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大阪製罐とチームラボの融合!自然とアートするカンカン工場の草原のカフェ

小さな町工場が立ち並ぶ東大阪の一画、大阪製罐という工場の敷地内に何度行っても楽しめる何度も行ってみたくなる不思議で、それでいてもちろん美味しいカフェが誕生しました。

モノづくりのまち東大阪にチームラボのカフェがやってきた

大阪は言わずと知れた食の都ですが、もちろん府の魅力はそれだけではありません。たとえば東大阪市には小さいながらも確かな技術のある町工場が密集していて「モノづくりのまち」と呼ばれているのですが、そんな東大阪の町工場の一画に「カンカン工場の草原のカフェ」が誕生しました。

カフェが誕生したのは大阪製罐株式会社という町工場の敷地内で、カフェを手掛けているのはチームラボ。美しい光や音を活用して、これまでに数多くの不思議なアート空間を作り出してきたチームラボと、モノづくりのまちがタッグを組んだカフェ。どんな仕掛けがあるのか気になります。

カフェの誕生した大阪製罐(おおさかせいかん)ですが、最寄りの駅となるのは若江岩田駅という近鉄の駅。本当に申し訳ないのですが50年近く関西人をやっていて初めて存在を知りました。

JR環状線の鶴橋で近鉄に乗り継いで普通電車で降りた先、地図を頼りに目的地へと南南東へテクテクと歩くこと十数分。風景が駅前の景色から工場群へとグラデーションする通りを1本入った角に大阪製罐の建物を発見。しかし一見しても、あるのは通常の町工場、カフェらしき空間があるようには感じられません。

辺りを見渡しながら1分ほど歩くと、工場街にこんもりとした笹の林が突如登場。この違和感、そしてこの何やらおごそかで楽しそうな雰囲気、チームラボに違いありません!

破壊と創造と人工物と自然の偶然性と

笹の林の中に入ると、そこはもうチームラボのアート世界の領域、さまざまな作品が集合する空間となっています。

まず最初に足を踏み入れるのが草原エリアとなっていますが、こちらは「風と雨と太陽の草原」という作品。かつてこの場所には廃材置きの設備があったのですが、それを更地に破壊。

画像提供:チームラボ

草原に生まれ変わった空間が創造されているのですが、人工物のビルと自然の組み合わせのせいか、常に優しい風が吹き抜け、蝶やトンボなど思ったより多くの虫たちが飛び交う何とも居心地のよい解放感ある空間が誕生しています。

草原背面にあるのは「太陽の海」という作品。こちらの不規則でゴツゴツとした透明な岩のような物体の正体はガラス。直線的なガラスを生成する際に炉内に生じる残留ガラスという廃棄物であったガラスが材料となっています。

画像提供:チームラボ

ガラス加工の残留物という人の営みの中で生じるある種偶然の産物であり、計算と加工から生まれていない自然発生的な凹凸は不規則かつ絶妙なバランスで光を乱反射。

有用な素材を生み出すために生じた残留ガラスには独特の気品めいた雰囲気があり、それを大小敷き詰めた様子は宝石のようであり枯山水のような世界観。本来であれば不要で犠牲的な存在となる物質に価値を見出し創造した作品となっています。

自然の力を借りた不自然なほどの真円の虹

草原をさらに歩いて中ほどにあるのが今回のカフェのランドマーク的な作品。空港で小型旅客機に搭乗する際のタラップを思わせる階段が草原に突然登場します。実はこちらの階段状の装置は「太陽の円相」という作品。

この作品では、人が階段の上に立つと自動的に水が周囲に噴出され、それによって晴れた日には虹が出現する仕組みとなっています。さらにこの虹は太陽の位置が真上に来る正午頃(11:30~12:30)のわずか1時間の間だけ、一繋がりの丸い虹が現れるのですが、この丸い虹は正確にまさに真円。

画像提供:チームラボ

周辺にある木々にも一切干渉しない不自然なくらい真ん丸の不思議虹が見られるここだけの作品体験。

画像作成ソフトで一番上のレイヤーにあるかのように木々の干渉を貫通して真円を保っている虹は不可思議であり幻想的な姿の真円。出現させるにはいかにも複雑な仕組みで制御と計算をしているように思えます。

しかし作品の要素としては基本的には階段と水の噴射だけで、光源となるのは自然の太陽の光のみ。それが気象と時間の条件が一致した際にだけ、ご褒美のように丸い虹を出現させます。

そもそも自然界には存在しない真円を自然の力で目の前に映し出すこの装置は、自然の恵みをアートに変換する装置で、作動するもしないもお天道様の気分次第というテイスト。

仮に好評だったからと言っても人の都合で丸い虹の登場時間を延長するという目論見は不可能。自然優先、自然ファーストな存在となっていて、実は今でも人間の身の回りにあるのに忘れがちな自然を少し身近に感じられるきっかけになるアート作品となっています。

夜もまた美しいのがチームラボの光の世界

画像提供:チームラボ

ここまでに登場した作品群はお昼間に楽しめる作品でしたが、チームラボは光を操るアート集団で、夜はまた別の魅力を持つ空間が誕生しています。

画像提供:チームラボ

昼間は明るい解放感と吹き抜ける風の気持ちよかった草原は「生命は闇の海に生まれる微小な光」と名前も変わって夜には雰囲気が一変。

仄暗い空間の中を波のように伝わる人工的な光を受ける空間となっています。マクロ的に見れば草原を伝わる光ですが、局所的に見れば光は1本の草の幹部分から葉先へと光が徐々に光が伝わっていきます。それが連続するようすはとても有機的。

人工的で単一的な進行方向を光の波のはずが、草の持つ自然の曲線に積極的に干渉して沿って進む姿は、光を放って飛ぶ蛍のようでもありますが、ともすると何か巨大な獣の腸の内部をも思わせるような有機的で蠱惑的な軌跡が描かれています。

また残留ガラスによる「太陽の海」は、昼間には太陽の光を受けて透明な光を微細に反射する繊細な光の装置でしたが、夜には人工的な光にグッと変身。こちらの作品では周辺に人が居ることで光のパターンする仕組みとなっています。

画像提供:チームラボ

アート作品が美しいで終わらせないカンカン工場の草原のカフェ

今回チームラボの手掛ける「カンカン工場の草原のカフェ」、さまざまな作品がありますがあくまで主体となるのはカフェである以上、メインとなるのはもちろんカフェ。

こちらのカフェでは兵庫県・武庫之荘の人気パティスリー「リビエール」監修のスイーツがお茶と一緒に食べられます。

と紹介はしましたがチームラボのカフェ、やはり一味も二味も異なる演出が施されています。ガラス張りの店内は先ほどの光の草原と面しているので光のユラユラが一望できます。

店内のテーブルでは光がごくスポット的に照らさせ、夜であればスイーツの晴れ舞台となる演出されています。

お茶のグラスにも一仕掛けあってグラスを持ち上げてテーブルに置くという動作に連動し、草原にフヮーッと光の波紋を飛ばすことが可能。グラスがスイッチとなって草原に対して光を投げて干渉させられるという未体験の楽しさが経験できるカフェとなっています。

さらに前面がガラス張りのカフェ店内は左右と背面を鏡で覆うことで合わせ鏡の空間を創出。空間的な広さは意味を持たなくなり、まるで無限の長さを持つテーブルのあるような無限カフェとでも言うべき空間が誕生しています。

そして、ゆったり流れる音楽と光の運動はいつまでもボーっとみられるような空間演出となっていて、空間だけでなく時間さえも溶け出す無限カフェとなっています。

何度も訪れたくなるチームラボのカフェ

画像提供:チームラボ

また今回の「カンカン工場の草原のカフェ」の根底に流れる自然の条件と光の作品という意味で欠かせない作品が「風と太陽の空書」。

画像提供:チームラボ

こちらは雨の降らない程よい風のある日に現れるアート作品となっています。

本来は白くて長い吹き流しのようなこちらのオブジェは昼間には太陽の光を受けて白い龍のような姿で空を舞い、夜には光を発して暗闇を泳ぐ虹のような姿で夜空に軌跡を描きます。

こちらはカフェの外からでも見えるので、予備知識なしで偶然見た人の口を伝って都市伝説の誕生さえあり得そうな作品となっています。

画像提供:チームラボ

ほかには強い夜の雨の出現するのが「雨の儚い結晶」。こちらは雨の軌跡に光を透過させることで液体である雨を、直線的な光る固体のように描き出すアートとなっています。

すでに紹介した「太陽の円相」は晴れた昼間に真円を、こちらの「雨の儚い結晶」は雨の夜に直線を出現させる作品で、発生条件が雨と晴れと昼と夜でそれぞれ真逆。発生させる現象も円と線で対になっています。

何から何まで真逆の性質を持つ2つのアートではありますが、真円と直線という自然界には存在し得ないと言われている形状を、自然の力を借りて描き出すというポイントの特性は共通。人間の知恵が証明されつつも、自然のさじ加減一つで作品自体が見えなくなるというのは同じとなっています。

画像提供:チームラボ

このように今回紹介した「カンカン工場の草原のカフェ」では、晴れた時、雨の時、風の時、昼間、夜など自然の気象条件や時間帯で、見れる作品、見れない作品がそれぞれ多数存在していて、一度ですべての作品を見るのは確率的にほぼ不可能となっています。

そういった解釈でいえば、これらの作品は、ある意味では京都の禅寺の竜安寺の庭の石のよう。実在はしているけど一度に全部を見ることはできない存在となっていて、何度も何度も通って現地で実際にアートを目で見て体験したくなる通いたくなるカフェとなっています。

「カンカン工場の草原のカフェ」を敷地内に誕生させた大阪製罐、実はゴンチャロフ、モロゾフ、風月堂など関西人の家にボタン入れとして1つは常備されている可愛くてオシャレなカンカンを作っている会社。

画像提供:チームラボ

利益追求だけじゃなく文化カルチャー面での地域貢献をしたいと考え今回のカフェを誕生させました。絵画や彫刻の枠から飛び出したチームラボの作品は、堅苦しさもないので普段アートに触れない人のデビューにもピッタリのスポットとなっています。

僕個人としてはまずは先に昼間訪れて円相の虹の不思議さを味わって、その後、夜の幽玄な雰囲気を味わうのを提案したいと思います。

なお、カフェ利用にはチームラボのサイトを通して予約が必要となっているので、まずは下のチームラボの特設サイトにアクセスしてみてください。

【チームラボ カンカン工場の草原のカフェへのアクセス】

近鉄奈良線若江岩田駅から南へ10分

【カンカン工場の草原のカフェ 店舗情報】

住所:東大阪市若江東町1-1-15
営業時間:2部制 1部:10:30~16:30/2部:18:30~21:30(時期により営業時間変更の場合あり)
定休日:火・水
入場方法:事前予約制(カフェ予約サイト https://cancanfactory.ticket.teamlab.art/#/



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