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実際のところ、勉強とは楽しくないし、時間がかかるもの

■ 「勉強は楽しくない」と思っている大人たち


一般的に「勉強は楽しくない」というイメージがある。
「勉強はつまらない」と思っている人もいるだろう。

そのような世の中において、勉強をする期間が設けられている子供たちに対して「勉強は面白いものだよ」というような取り組みをしたり、学習キットなどが用意されている。

個人的な考えだが、これらは興味を持つきっかけになるかもしれないが、勉強という行為自体を面白いと思うには有効でないと思う。そもそも「勉強は面白いものだよ」と子供たちに伝えようとしている大人たちが、勉強に対して面白みを感じている様子がない。

何だか決めつけのようで申し訳ないが、本当に勉強が面白いというならば、世の中の人たちはスマホゲームやエンタメなどに時間を費やさず、寝食を除いて勉強しているはずだろう。

また、「1時間でわかる✕✕」「効率的に学べる△△」といったタイトルの学習本があるところからも、世の中の人たちは勉強に時間を費やすことを避けていることも伺える。

子どもに「勉強しろ」と言うならば、大人たちも子どもと同じスタンスで勉強をする必要があると思う。


■ 楽しく覚えられる勉強なんてない


たまに勉強の仕方を相談される。それに対して私は「まずは同じ本を3回繰り返し読んでみてはいかがでしょうか?」と伝える。

すると、「それだと面白くない、もっと楽しく覚えられる方法はありませんか?」と言われる。それに対して「楽しく覚えられる勉強法なんてありませんよ」と伝える。

何だか正論DV野郎みたいな返しであるが、実際のところ楽しく覚えられる勉強はない。しかし、勉強は辛くて苦しいものまでは言わない。

そもそも、楽しいという感覚が人それぞれである。その勉強法で100人中90人以上が楽しく覚えられたからと言って、広く活用できるかは保証できない。
「この参考書は初心者向けですよ」とは言えても、「この参考書は初心者でも楽しめますよ」なんて無責任かつ不確定な勧め方はできない。だから上記のような回答になってしまう。

「知らないことを知るのは楽しい」という人もいるだろうが、それは知らないことを知れたときの実感に対しての高揚感であって、勉強が楽しいという話とは違うと思う。

特に初めて勉強する分野においては、分からないという不快感を抱くことが前提となるため、楽しく勉強するなんてことは幻想近いと言える。


■ 勉強が楽しくない1番の理由は「時間がかかる」


しかし、分からないという不快感だけが、勉強を楽しいと思えない理由ではない。これ以上の根本的かつ大きな理由がある。

それは「勉強は時間がかかる」という点である。

実は多くの人はこの点に気づいているが、それに抗おうとして勉強に対して楽しみを見出だそうとしたり、効率的な勉強法を模索しようとする。

特に現代人は時間がかかることを嫌う。例えそれが大切なことであったとしても、なるべく時間をかけずに簡単に得ようとする。時には多額のお金を出しても代行してもらおうとする。

しかし、勉強だけは自分でやるしかない。誰かが変わって勉強して、それを別な人に引継ぎできるような仕様に人間はなっていない。

分からないという不快感があるうえ、さらに時間がかかることになる勉強という行為に対して、楽しいなんて思えないのは仕方ないと言える。


■ 勉強が時間がかかる理由


ネガティブかつ勉強に対して嫌悪感を抱くような内容が続き、申し訳ない。しかし、「勉強が楽しくない」という理由を明確にしておくことで、それなりに心構えは違うと思うのだ。

――― さて、なぜ勉強は時間がかかるのか?

そもそも勉強とは、大雑把に言えば知識や技術などを修得することである。そして、知識や技術を修得するには、どの分野においても一定のプロセスを経ることになる。

この一定のプロセスこそが、勉強に時間がかかる理由である。

逆に言えば、知識や技術を修得するにおいて時間をかけないと、この一定のプロセスを経たことにはならない。

もちろん、ダラダラと時間をかけるほどに修得レベルが上がるわけではない。一定のプロセスとは適切に時間をかけ、知識や技術を修得していくことである。


■ 構造の理解・言語への慣れ


では、具体的に時間をかけることになるプロセスとは、勉強においてどのような流れであるのか?

① 構造を知る

今まで知らなかった分野を勉強するということは、知らないお宅を訪問したり、新しい職場に初出勤したときのようなものである。
知らないお宅に訪問したとき、いきなり好きな部屋に入るという無礼なことはしないだろう。トイレを借りたいときには場所を聞くだろう。仕事であれば「この職場ではどのように動いているのだろう?」と先輩職員から教えてもらないながら職場の内装や仕事の流れを学んでく。

これは勉強も同様である。大切なことは、まずその分野の「構造を知る」ということだ。「全体像を知る」と言っても差し支えはない。
もっとかみ砕いて言えば「基本ルール」とも言える。

英語で会話をしたくても、そもそも英語の成り立ちが分からないと話す以前の問題である。となると英語で会話をする以前に、英語の「文法」を学ぶ必要があるのは理解できるだろう。
英会話に文法はいらないという教え方をする教材も見かけるが、それはえらい遠回りだし、英語で会話するときも不利にしかならないと思う。

やはり王道であり当然のことである「文法」という英語の構造(基本ルール)を知る必要がある。それはご存知のようにルールは広く日本人にとって複雑に感じるだろうことから、時間がそれなりにかかるのは理解できよう。


②その分野の言語に慣れる

その分野ごとに専門用語や単語が存在する。その分野を学んだことがなくても聞いたことがある単語もあれば、その分野を学んだことがある人しか理解できない用語もある。

これは最初のうちはピンとこない。1度目を通しただけでは記憶に定着しないことだって多々ある。これもまた時間がかかる。

それは用語や単語を覚えるということに時間がかかるという意味もあるが、その用語や単語に「慣れる」という意味もある。

その分野の用語や単語に慣れるとは、地域ごとの文化を知ることに近い。
新しい文化を知るときに「自分の故郷の文化と違う! こっちに合わせてくれ!!」なんて輩は相手にされない。
勉強するとは、新しい文化圏にお邪魔するくらいの感覚で入り、そして最初はピンとこなくてもいいから「そうかそうか、ここの文化ではこのような言語(用語や単語)を使うのか~」と肌に馴染ませる必要がある。

つまり、”郷に入れば郷に従え” というヤツだ。

そのためには、分からない事は自分で調べたり、その分野を理解している人たちに意味を教えてもらいながら、その分野の言語に慣れていくことになる。それには、かなりの時間がかかることは容易に想像ができるだろう。


――― なんだか勉強するのが嫌になったかもしれない。

しかし、特に新しい分野を勉強することにおいては、上記のように「構造を知る」と「その分野の言語に慣れる」ということに時間がかかることは理解しておいたほうが良いだろう。

しかし、「勉強に時間がかかる」こと、言い換えると適切に勉強に時間をかけることにより知識や技術の修得に確実性がもたらされる。

効率的な勉強などを求めるのは分かるが、それだって多少の時間はかかる。それならば、そもそも「勉強は時間がかかる」と割り切って、「構造を知る」「その分野の言語に慣れる」に時間をかけて臨んだほうが良いのではないだろうか。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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