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介護の仕事は「軽作業」と思われがち

■ 「誰でもできる=軽作業」ではない


介護の仕事は誰でもできる。というか、大半の仕事は誰でもできると思う。

このような話をすると、介護も含め、その仕事をされている方々からお叱りを受けるだろうがとりあえず話を進める。

ここで言う「誰でもできる」というのは、一定の教育や学習によって基本スキルを修得したうえで最低限の業務遂行が可能となる状態を指している。

決して「誰でもできる=簡単な仕事」という意味ではない。仕事というのはどれもそれなりに大変だ。「楽しい」と思えても「楽」な仕事はない。

仕事をするにはそれなりのスキルが必要であり、スキルが必要なのは各業種に専門性が求められているからだ。

それは介護でも同様だ。高齢者への接遇・コミュニケーション、認知症ケア、事故防止、感染症対策、個人情報・プライバシー保護、排泄や移乗などの介助・・・修得するべきスキルは多岐に及ぶ。
もちろん、社会人としてのビジネスマナーだって必須だし、デジタルツールだって浸透しているので苦手だなんて言っている場合ではない。

介護の仕事は誰でもできるが、決して「軽作業」なんかではないのだ。


■ 軽作業は低賃金になりがち


「介護は軽作業」というイメージがあるようだ。それは表面的には家事手伝いの延長に見えるからだと思う。

それは間違いではないが、業務としては一部であるし、その業務もまた介護としての専門スキルが必要であることはお伝えしておきたい。

なぜこのような話をするのかと言えば、それは介護の低賃金問題を考えていくうちに、社会では「介護の仕事は誰でもできる軽作業」と思われているのではないかと疑問が湧いた。

歴史を振り返ってみても低賃金の労働者は作業員である。その金額は職務やスキル、業務内容ではない。特に日本においては「学歴」と軍隊に準じた「階級」を土台に、作業員・中級職員・上級職員というランク分けがされ、それが賃金差を生んでいた。これは官庁由来の風潮らしい。

そして働き方が多様化している現代においても、このような区分および賃金差はどの職場においても未だに存在している。それは「作業員だから低賃金でいい」という認識である。

それは「努力しなくても誰でもできる軽作業」という社会の認識でもあり、介護においても「必要だけれど、そこまで高いお金を支払う必要はない」と思われ、それが巡り巡って低賃金という結果になっているのではないか?


■ 「介護は介助さえやっていればいい」という誤解


なんだか社会に対して難癖をつけているようだが、介護の仕事をしている一部の方々にも責任はあると思う。それは「介護は介助だけやっていればいい」という、ある意味での事なかれ主義である。

誰もが仕事に対して情熱を持つ必要はないが、「出勤してそこそこの仕事をして、何事もなく退勤できればいい」という考え方をしている人はずっと同じ賃金のままだし、何なら途中で仕事にあぶれることは想像に難くない。

介護は肉体労働であると言われているが、肉体労働ができるのは当然ながら肉体が動かせるうちだけである。肉体のどこかに異常が生じたり、病気になったりしたら叶わない。

特に若いうちは力任せにできた介助も、年を重ねるうちに不可能になってくる。それどころか、今まで力任せにやってきたツケが肉体にやってくる。
結果として仕事の活動範囲が狭くなり、どんどん低賃金になってしまう。

そうならないためにも「介護は介助さえやっていればいい」という考えから脱却して、専門職としての職務・スキルを意識した仕事をする必要がある。

その姿勢が業界に広がれば、社会も「介護って作業員の集まりじゃないんだな」と認識が変わると思う。それが引いては仕事としての価値を高め、賃金にも反省するのではないだろうか?


■ 介護は軽作業ではない


改めてお伝えするが、介護の仕事は決して「軽作業」ではない。

一見すると家事手伝いの延長上にようだが、そう思って入職するとイメージの違いに不満をもってしまいかねない。介護の仕事もまた他業種と同様にしかるべき知識・技術といったスキルを要する専門職であることは覚えておいていただきたい。

このようにお伝えすると「何だか介護の仕事って面倒なんだな」と思われるかもしれないが、それはどの仕事も同様である。
憧れの出版社やアパレル系の仕事に就いたのに華やかなイメージと違ったと言う人がいるが、それは単純にその業界における専門職としてのスキルが身についていないだけだ。

仕事や業界を知り、失敗しながら注意されながら自分で学んで身につけたスキルをもって働くのがプロフェッショナルである。それは介護であろうがコンビニだろうが、政治家であろうが芸能人だろうが同じだ。

求人広告で「軽作業」と書いてあっても、実質的に「軽作業」なんていう仕事は1つたりともないと思ったほうが良い。


■ 学歴や勤続年数より「職務」を重視する社会に


最後に。

介護の仕事は「誰でもできる」という要素の1つとして「学歴」や「階級」が関係ないということはお伝えしておく。これは馬鹿にしているわけでなく、むしろ他業界と違うアドバンテージだと思う。

昨今では介護の仕事をするために、未経験者も基礎講習を受けるなどの義務事項はあるが、それなりの採用基準はあるだろうが、よほどのことがなければ誰でもすぐ入職できる。

上記でもお伝えしたように、日本では未だに戦前戦後の官庁の風潮を引きづった職業ランクが存在する。その台頭が「学歴」や「階級」である。それを気にしなくてもいいのは良いことだ。

しかし、介護においては「勤続年数が長ければ偉い」という、これも昔ながらの風潮が確かにある。これも業界の足を引っ張っていると思う。

学歴なんて関係ない。
大切なことは何を学んできたかだ。

勤続年数という階級も関係ない。
大切なことはどんな職務およびスキルがあるかだ。

このような意識改革ができてこそ、介護は「軽作業」というイメージから脱却できるのではないだろうか。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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