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人生迷子のユルフワ救済 ~トラベルライト心療内科

もし、あなたがどうしても一人では治せない心の病気に罹り、己の人生を自身の脚にですら満足に歩けなくなったとする。

そしてどのような形にせよ、やがて何かしらのご縁組により、どこかの病院施設や診療所に流れ付けたとする。

流れと勢いのまま、藁にも縋る思いで向かった診療所。
だがその施設は見た目で判明する以上の老朽化も著しく、診療所の入り口には謎の怪文書が並ぶ。
そして挙げ句の果てに看護師によって促されながらの医師が自己紹介をする第一声が、

「私は宇宙人です」

であったのなら、あなたはどうし…ようもないですよねぇ(笑)。



今回は人生末期で治療困難な、けれどどこかしら愉快な患者の駆け込み寺でもある診療所を舞台にした、おかしい9割・最後にホロリのゆっくり茶番劇

トラベルライト心療内科


を、詳細な部分はぼかしながら(気になったら本編観てね)紹介していこうと思う

…のだが。
何せ第一話の冒頭、開始5分の説明を上手く掻い摘まんで紹介の導入にしていこうと思った矢先からこれ→(自己紹介:宇宙人)である。
読んでて何やら不安じゃろ?

儂もそうじゃ(遠い目)

トラベルライト心療内科のメンバー紹介

トラベルライト心療内科に携わるメインのメンバーは3人(2024.5月現在)。
一人ひとりを簡単に紹介していこう。

・一ノ瀬 ツカサ(いちのせ つかさ)


右側の見切れている彼が一ノ瀬君
彼視点で物語が進行するので今のところ立ち絵はない

通称: 一ノ瀬君。
物語冒頭三日前に自殺未遂を起こした、自称高校2年生。
自称というのも、発見時に意識不明のまま市立病院に運びこまれたが、その際に記憶喪失障害と判明したため。
意識が戻り大暴れをし、拘束具を必要とする程のパニック状態に陥るが、その後のご縁でトラベルライト心療内科の預り患者となる。
そして精神を患っているにも関わらず、この物語内での数少ないマトモ枠であり重要なツッコミ役でもあるなかなか不憫な子でもある。

・印 理恵(しるし りえ)


印先生。初期のまんじゅうVer.
こちらもかわよ

通称: 印先生。
自称「しし座にあるスカリベイト第二惑星J-PAXからやってきたJ-PAX星人」。
現在はトラベルライト心療内科にてティンホイルハット(※)を使った宇宙精神医学を用い、往年のネットスラングを駆使しながら日々の診察に勤しむ精神科医。

(※) Q: ティンホイルハットって何ですか?
A: 印先生がドヤ顔で持ってる右側のやつです。察しろw


そしてバナナとモンスターの出演する作品をこよなく愛する部分があり(というかそれが主)、それらを話題に挙げると会話がそこから動かなくなる、という非常に残念なかわいらしい一面を持ち合わせている。


・藤田マコ(ふじた まこ)


藤田さんの初期まんじゅうVer.
でも笑顔は相変わらず

通称: 藤田さん。
そして自称看護師
その実態は通常業務から患者の引き受け、はたまた料理や印先生と一ノ瀬君の面倒まで全てをそつなくこなす、トラベルライト心療内科の事実上の大黒柱
中でも特筆すべきスキルの一つに藤田式行動認知療法があり、これは暴れる患者を無傷でコントロールするというもの。
物語の冒頭開始一分で暴れる一ノ瀬君を瞬(またたき)で制圧したのもこの技だ。
印先生への信用と常に笑顔を絶やさず患者を見守るその姿勢に曇りは無い。



以上がトラベルライト心療内科に関わるメインメンバーなのだが、これは各々の表層的な紹介でしかない。
あくまでパーソナルの細かい部分に触れずに紹介を行っているものであり、深い箇所は作中で語られているので是非本編でその醍醐味に触れてほしい(関連キーワードは太字でヒントに残した)。


作品の魅力


・診察風景(ただし、アレ)


トラベルライト心療内科には実に様々な理由で患者が訪れる。

そしてその診察風景が物語の主となるのだが、その中にはどこか破綻していて、錯乱/支離滅裂なパターンの患者も多く(メインキャラクターの一ノ瀬君も含めて)、果たしてどのような手腕を持ってして治療を施していくのか。
そして如何様(いかよう)に物語を着地させ、「次回をお楽しみ」に持っていくのか。
この作品の見所のひとつである。

…字面だけ見たらこんなシリアスな状況なのに観ている側としては何故か笑いがこみあげてしまう。

何故なら診察するのは上記にも挙げた印先生(宇宙人)である。

ここにもこの作品の醍醐味が込められている…。


印先生


だ、醍醐味、である…。( ;∀;)


・舞台背景(ただし、カオス)


トラベルライト心療内科は大都市の郊外に存在する人口4万人規模の地方都市、夕中部市(ゆなかべし)に存在している。

元々は住宅街と工場地区が大半、という田舎にある工業団地のモデルケースみたいな町だった。
だが近年では駅前周辺に大型ショッピングモールや市立病院などもでき、都市開発も進んでいる。

…ここまでだと地方のベッドタウンとしても魅力的だと思うのだが、全国の住みたい街ランキングでは毎回最下位らしい。
以下にその主たる理由を挙げてみよう。

・元々貧困層が多い地区→治安が悪いことで名を馳せる
・不景気による失業者も多い→近年の様々な事件の増加
・ドラッグは非合法だが事実上の黙認→「デンキ」と呼ばれるドラッグの流行
・強盗は警備ロボットの足留めにジャマーを食らわす→犯罪の巧妙化


ちなみに福祉医療は日本最低レベルらしく、そんな状況下でもドラッグによる中毒者や犯罪に巻き込まれた急患がわんさと運び込まれてくる為、市立病院は機能不全を起こしているらしい。

…とまぁ、こんなスチャラカでイリーガルで騒がしい町、夕中部市にトラベルライト心療内科はあるのだが。
しかしどんなディストピアじゃ。
まるでゆるいGotham Cityじゃねーか(笑)。


その他にも舞台上の裏設定(作中で明かされる)やお話に関わってくる登場人物(これも作中略)もいるのだけど、ここでは割愛する。


・しかし物語はちゃんと帰結する


ここまで読んでみて、どの様な流れの物語を想像しただろうか。

作品のキモに触れないように書くがあまり、そして舞台や登場人物の個性があまりにも賑やかなため、実は書いているこっちとしては魅力のハンドリングを上手く扱えていない感がある。
だがそんな中でも一つだけ確実に言えることがある。

それはこの項の表題の通りで、この作品は物語やワード数という「ガワ」が目眩ましになっているだけで、実は作者の着地点、つまり作者の「伝えたいことや思いに際しては完全にブレが無い」のだ。

そしてもう一度問う。
上記全てを読んで、どういう物語を想像できただろうか。


ここからは完全私見。
ここでようやく主観的な粗筋を述べさせてもらうと。

今回オススメする「トラベルライト心療内科」
決して交わることのできない、どうしようもない世界の片隅に住まう人間同士が、
何かしらのご縁を境に「軌跡を積み上げて出来上がった物事」を共有し、
経験・体験の中で共鳴し合うことによって芽生える「人生の中のほんのちっぽけな奇跡」に気付き、
やがて「希望の切っ掛け/又は切れ端を掴み取るまで」を描いた、
それでもやはりどうしようもない人たちが繰り広げるハートフルホロリな人間讃歌の物語である。

言いかえれば
「人間なんて皆、どこか惨めでどうしようもなく、けど皆どこか美しい。
そんな作品を見て、それに気付く。」
その様なことを学ばせてくれる物語だなぁ、と思いました。


…ここまで設定やら何やらを読んでいて、この着地点は想像できんじゃったろ?

かく言う儂もそうじゃった(遠い目)




結論 ~またはもっと夕中部市を楽しむための補完説明



結論:
渾身のドタバタ劇を見せられながら最後には胸のどこかが熱くなれる。
そんな魅力を持つ作品がトラベルライト心療内科です。

何か暇な時。
どこか寂しい時。
そしてどうでもいい時にこそ。
第一話のテーマからブッ飛んでいるこの作品を見てほしい、と思う。

そして試聴後に何故か達成感にも似たような満足感に包まれた時。
今一度印先生の話を聴きにこの診療所へと足を運ぶことになると思うので、是非ともその様な行動に出る自分ごと楽しんでほしい




(※)



ここまで今記事を読んでいただいた方へ。
ここからは「トラベルライト心療内科」へと足を運んでくれた方向けの補足記事になります。
何しろ、ここから先への文章が


この作品を手掛ける人は最低野郎です。


から始まる記事で、観ていない方からは
「ちょっとここまで持ち上げておいて何アンタ唐突にディスり始めたの?」
とった誤解を招きかねないからです。
是非ともトラベルライト心療内科本編を試聴してからの閲覧をお願いいたします。



という訳で本題。

あのどこかユルく、ハートウォーミングな作品の中で唐突に出てくる、強い言葉で違和感丸出しの 最低野郎 の文字。

あれは作品(トラベルライト心療内科)に対して何かしらの意図がある…訳では無くて、単純に作品を制作しているチャンネル主の本来の母体が「最低野郎のSF世界」というB級SF映画/ロボット/アニメの紹介チャンネルの主だからです。

ちなみにこのチャンネル自体もゆっくり茶番劇なのですが…これがまぁ端的に言ってとても面白い

主人公のアルファがキンキンに熱した鉄球を水にブチ込んだかのように暴れまくり好きな物を熱く語り、相方の霊夢が必死に無駄な抵抗それを止めようとする様はまさしく漫才のようでありで、その箇所だけでもかなり必見なのだが。

左:主人公のアルファ。タガとネジが消失している。周囲を巻き込む。
右:霊夢。お馴染み東方projectの博麗霊夢に似た何か。
基本巻き込まれる。


実はこの二人を含む愉快な仲間達が大暴れする舞台が夕中部市

そして暴走し続けるアルファに手を焼き続け、ついに業を煮やした霊夢がアルファを精神科に連れて行くことを決意するのだが、行く先々で悉(ことごと)く失敗。
その行く末に辿り着いた先がトラベルライト心療内科であり…。

つまりトラベルライト心療内科は最低野郎のSF世界から派生した、スピンオフ作品なのである。

そしてそのお話は正に
トラベルライト心療内科のエピソード0(ゼロ)
へと繋がっていく作品もあるので、興味のある方は是非こちらも観てみよう。

…あ、公共での試聴は充分危険です(笑笑笑)。


そしてこの最低野郎さんですが。
この他にも「最低野郎のオタク世界」というチャンネルを持っていて、

こちらについては最低野郎のSF世界についての解説・補足を行っていたライブ配信のアーカイブも残っており、その中でトラベルライト心療内科についても言及されている(33:50~)


更に最低野郎さんの世界やコンテンツに興味を持たれた方がおられるのなら、最低野郎さんご自身が作品への解説をされているnoteを持っているので、こちらを読んでみるのも一興だ。


その記事郡の中には今回紹介しているトラベルライト心療内科や夕中部市に言及しているnote記事もあります。

「好き」という感情を燃料にしながら、ひたすらにその道無き道を邁進していくその姿勢。
そしてコンテンツとして形に残していくその背中に「最低野郎、危険に向かうが本能か(とある作品の第9話内10話予告より)」と声をかけたくなるレベルの活動量。
あんなに素敵な脚本を書けるのも納得である。




今回トラベルライト心療内科というコンテンツから最低野郎さんに行き着き、その先に得られたもの。

それは知識や物語は勿論のこと、「好きというポジティブ」に「中身を伴わせて、そして熱量を持って発信し続けること」の意義を得られたような気がする。

好きなものを好き、と言っただけでも叩き棒を持ち出してくる輩がやって来る昨今ではある。
だが好きなものを見付けた自分自身に嘘を吐かず、堂々と宣言し続ければ良いのだ。

それはやがて信念へと変わり、いつしか自身を支えてくれる大きな「」となる。
最低野郎さんの産み出すコンテンツに触れていく度に、果たしてボクも病気にかかってしまったのだろうか。

だが、それでいい。
もし仮にそうであったのなら。
ボクも印先生の元へと足を運び、この「愛しき病」と長く付き合っていこうと思う。




結びに


最早、本人自体がコンテンツと化している最低野郎を名乗る人物。
作品を愛した者が作る作品には、愛そのものが溢れていた。


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