プレイヤーに呼応するゲームサウンドとグラフィック

 個人ゲーム開発者の形と申します。前回の記事で何件か評価やフォローをいただき、大きな励みになりました。特にマガジンに入れて広めて下さった方々、本当に助かります。note有り難い...
 今回の記事では僕が作ったゲームのサウンドやグラフィックに関するあれこれを語っていきます。個人でゲーム制作をしている方にお勧めできるかもしれません。

 プシュプはスマホ1台で2人対戦ができる落ち物パズルゲームです。互いに連鎖を作り、フィールドを押し合って競います。フォントなどを除き、基本的に一人で開発してきました。
 個人でゲームを作る場合、プログラム・グラフィック・サウンドなど全ての素材を自分で用意する必要があります。作り手によって得手不得手があり、全体の品質をどう揃えるかが常に課題になるでしょう。新しい領域を一から学習する手間も大きくなるため、全ての要素にこだわる時間はまずありません。

 僕はグラフィック関連の作業が苦手だったため、得意分野であるプログラミングを用いた演出を代わりに多用しました。プログラムの力を借りれば、手描きとは違った趣向の映像が作れることを経験上知っていたのです。
 消えようとしているブロックにびびっと光が伝染したり、背景をベルトコンベアのように動かしてスピード感を出したり、様々なオブジェクトを動的に制御することで地味にならないよう工夫しています。絵はほとんど描かず、いかに少ないデザインで済ませるかを考え続けました。

 サウンド関連では、プログラムで再生速度(つまり音の高さ)を変えられるのが何かと使い勝手がよく、効果音を動的にいじって演出の幅を広げました。例えばブロックが光る際にドレミファ...と音階が鳴り、消えるブロックの数や連鎖数が何となく分かるようになっているのですが、これは1つの音声ファイルを複数の音程に変化させることで実現しています。
 こういった工夫の中でも最たるものがBGMです。本格的な作曲を避けつつもプレイヤーを飽きさせないよう、「短いドラムフレーズをたくさん用意し、プログラムでつなぎ合わせて鳴らす」という手法をとりました。

 戦況や連鎖の大きさに応じて様々なパターンのドラム音が再生され、それらが絶えず連なることでBGMが自動生成されます。
 ドラム演奏の心得が多少あったため、打楽器を使えばゲームの盛り上がりを多彩に表現できると見込んでいました(ゲーム内の音は打ち込み)。プロに対抗できる作曲技術を磨いている暇はなかったので、自分の得意な知識だけで押し通したのです。
 結局プログラムの調整などに凝りすぎたせいで手間を省けたとは言い難いのですが、かなり個性的なBGMに仕上がったので後悔はしていません。

プレイヤーに寄り添う音と映像

 省力化しつつ個性を発揮するためにプログラミングをフル活用した訳ですが、その過程で得た副産物がありました。あらゆる音と映像がプレイヤーの成長を「褒めてくれる」ようになったのです。
 例えばBGMの場合、自然と様々なドラム音が再生されるよう、プレイヤーが消した連鎖の大きさに応じて音声ファイルが選ばれるように設計していました。小さな連鎖を消すとささやかな音が、大きな連鎖を消すと強烈な音が鳴る。それを聞いていると、自分のプレイングの良し悪しをBGMが評価してくれるように感じ始めました。

 プログラムを軸にして音や映像に幅を付けようとする内に、自然とプレイヤーの行動を反映する演出が増え、上手くなればなるほど賑やかになる仕様になっていた訳です。音がプレイヤーを鼓舞し、映像が成長を促すような、プレイングと深く連動する演出が磨かれていきました。
 上達するとどんな感じになるか、動画で見てもらえるとわかりやすいと思います。非常に騒がしいです。

 正直言ってしまうと、プシュプのグラフィックは他のゲームと比べれば地味な方です。サウンドまわりも結構尖ったやり方をしているので、人によってはがさつに聞こえるかもしれません。
 ただこれらの演出は全て、実際に遊んでいるプレイヤーの体感に沿うことを何より優先しています。一見とっ散らかった音や映像も、ゲームに熱中して高揚した気分と融合するよう最適化した結果です。ゲームがプレイヤーの成長に寄り添う感覚を、ぜひ一度体験してほしいと思います。

ゲームらしさを追求する

 ゲームはあらゆるコンテンツを内包できる便利な入れ物です。テキスト、画像、音、動画など、様々な素材を自由に組み合わせて使うことができ、多種多様なクリエイターに活躍の場があります。
 しかし優れた音響や映像美があっても、プレイヤーの入力と関係なく一方的に流れるだけなら、ゲームならではの強みを発揮することはできません。

 ゲームをゲームたらしめる最大の要はプログラムです。コンピューターの力を用いた音や映像が、他のコンテンツにはない魅力を付加してくれます。
 そして何より、プログラムはプレイヤーとゲームをつなぐ唯一の接合点でもある。遊び手の意思を画面やスピーカーへと流し込み、感情に沿った密接なリアクションを返すためには、巧みなプログラミングが欠かせません。

 リッチな演出が当たり前の時代において、プシュプが提供しているものは非常に原始的と言えるでしょう。プログラムの力を基盤とし、ゲームらしさに特化することで個性が際立ちました。個人開発だからこそできる、全てのパーツが一体化したゲームデザインをお楽しみください。

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