体温測定は1日何回も行うべきか?

コロナ感染をきっかけに、体温測定が習慣になった人たちは多いと思う。これは日々の体調管理として良い傾向だと思う。

医療福祉においても患者や利用者の日々の体温や血圧を測定して、異常の有無を確認する。
介護サービスでは、健康管理の他にも、例えば入浴介助前に体温や血圧などを測定して「入浴をしても大丈夫だね」「今日はシャワーだけで済ませようか」といった指標にする。高齢医者など身体状態が弱っている方々は、入浴そのものが肉体に負担がかかることもあるので、こういった数字は大切だ。

しかし、このような仕事とは別に「1日に何度も体温測定をする」という人たちがいるらしい。

それは感染症を気にしての不安解消だったり、万一を考えて職場や周囲に迷惑をかけないための意識もあるだろう。

それはそれで自身の気分の緩和や他者への配慮と言えるが、1日の活動時間帯において何度も体温測定して一喜一憂するのは少し違うと言いたい。



そもそも、なぜ体温を測定するのかというと、現状の自分の平熱を把握して、その都度の測定結果と比較するためだ。(もちろん、それ以外の目的もあるのだが、その辺りは割愛する)

毎日測定していると「朝の自分の体温は36℃〜36.5℃かな」という目安がわかってくる。これがその人にとっての現状の平熱と見なせる。

「その人にとっての」という言い方をしたのは、平熱が低い人もいれば、一般的にやや微熱と呼ばれる人が平常の人もいるからだ。一般的と言われている平熱と違うからといって「自分は異常だ」と思うのは早計だ。
気になるならば、騒ぐ前に病院に行って検査なり受けるのが先決と言える。

そして、自分にとっての平熱の範囲が分かったところで、例えば36.7℃と少し高い日があれば、最近の疲労やストレス、睡眠や食事を振り返って対策を立てる。仕事をセーブしたり、生活習慣を見直すなどが必要だ。

もちろん、38℃に近い数字になったら、それはこれは平熱との比較以前の話で明らかな状態異常なので、医療機関に相談したり安静生活を受け入れるしかない。



さて、改めて「1日に何回も体温測定する」について話を戻したい。

確かに、コロナ感染という現代社会を脅かした(脅かしている)感染症を気にしたり、健康不良を心配する気持ちは分かる。

しかし、何かしらの疾患や一次的な状態異常を理由に定期的な体温測定を要する場合を除いて、1日に何度も体温測定することは合理性に欠ける。

なぜかというと、人間の体温は1日の中で大なり小なり変動するからだ。
朝に測定した数値がずっと1日ずっと維持されるわけではない。

朝起きて日が高くなるにつれて人の活動量も活発になるので、体温も自然に上がる。さらに、運動や肉体労働など体を動かしたり、食事や水分を摂ったり、喜んだり怒ったり、ストレスを感じたり、お昼寝をしたり・・・といった要因によって変動する。

これらは多くの人たちが日常で行なっていることだが、これらによっても変動することを忘れて、何度も体温測定しては一喜一憂する人がいるのだ。

極論だが、激しい運動をした後に熱々のラーメンをたらふく食べて「何だか体が熱い・・・発熱がきになるから体温測定しよう」と思わないだろう。

しかし、発熱や体調異常を気にするがあまり、すぐに結果が出る体温測定によって安心感を得ようとするのは、もはや現代病に近い。



もちろん、健康管理としての体温測定は大切である。自分でおかしいと思ったタイミングで測定することも必要である。

しかし、だるさや脱力感、喉の痛みや咳といった諸症状がなく「なんとなく」「念のため」と神経質になって何回も体温測定するのは、逆に健康障害と精神疲労につながりかねない。

せいぜい、1日の始まりとして起床後しばらくしてからと、就寝前(入浴やシャワーの前)の2回くらいを基本に考えれば良い

別に日中帯に測定しても良いのだが、何の異常も感じないのに測定しても、平熱よりもやや高い数値になる可能性があり、そこでストレスや不安を抱くことは考慮いただきたい。



本記事は、介護という仕事を通じてお伝えしたかった記事ではあるものの、実際の介護者の中にも何回も闇雲に体温測定や血圧測定をしようとする人はいる。

そのとき状態異常があるといった理由はあれど、職員間で共有した時間帯に定期的に測定するのではなく、気になるから「とりあえず」何回も測定するのだ。もちろん、「何かしてあげたい」という強い気持ちがあることは伝わる。

自分自身のコンディションを気にせず働いていた人たちは多い。しかし、辛辣なことを言うが、何回も測定しても利用者の状態異常が治るわけでもないし、体温が下がるわけでもない。

場合によっては、自己満足や個人の不安解消のためにやっている様子もうかがえる。それよりも、少しでも安静にして自然治癒を促すほうが良い。

もしも、何回も体温測定をしてしまう癖があり、それで不安感やストレスが増している可能性があると思った方は、よほどの体調不良時を除いては、健康管理としての体温測定は、朝と夕以降にしてみることをオススメする。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。



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