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感覚に頼った業務を「誰でも再現可能にする」だけで介護現場は楽になるはず

介護現場は感覚に頼った業務が多い


右も左も分からない介護の素人だった私であるが、今では運営という立場でもあり現場の介護職員としても普通に働いている。

特に現場業務においては、ベテランスタッフに教えてもらったり自分で日々勉強しながら四苦八苦して身につけていった。仕事なのでそれを努力とは思っていないが、そこそこ頑張ってきたなと自分で思う。

さて、現場業務を覚える過程で思ったことがある。

それは、介護現場はスタッフ個人の感覚に頼った業務が多いということだ。

予めお伝えするが、現在ではボディメカニズムや脳科学に基づいた認知症ケアといった技術やスキルが浸透している。高齢者の多岐に渡る問題や課題を解決するために色々な専門職も存在している。

しかし、それでも現在もなお、介護現場では個人の感覚に頼った業務が残存していることは、そこで働いている方々ならば理解できると思う。


感覚による業務は悩みを生む


特に未経験で介護現場に入った新人スタッフは「そんな教え方をされても、すぐできっこない!」と頭を抱えることもあるだろう。

例えば、「利用者さんが寒そうにしていたら、カーディガンを羽織らせて」と言われたらどうだろう? 「寒そう」というのは完全に感覚だ。

「便臭がしたらオムツの中を確認してみて」と言われたらどうだろう? 
これは経験によって何となく身につくが、そもそも嗅覚というものは人によって異なる。

――― 大した話ではないかもしれないが、このような教え方を受けたときに「どうすればいいの?」「何を基準にすればいいの?」と悩んでしまう介護スタッフがいてもおかしくない。

実際、このような感覚に頼った業務(教え方)に耐え切れずに、介護の仕事を辞めてしまうという話も耳にする。しかし、感覚に頼った業務が当たり前の介護スタッフからすると、どうして分からないのか理解できないという問題もある。


誰でも再現可能にする


このような不幸を生まないためには、個人の感覚に頼った業務を見極めて、それを誰でもできる業務にする努力が必要である。

今こそ、個人の感覚によってその人しかできない業務体系を、誰がやっても同じようにできる業務体系にするのだ。

特に介護現場は人手不足であるため、余計に「誰でも再現可能にする」という業務体系が望ましい時代になっている。

実際、介護業界に飛び込んできた新人スタッフを見ると、感覚による業務を毛嫌いする人たちが増えている。それはインターネットで検索すれば簡単に答えっぽいものが出る時代だからこそだろう。

例えば、「利用者さんが寒そうだから」は「室温が20度を下回った場合」みたいにしたり、「便臭がしたら」は「前回の排泄から2時間後に確認する」といった数値やルールを設けるのだ。

あるいは、テクノロジーが発展している現代においては、体温や排便状況をセンサが検知することで、「カーディガンを羽織りましょう」「排便しています」とスマホに通知する技術はあるし、そのうちAIがアドバイスできるだろう。

このような仕組みづくりをすることが「誰でも再現可能にする」ということだ。身の回りにある、まだ個人の感覚に頼ってやっている業務を探してみることから始めてみてはどうだろう?


「優れた個人」より「分かりやすく教えられる人」へ


このような話をすると、今まで個人の感覚によった介護業務をしていた方々から反発をくらうかもしれない。

しかし、なぜ反発するのかと言えば、それはアイデンティティの喪失につながるからという心配があるからだと思う。

実際、個人の感覚で介護業務を円滑に行っている人は優れている。しかし、それを個人の業務範囲で終わらせているため、それ以外の介護スタッフと足並みが揃わないこともある。

別に足並みを無理に揃える必要はないが、その人しかできないことを職場で単独で行ってばかりだとチームワークにならない。

そこで、優れたスキルを個人単位で終わらせるのではなく、そのスキルを少しでも分かりやすく周囲へ教えられる人になることを目指してはどうか

動画配信サイトなどを見ても、確かに「スゴイ!」というスキルを持っている人は注目されるが、一方で「誰でもできる●●」みたいに分かりやすく教えてくれる人もまた注目される。それは「誰でも再現可能にする」を体現したものの1つのあり方だと思う。

そういうことができる人は、アイデンティティを喪失するどころか、どんどん自分という存在を確立することができるだろう。


――― 個人の感覚に頼るのではなく「誰でも再現可能にする」ということが増えると、介護現場の業務はどんどん楽になると思う。どんどん楽しくなっていくと思う。

このような考え方も介護業界のDXにつながるのではないだろうか。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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