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九段下と優しい笑みの声

東京の地下鉄の乗り換えで、改札を通過するときと通過しないときがあって、なんでかなーってぼんやり疑問でした。
都営地下鉄と東京メトロ、地下鉄には2種類あったんですね。
謎が解けました。

路線図、ずっと眺めていられる

この日、夕方以降の時間に余裕があったので、九段下で降りました。

「九段下(くだんした)」の名前を知ったのは、自分の世代だと圧倒的に爆風スランプの超有名バラード『大きな玉ねぎの下で』でした。
東京に行ったことのない地方育ちでも、九段下の駅を降りて坂道があることを知っていたものです。
今はどうなんだろう?
知ってる世代の境界線が知りたくなります。

歌詞が「ペンフレンド」から始まる時点で現代とは別世界ですよね。
スマホどころか気軽に相手の自宅に電話もできない時代です。相手の親が出たら怖いし。

初めて武道館に行ったのは2,3年くらい前で、屋根の上に光る玉ねぎ(丸い玉)を見て感動したものです。

そんな九段下の駅を降りて。

6番出口

少し歩きます。

中心地感

目的地は千代田区役所。
その9階に図書館があるというので、行ってみたかったのです。

就業時間を過ぎて、庁内から出てくる職員らしき人波とすれ違いながら入ります。
区役所の建物に入ってすぐの案内所に人影はなく、上の階に向かうエスカレーターは稼働しているのか不明でした。

ロビーで少し迷いながらポケットのスマホに手を触れたとき、横から「何の用で来たの」と声をかけられました。
年配で痩せ型の警備員。
「あ、図書館へ」目的地を決めていたのでスラッと言葉が出てきて良かった。
「ここには初めて来ました」
この「初めてなので勝手が分からなくて」というフレーズは、知らない場所では割とよく使います。
うっかり場違いなことしてはいけないし、聞いて教えてもらった方が結果的に早く終わって、後もつかえずに済みます。
私がエスカレーターのあたりを覗き込んでウロウロしていたからか、警備員は咎めるようにも見える態度と言葉で「エスカレーターは3階までしか行かないし、もう終わってるの」と言いました。
マスクをしているので正確な表情は見えません。
写真を撮ったり不審な行動をしていなくてホント良かった。

「図書館はね、9階」
奥にあるエレベーター乗り場を指さして警備員は教えてくれました。
「図書館には止まらないエレベーターと、図書館とその上の階に止まるエレベーターが2台あるから、図書館行きに乗って」
ぶっきらぼうだけど、丁寧な案内で教えてくれたのでイメージできました。
「それでね」警備員はまだ続けます。「図書館の上の階には食堂と自販機があるから。図書館は飲食できないからね、」そして私の目を見て「本を読んで疲れたら、10階でお茶でも飲んで休むといいよ」
相変わらずマスクで隠れた表情は読めないし、シワの寄った目元は厳しく見えるけど、フフッと漏れた優しい笑みの声ははっきりと聞こえました。

「ありがとうございます」とお礼を言ってエレベーター乗り場に向かうと、すぐまた「何の用で来たの」と厳しめのトーンで別の来訪者にかける声が背後から聞こえました。

ここは都心部にある区役所。
入口である程度の緊張感がある方がきっと良いのでしょう。

職務に忠実な厳しさと、見えにくいところに優しさを持ち合わせた警備員さんでした。

エレベーター乗り場

ロビーからエレベーターホールに向かう間にも図書館への案内看板はいくつかあって、複数あるエレベーターのうちどれが図書館行きかも分かりやすくなっていました。

9階の図書館。
都心とは思えない、程よい来訪者と静かさ。
慣れないながらフロアを歩いて、数ある作業スペースのうち窓に面した机を確保できました。問題集を開いて勉強する学生、PCを開いて作業をする大人たちと並んで、私も気になった本を片手にiPadを広げます。
混み過ぎていなくて心地いい。

2時間ほど滞在してから、図書館を後にしました。
食堂のある10階も気になったけど、今日は暗いし、またいつか天気の良い昼間に訪れることにします。

すっかり暗くなった外を九段下の駅まで戻り、今度は地下鉄ではなくバス停へと向かいます。
九段下の駅から出る鉄道はどれも、宿への最寄り駅から微妙に遠くて少し歩くので、駅より近くにある停留所を通る路線バスを見つけられて助かりました。

新宿方面行き

23区内の都営バスは、前から乗って運賃先払い。210円。
今まで後ろから乗って整理券を取るタイプに慣れていたので、前の人に倣って覚えました。

初めての場所で初めての道と路線を覚えながら、緊張感の中でふと受けた優しい笑みの声を思い出します。

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ケイ
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