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目の前にあるものを諦めて投げ出してしまったら楽になれた話

ハイボールとはウイスキーを炭酸水で割ったものである。氷の入ったグラスで提供される。
私の飲みパターンはまず一杯目がビール。その後ハイボール。お酒はそれほど得意ではないなかでウイスキーは比較的いける。味と香りに好みがあるので、メニューに銘柄が書かれていないときは何のウイスキーを使ったハイボールなのかを聞くようにしている。そんなこと気にする人は少ないのか、大抵の店員さんは「お待ちください」と言って確認のためいったん奥に行き、戻って来て教えてくれる。
この店はホワイトホースだった。
学生時代にイヤというほど飲んだ安価な銘柄だった。懐かしい。

私の質問を聞いていた常連らしき別の客が「へぇ、ホワイトホースだったんだ」と店員さんを捕まえて、それをきっかけに雑談を始めた。
それを横目に、私はグラスを手に取った。

そして、これが、びっくりするほどまずいハイボールだった。

味よりもにおいが気になった。グラスを口元に持ってくるたびにウッとくるくささがある。ウイスキーの味?ホワイトホースは学生以来というほど久しぶりだから自信がない。水は使わないし、炭酸水にそんな差がある気がしない。もしかして氷が良くない?
生来の貧乏性で、せっかく目の前にあるものを残すことが難しい。
すごくおいしいわけではない普通のポテトサラダ、刺身盛り合わせ、もつ煮、酢の物。それらで口直しをしながら苦行のようにお酒を流し込む。

他になにか気が紛れることがないかと店内を観察したり、手元のスマホで面白そうな記事を探したり、声の大きな他客の飲み話に耳を傾けたりする。

あぁ、無理だってなって、食べ物がなくなったところでお会計とした。
ハイボールの液体はグラスに半分残っていたけど、それを決めたときの解放感はとても大きかった。

惜しいとかもったいないとかせっかくだからとか、私はそういう憑りつかれ方をしやすい。のかもしれない。
やーめた!ってなったときの気持ち良さ。
目の前にあるものを諦めて投げ出してしまえたら楽になれる。

せっかく目の前に提供された飲食物に対しては本当にごめんなさいなのだけど、自分の能力ではすべてを拾いきれないこともまた認めなきゃいけないのかと考えさせられた。精神の健康と、次に進むためにも。

当分はおうちでいつもの慣れた角瓶水割りを飲むことにします。

そういえば角ハイボールはちゃんとメニューにも角ハイボールって書かれるから、サントリーのブランド戦略は成功しているなぁといつも感心する。

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ケイ
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