高齢者介護は、誰のためにあるのか?
介護事業を営んでいると、ふと疑問に思うことが色々ある。
その1つに「高齢者介護の仕事は、誰のためにあるのか?」がある。
この疑問に対して「え? 高齢者のためだろう」と呆れられるかもしれない。
確かに介護サービスを受けたり、介護施設に入所するのは高齢者だ。
しかし、その費用を高齢者本人が負担していることは稀である。(手続きや管理も含めて)実質的にはご家族や介護保険が支えている。
それは高齢者介護が社会問題になっているからだ。
それは「高齢者が独りでは生活できない」が問題なのではない。一見すると社会はこれを何とかしようと多くの人員と資源を割いているが、これは表面的な話である。
高齢者介護の本質的な問題は・・・
「独りでは生活できない高齢者を支える人がいない」
「高齢者を現在進行形で支えている人たちが、大きな負担を抱えている」
・・・ことである。
だから、誰かが高齢者を支える必要があるし、誰かが介護に苦しんでいる人たちを支える必要があるのだ。それに対して介護という事業(仕事)が存在しているという話になる。
つまり、「高齢者介護の仕事は、誰のためにあるのか?」というと問いに対する答えは「誰でもない」または「介護に苦しんでいる人」となる。
エンドユーザは高齢者であるものの、本質的なユーザは仕事として介護をしているわけでない介護者とも言える。
実際、高齢者介護という大きな社会問題に対して、介護離職やヤングケアラといった問題が無視できないレベルになっている。
介護事業をしていても、親の介護を頑張ってきたけれど、介助量や認知症の諸症状がどんどん手に負えなくなってきて、ようやく介護サービスや施設検討をするという人達は多い。施設見学やサービス契約時などにご家族が堰を切ったように、感情的に苦労話を1時間以上話す人もいる。
そして、特に施設入所というカタチをとった後に「ようやく自分の時間ができました」と表情が柔らかくなったかご家族もたくさん見てきた。
このような出来事からも、介護サービスとは直接サービスを提供するご本人上に、それまで身近で介護に携わってきた人たちのために存在しているのかもしれない・・・と思ってしまうことがある。
もちろん、高齢者1人1人のためにあることも事実である。どちらが優先順位が高いという話ではない。仕事として介護をしている立場として、ふと思ったことを綴った与太話を思っていただければ幸いである。
ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた人へも、感謝。
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