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「介護の仕事は大変」という思考停止
世間的に「介護の仕事は大変」と言われている。
確かに介護の仕事は大変ではあるが、仕事とは大変なものである。他人が引き受けられない・引き受けたくないことを代理でやるわけだから大変なのは当然である。
そもそも何の仕事と比較して「介護の仕事は大変」と言っているのか分からない。私は介護の仕事をしているが、配達業やコンビニ、銀行やシステムエンジニア、飲食店や建築などの他業種の方々を見ていると「大変な仕事だなぁ、すごいなぁ」と素直に尊敬の念を抱いてしまう。
また、介護の仕事は人間関係や職場環境の悪さもクローズアップされる。しかし、これも言ってしまえばどの業界でもどの職場でも大なり小なりある話である。
もちろん、これらは個々に合う・合わないはある。人間関係や職場環境というのは合わないときは合わないし、意外にしっくりくることもある。
これは介護における働き方も同様である。介護の仕事と言ってもその役割は色々あり、それだけ合う・合わないも生じる。
家から家を移動する訪問介護の働き方が合っている人もいれば、介護施設で1日介助しているほうが合っている人もいる。
また、同じ介護施設でも、施設形態が異なれば合う・合わないも生じることがある。
例えば、有料老人ホームが合っていると思っていた人が「同じ介護施設だから」と思ってグループホーム(認知症対応型共同生活介護)に転職したときに、時間の流れ方が異なることから「何か合わない」と考えてまた有料老人ホームに働き口を戻す人も少なくない。逆もまた然りだ。
現代は人手不足もあって転職は比較的しやすい状況にある。「何か合わない」と思ったら職場を見直すことは1つの手段だと思う。
だからと言って「自分に合う職場があるはず」と夢物語を追い続けて職場を転々とするのも問題である。少し合わないくらいならば様子を見て、その職場に慣れる(適合しようとする)努力も必要である。
それでもどの職場も合わないと思うならば、それは介護という仕事に合わないだけかもしれない。その場合、思い切って他業界に転職してみても良いと思う。
本当に「介護の仕事が大変」ならば、介護の仕事でしばらく働いた人たちが他業界に移ったときに楽に感じる、という理屈になるはずだ。
しかし、おそらくそうはいかないと思う。それは冒頭でもお伝えしたように、「介護の仕事は大変」というよりも「そもそも仕事はどれも大変」という前提があるからだ。お金という対価を得るとはそういうものだ。
何だか絶望的な言葉ばかり伝えたが、現実的にそうだと思う。
しかし、仕事という大変な行為の中で「新しいことを覚えて楽しい」「やったことのない経験ができた」「お客さんに感謝されて嬉しくなった」という副次的な要素があるから大変でも続けてこれるということもある。それはその仕事をしていないと体感できないことである。
――― 本記事を読まれた介護職の方々の中には、不快に思われた方もいらっしゃると思う。それは本当に介護の仕事をして大変で辛い目に遭っているからだと推察される。
しかし、辛辣なことを言うが「そんなに大変ならば介護の仕事を辞めればいい」という話になってしまう。「それができたらどんなに楽か」と反論されるかもしれないが、上記でもお伝えしたように現代は転職しやすい環境になっている。それでも介護の仕事をやめないのは理由があるはずだ。
それがおそらく「介護の仕事は大変」以上の何かがあるから、今もなお介護の仕事を続けているのではないだろうか? それが何なのか私には分からない。
「介護くらいしか自分にはできる仕事がない」という理由でもいいだろう。それならば介護の仕事を続けながらスキルアップして、他業種に就くことだってできる。アイディアをビジネスにして良いだろう。そんなことができる時代である。
「介護の仕事は大変」という思考停止で終わらずに、自分なりに介護という仕事の対して向きあう機会になればと思い、このような余計なお世話な記事を書いてみた。いかがだろうか?
ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。