介護という仕事に「派遣」を採用することの課題点
介護業界は人手不足と言われてる。実際その通りだと思う。
私の運営している介護施設も同様である。全体から見れば何とか人員配置ができているが、一部の時間帯が不足してしまったり、急な欠勤などによって調整がキツくなることもまた日常。
決して人員が安定することはないとしても、少しでも緩和できればと人材派遣も利用することも当たり前になっている。
しかし、介護スタッフとしての人材派遣を活用してみて思ったことがある。
それを本記事ではお伝えしたい。
以降は、派遣という働き方を選択している方々を非難するような内容になることをご了承いただきたい。
さて、本記事では「介護では派遣は合わない」ということをお伝えしたい。
これは業務内容としての話ではなく、介護という仕事のあり方からすると合わないということだ。
そもそも介護とは、1人の高齢者の抱える身体面・生活面の課題を見極めて支援する仕事である。支援を通じてその方の変化を時系列で観測しながら、ケアプランを修正していく。人によっては、その方の「死」を見届けるところまで及ぶ。
つまり、介護とはある意味で長期プロジェクトと言える。
そのような形態の仕事において、数ヶ月単位で更新することになる派遣スタッフが介護業務を行うとなると「更新しない」となったときにそのプロジェクトから離れるということになる。
もちろん更新する派遣スタッフもいるが、「派遣」という働き方を選んでいるということは「その職場にずっといるつもりはない」という意思があるということに他ならない。いつかは更新しない日がやってくる。
これは実際、派遣を利用していてあるあるだ。よく「この職場は働きやすいです」と言われるが、それでも「別のところから声がかかったので来月までとします」「賃金が良いところがあるので、そちらに行きます」となる。
あるいは「この職場のやり方は前のところと違う」「〇〇さんの言い方がキツいので」といった理由で更新しない派遣スタッフもいた。中には有給休暇を使って期間満了前に来なくなった方もいた(派遣でも有給休暇はある)。
理由は人それぞれでいいが、更新期間が満了となれば、どんなにその介護現場で利用者さんから受けが良くても急に来なくなる、という現象が起こる。そして、新しい派遣スタッフが来ても同じことが起こる。
こうなると、介護という1人の高齢者を時系列で見守り、そして見直しながら支援していくということに綻びが生じてしまう。
そして何より、支援対象である利用者(高齢者)の精神状態にも影響する。特に認知症の方ともなると、スタッフが入れ替わるということは環境の変化であり、それは少なからず症状に悪影響を及ぼす。
顔なじみのスタッフが支援をすることが望ましいのが介護であるが、入れ替わりが起こる可能性が高い派遣を活用していると、最終的にデメリットを被るのは利用者たる高齢者と言える。
それは引いては、介護という社会福祉のあり方と乖離してしまう。
まぁ、そこまで考えて介護の仕事をしている人は少ないかもしれないが、派遣で来られる方々の中には「介護ってオムツ交換とか掃除洗濯していればいいのでは?」と思っている人も少なくない。
しかし、それは作業としての「介助」であって「介護」の一部である。それを理解していない派遣スタッフもおり、利用者とコミュニケーションをとることもなく、既定の作業をこなすだけのために現場に来ている人もいる。
「この仕事はね、コミュニケーションをとって信頼を得ながら介護していくくのですよ」みたいな話をするもピンとこず、「何か思ったのと違った」「介護ってもっと忙しく仕事をすると思っていた」みたいな感じで更新を見送る方も少なからずいる。
それは直接言わずとも、こちらも察している。しかし、更新しないときの理由は上記のように職場の悪いところを言って去っていく。
それはもはや、介護の仕事うんぬんではなく、仕事への考え方、社会人としての責務といった個々の価値観の話になってしまうので何とも言えない。
「それが嫌ならば、他でも嫌な思いをするのでは? そのたびに更新しない(やめる)の?」と思ってしまうことはあるが、仕方ないとしか言えない。
何だか愚痴っぽい内容になってしまったが、私の運営と職場環境に問題があることは否めない。話を聞いて「ああ、そんなことがあったのか」と頭を抱えてしまう問題に気づくこともある。
しかし、短期間で現場を去る可能性が高いスタッフを採用するのは、介護という仕事においては適切ではないと思うようになっている。
一方で人手不足という問題もあることから、あちら立てばこちら立たずという課題もある。
派遣を活用しての疑問や課題は色々があるが、本記事ではここまでで留めることにしようと思う。
ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。