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ボーカロイドを"読む"~しま氏監修のボーカロイドガイド本をみんなに紹介してみよう、の話④

どーも、kthn.です。この連載はしま"氏監修のボーカロイド本を紹介しておりまして、ナンバリングは④と符ってありますが、通算3冊目の紹介と相成ります。
よろしければ前回の記事なども合わせて一読頂けると幸いです。

ボカロカルチャーの座右に冠する書物、と言っても良い程の貴重な資料やインタビューを纏めた偉大なる前2冊がドロップされ、一年が過ぎた頃。
自分の周囲でも「初音ミク記事も10周年ブーストが尽きたし、もう擦ってもしゃーないやろ…」とゴシップを栄養源にしている連中の会話もチラホラと見え初め、内心イライラ。

だが、そんな下衆な思考を遮るかのように水面下で動く者がいた。
そう、我らがしま氏である。

「ボーカロイドはブーム(流行)では無い。カルチャー(文化)だ。」

と心の声が聞こえんばかりに(幻聴)、我々にその結果を叩き付ける。

その思いの結晶がコチラ。

・ボーカロイド音楽の世界 2018

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じ、自費出版してやがる…。

斯くしてPヴァインの手から離れたこの企画は、監修したしま氏が責任を持って引き継ぎ、刊行が続けられる事となった。

そんな紆余曲折を経て出版された「ありがてぇ、ありがてぇ…」な一冊。
今回もその内容をピックアップして紹介して行きまっしょい!!


★インタビュー: ─ボーカロイドも人も

今回の冒頭インタビューはVOCALOIDの他にヴォーカリストを招聘し、楽曲製作を行う傍ら、アイドルや声優、Vtuberへの楽曲提供…と二次元と三次元、両軸の元で活躍する「瀬名航」さんに。

濃密な内容のインタビューになってはいるのだが、インタビューの途中にいきなり平田義久氏がヌルッと参加してくる所がツボ(笑)。
※今回のインタビュー記事で平田義久氏のクレジットは[撮影:]となっているのに…。
冒頭から必見のインタビュー記事になっております(笑)。


★ボーカロイドに関する2018年の重要トピック


祭りのあと…「初音ミク生誕10周年」という、各所が力を合わせたり、独自開催だったり。果たまた偶発的な同時発生がクロスオーバーした一年が過ぎ去った、その後の一年間の出来事やニュースをピックアップした記事。
改めて読むと、現在の話題に繋がるトピックも有って、興味深い内容がズラリ。

・VOCALOID5の発売
・AIの機械学習機能を活用した試み
・UTAU・重音テト10周年
・喋る「初音ミク」
・IAの活動と展開
・琴葉茜・葵の活躍
・コラボレーション企画やライブ
・海外における展開
・中国のVsinger

記事構成はこんな感じ。
項目別に内容に触れてみます。


・VOCALOID5の発売

YAMAHA謹製の音声ソフトウェア「VOCALOID5」が同年7月に一般発売。記事中ではソフトウェアへの説明は前ソフトの差異に留まり、当時の発売に関連する動きやユーザーへの反応に焦点を当てている。



・AIの機械学習機能を活用した試み

同年に公開されたAIチャットボットや音声創作ソフトウェアの研究結果。それらの機械学習系AIを用いた技術の動向を音声合成を扱う一般目線から観測。


・UTAU・重音テト10周年

飴屋氏謹製「UTAU」10周年=重音テト10周年。
その周年に動きのあった主なトピックをダイジェストでかい摘まんで書いてある。


こう並べて貰って改めて感じるのは、
「初音ミク」という「奇跡」が産んだ、もう一つの「奇跡」だなぁ、とつくづく。
…まさかこんなに感慨深きキャラクターに育つとは当時の人は知る由も無い(笑)。


・喋る「初音ミク」

VOCALOID。「歌う」ソフトウェア「初音ミク」が、日々の生活の中で「喋る」要素を増やしたのも同年。
GAFAの一部が音声サービス上での運用を始めたり、自動車会社のアプリケーションナビゲートキャラクターに起用されたり。

記事内では更にあの新幹線ロボットアニメの話や今回トピックに取り上げた意図も簡潔に纏められているので、ぜひご一読していただきたい。


・IAの活動と展開

1st PLACE所属の「バーチャルアーティスト」としても活躍中のIA(イア)。その海外でのライブ開催の話や、英語版ライブラリ発売の話、web上での新展開などが纏められている。

またIAはこの年
・「第2回AI・人工 知能EXPO」にてデモンストレーションライブ
を行ったり、
・第30回国際情報オリンピック(lol)の実行委員として広報をする
など精力的な活動を行っているのだが、今回の紹介記事から話は反れるので割愛。残念。

なので一応実行委員として活躍したIAの活動日誌を貼っておきます(完全に別件w)。


・琴葉茜・葵の活躍

琴葉茜(標準語)・琴葉葵(関西弁)というユニークな個性を持つVOICEROIDソフトウェアがweb上でバズった事に起因するイベント関係の話題と「VOICEROID」のおうたの話。

こちらはもう実際の動画のサムネイルを見て貰えば一目瞭然。

GYARI(ココアシガレットP)は鬼才。
はっきりわかんだね。


・コラボレーション企画やライブ

VOCALOIDとアーティストや文化的イベント、ライブへのコラボレーション企画が周囲を賑わせた印象から、ピックアップされた数点を紹介している。


・海外における展開

海外で行われたライブやMIKU EXPO、文化芸術プログラムへの参加の模様などまとめ。


・中国のVsinger

VOCALOIDの中国語ライブラリ「洛天依」の躍進の数々やお茶の間への浸透の歩みをレポート。

…個人的にはここまでの情報だけでも一冊出せるレベルの代物だと思うのですが…そこはやはりしま氏。
恒例となっている企画も従来通りやってます(むしろこちらがメインかも 笑)。


★The 50 Essential Songs of 2018
★The 20 Essential Albums of 2018

前者は2018年の間にドロップされた数々の曲郡から50曲をピックアップした記事。
後者は同じくして同年に様々な手法で世に放たれたアルバム形式のアイテムを厳選した20作品。

例年通りの企画なのだが、説明不足の感が否めないので蛇足として。

この企画は両企画共にしま氏含めたセレクターが苦心しながらも何とか50曲、20枚に収めたあくまで「選」であり、ここに収められていない素晴らしい作品も山程ある…と本に書いてある(笑)。

曲の方は2018年、ニコニコ動画にUpされた曲は(推定)
28000曲(ぐらい)、アルバムに至っては即売会・DL販売・クラウドファンディング頒布・ストリーミング限定…と形態も様々(と、これも本に書いてあった 笑)。

なので、セレクター方の苦労は計り知れないモノとなっている分、このレギュラー企画の「本気度」が伺える。


ふー…と、ここまでが前半戦。
…おっかしいなー。
2017年の本も凄かったのに、めちゃめちゃ内容が濃いぞー(笑)。
そして後半戦の記事も読む者を引き込ませる内容となっておるので、一所懸命ご紹介!!


★ボカロシーンにおけるニコニコ動画動画とYouTube ─その役割の分化─

この記事では大きく分けて、

・VOCALOIDムーヴメントとは切り離せない、ニコニコ動画というプラットホームの話
・ボカロシーンにおけるYouTubeの役割と状況の変遷
・ボカロPをケーススタディとした「ある一つの視点」から見るプラットホームへの参加状況
から鑑みた
・役割分化型のプラットホーム参戦の提案

となっている。

そしてこの記事自体もボカロPが執筆しておられるので、行間の空気感も風通しが良くて心地好い。


★感動とその表現 ─形容詞「エモい」をめぐって─

非常な程に幅広い使い方をされる、心情や心象の表現として扱われる言葉─「エモい」。
何故人はこの「正体不明の形容詞」を使用してまで他人に感動の表現を共有せんとするのか?
この言葉を使用する意義を問う。

という、感情表現に使われる言葉を深掘りした、とても有意義な話。
言うなればこの記事自体がエモい(笑)。


★ボーカロイドに感情はいらない ─ロボット/アンドロイド演劇とボーカロイド─

研究の一環から始まった「ロボット/アンドロイド演劇プロジェクト」。
命を宿さない者が生命を宿す者を「演じる」事のパラドックスとも言えるテーマと、それに秘めた可能性。
ボーカロイドを扱う側からの観測、として。

ボカロ楽曲のモチーフとしても良く使用されるこの命題は正しくこの本に向いている、と言っても過言ではないと感じた。


★インタビュー: ─ボーカロイドと歌うこと

2017年のEssential Songsでもピックアップされたユニット、「cat nap」。そのメンバーである「ねこむら」氏にボーカロイドと共に歌うことになったきっかけや周囲の反応、自身が感じる事や思いなどを直撃。

背景にあるのは(本文でも触れていたが)、著名アーティスト等も初音ミクとデュエットするケースが格段に増え、肉声/合成音声の混声の敷居が下がったことに起因している。
当時の状況を鑑みてもキャッチーでタイムリーな内容のインタビューであったと言える。


★対談: ─ボカロ系クラブイベントのこれまでとこれから

ボカロ系クラブイベント──通称ボカクラ。
そのボカクラ誕生初期から活動し、そして現在も活躍中の
・ピコシマメ:DJ。VOCALOID-Maniax(ボカマニ)主催。
・HCHO:DJ。Vocaloid High(ボカハイ)主催。
・5時間:DJ。VOCALOID-Infinity∞(ボカイン)元主催。
・もなか最中:DJ。VOCALIFE(ボカライフ)主催。VOCALOID Crossing(ボカクロ)他多数のレギュラーDJ。
の4名を迎え、ボカクラ黎明期からの振り返りや裏話、現在のボカロシーンへの分析、フェスのあり方、未来予測などなど、主催とDJ、双方の視点から忌憚無く語られる見応えの多い対談。

対談形式でリラックスした様子の記事なので読み易い反面、貴重な時代の証言、とも言えよう。
記事末には主要ボカクライベントの一覧も載っており、本当このご時勢じゃなけりゃ…とボヤきたくなる(泣)。


★様々な歌声合成ソフト達

合成音声…取り分け歌声合成ソフトは進化著しく、実に様々なソフトウェアがある。
その代表的なソフトウェアの種類の一部を調"声"師の方が詳しく、そして解り易く解説してくれている記事。

この記事内でも「UTAU・重音テト10周年」というトピックを紹介したが、
そもそも「UTAU」って何ぞや?
という方にも理解しやすく書かれていて、そして読んでいて楽しい。
かと言ってディープな箇所の取り溢しも無く、端的に言って神記事です(笑)。


★Synthesizer V ─AI時代のボーカロイド・クリエイトにおける作家性の行方─

ボーカロイドやその他合成音声ソフトウェアを扱うボカロP…その個性、独自性の一部は、今後AI技術の進化によりその姿形が変容していくのかも知れない。
システムはより良い利便性を追及していくもの。
だが時に、利便性は斯くして汎用性を伴い、汎用性は時として個性を潰す。
技術革新、ディープラーニング(機械学習)、培ってきた経験則、人間としての感受性…。
この織り成す平行線の様な主題の果てに待っている一つの結論とは?

個人的にはこの一言が全てだと思う。
「神は、細部に宿る」
そして、その「個性」の積み重ねがが、未来の自分を助ける。
そう信じて、クリエイター方は日々の創作に励んでいってほしい…と感じるし、心からそう願う。


─以上、拙いながらもこんな感じで紹介させていただきました、

「ボーカロイド音楽の世界 2018」

もし興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、是非とも本誌を手に取ってみて下さい。


Stripelessレーベル公式の詳しい内容説明と商品ページを貼っておきますので、よろしければこちらからどうぞ。
(しま氏も在籍しているStripelessレーベルのBOOTHの商品ページに飛びます。)



・まとめとして


いやぁ…何で前回の本(2017)より薄いのに、内容が前回の本(2017)より長くなるんだろうね…(白目)。

とまぁ、今回もザックリ簡単に紹介してしまっているが、この本が出版されること自体(本当に)簡単な事では無い、と思う。
情熱や信念、気持ちだけでは、この刊行には至らない事であろう事は一読者である自分にも容易に想像できる。
多分、そこには沢山の人の「関わり」もあったことでしょうし、困難もあったことと感じます。

正直、舞台裏までは知らないけれども、一読者として、ただただこの本が刊行され、読めるという事実には「感謝」しかありません。
この本を作ってくれて本当にありがとうございました。








え"っ!!もう一冊あるの!?
最新刊は「ボーカロイド音楽の世界 2019」!?

…。。。
あー。

で、ではまた次回!!

サポートしていただけると幸いです。