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【介護施設】事前連絡なしの面会と本人が食べられないお土産は困るという話

介護施設では「面会」がある。

面会と言うと、入院している人へのお見舞い的なイメージがあるかるかもしれないが、介護施設においては入所している利用者の元に家族や親族、友人などが遊びに来るくらいの感覚の話である。

施設はある程度は自由とは言え、それなりにルールはあるわけだから不自由さを感じることはある。外出も一人では困難な方もいるので、社会との関りも薄くなりがちである。

そのような中で愛すべき家族などが遊びに来れば、利用者はとても喜ぶ。面会に来られた方々も喜ぶ。お互い久しぶりの再会に涙を流すこともある。

このような風景を見ると、面会なんて言葉を使わずに、もっと施設という空間を可能な限り解放して、気軽に出入りできるようにしたいと思う。




しかし、自由にはリスクがつきものである。特に心身の機能や理解力が低下している高齢者を手放しで行動させるには限度がある。

それは転倒といった怪我をする可能性だけでなく、本人の状態を知らない面会者たちの悪意のない行動が大きな弊害を生む可能性もあるからだ。
そのため、お互いに気持ちよく面会するためには、施設に対して以下を行うことを推奨する。いや、お願いしたい。

1.施設の感染予防対策に応じる

2.施設に面会希望の連絡をする

3.現在の利用者の状態と食事状況を確認する

4.飲食可能な食品と受付可能な量を確認する


これらを理解および協力いただけるならば、本記事を読むのはここまでで十分である。

もしも、それぞれについて「なんで?」という疑問を持った方や「施設はこういう動きをしているだな」と興味がある方は、引き続き読んでいただければ幸いである。




特にここ数年においては、新型コロナ感染症によって面会のあり方は大きく変わった。いや、変えざるを得なくなった。オンライン面会も珍しくない。

世間ではすっかり感染症は収束したという感覚であろうが、医療福祉においてはそれまで行ってきた感染予防対策はスタンダードになっている。

感染症はゼロにすることが不可能なゆえに、対策を緩めてしまうと感染者が出てしまう。1人の利用者が感染すると他利用者および施設職員にも及び、いわゆるクラスターへと発展する。

これは大袈裟な話ではない。医療福祉ではクラスターまでいかずとも、感染症のリスクは常に現在進行形で厳戒体制をとるべき話なのだ。

実際、面会者の悪気のない行動、そして施設職員が良かれと思って警戒を緩めたことをきっかけに感染が広がったことも経験している。

このように、介護施設では人の出入りを自由にしたい一方で感染症も含めてあらゆるリスクを想定したルールを、面会者に協力いただくことがある点をご了承いただきたいわけだ。




――― では、具体的に介護施設の面会時にご協力いただきたいことは何かをお伝えしたい。 

まずは「面会前の事前連絡」をお願いしたい。

ハッキリ言えば、面会に急に来られるのは施設として非常に困る。

介護施設では起床から就寝まで、トイレ誘導やオムツ交換、食事やレクなど1日の流れが大まかに決まっている。入浴など介助自体に時間を要する対応は、タイムスケジュールを組んで人員配置もしているし、日によっては訪問看護などの医療対応もある。

このような施設全体としての予定に「近くを通ったのでお顔を見にきました~」と急な面会が割り込むと、それだけで全体の予定が崩れてしまう。

それはご本人の入浴の話だけではなく、他利用者の入浴にも影響する。たった1人の急な面会だけと思われるかもしれないが、その影響は大きい。
利用者においては排泄や食事提供もズレるし、職員においては休憩が削られたり打ち合わせや事務業務などが残業になってしまう恐れもある。

せめて面会にお見えになる際は、ぜひ前日までにはご連絡いただきたい。

施設としても予定を組み直すことはできるし、希望する面会時間を多少ズラしていただくかもしれないが、余裕ある面会を可能にすることもできる。

また、急に施設に来て「一目会うだけでいいので」と粘られても困る。それは確実に一目だけでは終わらず、利用者も入浴や食事があることを忘れて話し込んでしまうのは経験として予想がつくからだ・・・。




次に、飲食物のお土産についても事前連絡時に確認いただきたい。

というのも、面会者の多くは利用者と会うのが久し振りであることが多い。それはつまり、面会者は利用者に最後に会った時点で情報が止まっているということを意味している。

そこで「〇〇さんはアレが好きだったら、お土産に持っていくと喜ぶだろう」と意気揚々と持参されることがある。

しかし、施設入居されている利用者の状態は変化している。最後にいつお会いしたのは分からないが、ご高齢の方は病気もあるし食事量も落ちていくし、噛む力も飲み込む力も衰えていることもある。

もともと早食いの傾向もある方だっているし、精神面や認知症の症状から食事に興味を示さなくなっている方もいる。

昔好きだったものは、現在食べられないことも珍しくない。何なら、周囲に好きと言っていた食べ物が、施設に入ってから「言えなかったんだけど、実はアレ嫌いなのよ」と打ち明けられることもあった。

――― 何が言いたいのかというと、利用者というのは高齢による心身の変化もあるので、過去の情報だけで飲食物のお土産を持ってくるのは、施設としてと言うか利用者本人にとって迷惑になることがあるのだ。




飲食物に関係すると、たくさんの飲食物を持参することも勘弁願いたい。

「しばらく面会に来れないから」と両手にビニール袋いっぱいの飲食物を持参される面会者もいる。

「賞味期限は長いから大丈夫」と言うものの、冷蔵庫保管を要するものや開封後はすぐに食べたほうが良い食品もある。

居室に冷蔵庫を設置している施設もあるだろうが、個人で所有されていない利用者や食事管理を施設で担っている場合、施設専用の冷蔵庫が個人のお土産品だけで埋まってしまうこともある。

しかも、それらは上記でもお伝えしたような、ご本人の状態を知らずに持参したものばかり。大福や煎餅など、噛むことも飲み込むことも困難な状態だと伝えるものの「小さくすれば食べられると思いますよ」と粘る方もいる。

このような返しをされると、悪意はないと分かるがさすがにイラっとすることもある。それは言葉を選ばずに言えば、利用者本人のことを考えずに自己満足かつ無責任な善意だからだ。

もちろん、そのようなことは言わないが、ときにはその場でご本人の状態を再度説明し、せめて半分はお持ち帰りいただくようお願いすることもある。

しかし、面会者はせっかく買ってきたものだから後には引けない。人によっては遠方から来たので手ぶらで帰りたいという気持ちもあろう。

そのため、お持ち帰りをお願いすると「他の利用者さんにも分けていいですから」と言われることもあるが、他の利用者もまた食事制限や飲み込みなどに支障がある方も少なくない。

お気持ちはわかるが、このような事態を避けるためにも、上記でお伝えしたように飲食物のお土産については、施設と打ち合わせしておくことを推奨する。というか、していただきたい。




長々と愚痴っぽいことを言ってきたが、連休に差し掛かると面会も増えることは予想される。それによって生じる問題ごとも予想できる。

面会にあたり面倒くさいかもしれないが、実際のところ電話でやり取りするだけの話である。そこだけご協力いただければ、気持ちの良い面会を実現できるだろう。


――― まずは面会の際には事前連絡のご理解・ご協力をお願いします。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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