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「介護負担を減らす」とは何か?

介護人材が不足しているという話は、耳にタコができるほど聞いている。しかし、その根本的な解決策は糸口すら見つかっていない。と言うか、おそらく解決できないと思う。

それは、現状の介護の考え方のままでは、増加する高齢者の介護には手が及ばないからだ。抜本的に「介護とは何か?」という考え方を見直さないと、需要はあれど供給が追い付かないという状況も変わらない。

例えば、日本では「親の介護は子供や孫がするもの」という固定観念が根付いている。それがヤングケアラー問題にもつながっている。

一方、デンマークやスウェーデンでは、介護を受けるか否かは当人が選択すると言う。その実態は分からないが、高齢者に対する支援範囲を切り分けしないと、介護負担が増えるばかりになってしまう。

だからこそ「介護とは何か?」とい土台を具体的に見直す必要があるのだ。




介護負担という言葉を使ったが、介護負担と一言に言っても色々ある。

一般的にイメージできるオムツ交換などの排泄介助や食事介助もあれば、身の回りの環境整備としての掃除や洗濯、病院や買物などの外出同行もある。

認知症となると記憶障害による「同じことを何度も聞いてくる」といった対応や、見当識障害からの「時間や季節が分からない」「外出したが自宅に戻れない」といったこともある。

介護施設に入れば「家に帰ろうとする」「なぜ自分がここ(施設)にいるのか分からなくなる」とった状態もある。

これらはあくまで一例であり、支援内容は高齢者一人一人によって異なるわけだが、それら1つ1つに対応するのが「介護負担」と考えていただいて差し支えないだろう。

その介護負担を「親の介護は子供がやるもの」と引き受けるのか、介護保険などの社会資源を利用したり介護施設に入所することでプロの介護者が引き受けるかなどは、本人というか家族次第である。




昨今では生産性の向上というキーワードのもとに、介護負担を減らす動きが活発になっている。

それは科学(サイエンス)や技術(テクノロジー)をもって介護現場の介護負担を減らすことも含まれている。

例えば、センサによって対象となる高齢者の行動を検知し、そのときの状態や出来事を時系列で記録していくことができる。

そこで得られた記録(データ)をもとに行動パターン、バイタル情報や歩行状態などの変化などを分析し、全国の高齢者の各テーマのデータベースと比較することで支援方針の参考にすることもできる。
これらはセンサとAIの組み合わせにより、将来的にスタンダードになるのではないか。

また、介護は「機能訓練」も役割として担っているので、高齢者の身体状態やこれまでの状態や行動パターンから、本人の日常生活において必要な動作や筋力を分析し、そこから必要なトレーニングやリハビリ計画も即座に提示されるようになるかもしれない。



また、このような技術を応用すると、行政やケアマネージャーが担っている作業も簡略化することができるだろう。
例えば、介護度の認定や更新をするときに行われる「認定調査」は、一定の基礎情報とモニターごし認証によってAIが分析できてしまうかもしれない。わざわざ調査員が本人と会わなくても済むのだ。

もっと言えば、介護サービス事業所が行っている事務手続きも同様だ。

行政が立入調査として行っている運営指導(旧 実地指導)や地域密着型サービスが定期的に外部評価だって、わざわざ調査員が時間をかけて現地で行わずとも、オンラインツールを駆使すれば短時間かつ低コストでできると勝手に思っている。

無駄な会議と一緒で、人材不足で多忙な介護現場に一同に集まって行うことをせずとも済む方法はたくさんあるはずだ。行政こそ事務手続きという点で介護負担を真っ先に減らすべきであり、それをやらない体質こそ、先に指導および是正することではないかと思う。




つまり、介護負担を分類化すると「身体介助」「生活援助」「機能訓練」「行政手続き」などがあるということだ。

そして何より、認知症ケアも含めた「コミュニケーション」というある意味で1番の課題もまた、将来的に科学や技術の進歩によって軽減されることも期待される。実際、コミュニケーション技術も進歩しており、見た目は無表情なのに認知症の方が喜ぶロボットや人形もある。

――― しかし、いくら科学や技術が進歩しても、色々なツールやシステムが開発されたとしても、それを活用するのは人間だ。

そもそも、活用するか以前に「やっぱり介護は人の手でやるもの」といった固定観念は根強くある。それは「親の介護は家族がやるもの」という考えや「手間暇かけるのが良いこと」という日本人の固定観念に由来するものだと考えられる。

だからこそ、本当の意味で「介護負担を減らす」というならば、まず目を向けるべきは「介護とは何か?」を考えることである。

介護の理念は変わらないままでも、考え方や指針は時代ごとにアップデートするべきである。それこそが、科学や技術を活かしながら介護負担を減らす社会のスタートではないだろうか。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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