー消化すると1枚付与される」というルールが4月初旬から導入されました。
それを「だいたい靴1足をMintするくらいの期間に1ユーザーあたり1人を連れてきてね」と、解釈すると、上記の例のイメージとぴったりです。
もちろん、実際にコードを配布しているユーザーは少ないので、(当たり前ですが)今のSTEPNはY = 2 ^ xのようなグラフではないですが。
また、現在のユーザーの伸びも、まさに指数関数的なグラフです。Twitterの @Hosogane_LGG さんのツイートから下記、画像を拝借しました。(ご本人に掲載OK頂きました)
まさに指数関数的なユーザー数の伸びです。この伸びがSTEPNのユーザーの利益を支えています。
ちなみに、細かく見ると、4月前半に角度が緩やかになっています。これは、招待制の導入のタイミングです。3月末頃から過熱感が出てきて、靴の価格が高騰したので、「需要過多」になっていたものを調整した形ですね。
今は、いい具合に流入を抑制しながら、マーケットの価格を維持できています。
もしも、3月下旬のスピードでユーザーが増えていたら、かなり短命プロジェクトで終わっていたと思うので、招待制は英断だったと思います。
運営は今、アシックスとのコラボやったり、BSCチェーンをリリースしたり、と、右足でアクセルを踏みながら、左足では招待制によってブレーキをかける、、という難しいハンドリングをうまくこなしているように思います。
第一章のまとめ
ここまで見たように、STEPNは、構造的な問題を抱えています。これは、STEPNだけではなく、多くのブロックチェーンゲームが同様の問題を抱えています。ここまでの理解では、「STEPNはポンジスキームだ」「ねずみ講だ」は正しいです。
今は、アクティベーションコードの順番待ちとなっているような状況なので、すぐに崩壊はなさそうですが、「このままでは」いつか必ず崩壊する、というところまではご理解いただけたでしょうか?100万人が儲かり続ける美味しい話など、あり得ないです。皆様がゲットした円やドルは、必ず別の誰かが払っているわけです。
長くて申し訳ないですが、ここまでが序章です。第一章では、とりあえず、シンプルに考えることで、問題の本質を知ることから始めました。
第二章以降で、「STEPN運営チームは、いかにこの構造から脱却しようとしているか?」というテーマに切り込みたいと思います。ここからが、本番です。
相当長くなりましたが、以上で無料パート終了です。少しは読む価値があるかな、と思っていただけたなら、次の章へ進んでください。まだ1万文字以上残っております。
また、もしも、記事の内容に共感いただけたら、拡散いただけると幸いです!結構がんばって書いたのですが、始めたばかりの弱小アカウントのため、全然読まれない予定です笑 真面目に書いた初めてのNoteですので、応援よろしくお願いしますm(_ _)m
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