見出し画像

介護職員等処遇改善加算という、コンセプトは良いが事業所にとってはリスクがある制度

「介護職員等処遇改善加算」という制度がある。

これは名前の通りであるが、介護職員の安定的な処遇改善を図るために職場環境を整備することを要件として受給され、介護職員の賃金改善に充当するというものだ。
受給されたお金は会社が内部留保したり、賃金改善以外のことに使用することはできない。あくまで介護職員の賃金改善を目的としている。

これは色々な変遷を経てきた制度だが、介護職員処遇改善加算に類する交付金から始まり、正式に介護報酬に組み込まれ、その後は介護職員等特定処遇加算やベースアップ等支援加算など創設された。
申請や実績報告が煩雑になった経緯から、令和6年に「介護職員等処遇改善加算」として一本化された。 



このように説明されても何の話かさっぱり見当がつかない方は多いだろう。
安心していただきたい。介護職員等処遇改善加算とう制度を完璧に把握・理解できている人は少ない。何なら管轄の行政の担当者ですら把握・理解しきれていない様子だ。

そんな制度だからか、わずかの要件を満たすだけで受給できると分かっていても事務処理や違反のペナルティを懸念して申請しない事業所もある。財源は介護保険をはじめとする税金であるわけだから、おいそれと簡単に支給するわけにいかない事情があるのだろう。

しかし、あまりに制度が煩雑すぎる。職員の賃金改善ができるのはありがたいとが、受給できるのはあり事業所内でも「誰に」「どのくらい」配分するのかを決めるのは頭を悩ませる。また、配分額が受給額を上回るように管理したり、受給額の三分の二をベースアップになるよう試算したりと色々面倒なのが本音である。

配分額を受給額を上回るよう多めに配分額を設定すれば余裕があるが、下手すると受給額が少ない場合に事業所の持ち出しになってしまう恐れもある。



ここで「受給額は事前に分かるのではないか?」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれない。その回答としては「予測はつくが正確な金額は分からない」となる。

というのも、介護職員等処遇改善加算は、介護報酬(いわば売上)に対して介護サービスごとにパーセンテージが決まっている。つまり、この制度は事前に「介護職一人あたり〇〇円支給しますよ」という固定額ではなく、その月の売上によって変動するのだ。

そのため、利用者数(顧客)が減ると売上は落ちるので、介護職員等処遇改善加算の需給額も減るという理屈になる。もちろん、利用者数(顧客)を一定数確保することはビジネスとして大切であるが、介護施設となると母数に上限があるうえに入居者が退所(死亡)が連続することも珍しくない。

もうお分かりだと思うが、現行における介護職員等処遇改善加算という制度は事業運営として結構リスクがあるのだ。介護職員からすると自分に配分された金額しか見ないと思うが、受給要件や配分額を考える立場からすると「こんな手間やリスクを負ってまでやることなのか・・・」と思ってしまうのが本音だ。 


――― とは言え、雇用している介護職員に少しでも賃金改善したい気持ちはある。ただでさえ介護職は低賃金と言われているうえ、(比較対象に疑問はあるが)他業種と比べて賃金格差があるため、何とか解消するよう努力は惜しまない。

本当に介護人材の確保のために賃金改善したいならば、もう少し制度や手続きを簡素化するとか、要件をシンプルにするとか、あるいは「介護職員一人当たり〇〇円支給する」など明瞭会計(?)な制度になれば良いのにと思う・・・のは贅沢な話だろうか。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

いいなと思ったら応援しよう!