2024年J1第7節 京都サンガ - ジュビロ磐田 マッチレビュー
磐田目線で振り返ります。
先発
京都
フォーメーションは4-1-2-3。直近のリーグ戦からのスタメン変更は1人。安齋が外れ、マルコ・トゥーリオが入る。
この試合を最後に川﨑が五輪代表に招集される。(磐田、鈴木海音も同)
磐田
フォーメーションは4-2-3-1(4-4-2)。直近のリーグ戦からのスタメン変更は2人。松原、藤川が外れ、西久保、ペイショットが入る。
松原は怪我の影響。植村を左サイドバックへ廻し、西久保がJ1初スタメン。
①前半38分まで
この試合は2つの試合に分かれていると見ました。
①前半38分まで
②前半39分以降
2つに分けて振り返ります。
現代サッカーは試合の中に、細かく試合が分かれているかの様に進んでいく試合があります。
流れというよりも試合と表現したのは、お互いのオーガナイズの前提が大きく変わっていることがあるから。
この試合はオーガナイズというより、体力面で別の試合になったという印象を持っています。
前半、立ち上がりからロングボールの応酬。
主導権を握ったのは京都。
ハイライン&ハイインテンシティ&ハイプレスを日本に広めたとも言える曹監督のサッカーが展開される。
立ち上がりに見えてきたのは、京都のボール保持。
京都は4-1-2-3を基本としながらも、センターフォワードの原が一列落ちて、磐田の2枚のDHに対して数的優位を作ってきました。
磐田の非保持はいつも通りの4-4-2。
3:30には原が、この形からミドルシュートを放つも川島がストップ。
磐田の保持(ビルドアップ)と京都の非保持(プレッシング)の噛み合わせは以下の図で。
京都は非保持も初期配置の4-3-3をベースにします。
3TOPは背中でパスコースを制限するというよりは、「とにかく行く」というもの。
後ろのインサイドハーフが運動量で、広い範囲をカバーする形。
磐田の保持はDHがなるべく降りずに京都の3TOPの間を抜いていく。
1列目を突破してインサイドハーフの圧(2列目)をかわせば5レーン攻撃で京都の4バックを殺しにかかります。
サイドバックの関係性は先発に西久保が入ったことでこれまでの試合と変わり、右サイドバックの西久保が高い位置に張り出し幅を取る。
松本昌也はインサイドに絞る。
反対サイドの植村は右に比べると低い位置で、起点となった。
これまで松原が左で担っていたタスクを反対サイドで西久保に託した様にも見えました。西久保はガンガンとワイドレーンを走る。
このメリットとデメリット(リスクテイク)は試合に出ていました。※良い悪いではない
①の時間帯のハイライトは京都のポジティブトランジション(守備から攻撃への切り替えに)
上図のシーンの様に磐田のビルドアップでボールサイドに寄ってから2列目で引っ掻けてボールロストすると、磐田はバイタルエリアを中継地点にチャンネル(CBとSBの間)を割られてカウンターを喰らい続けました。
攻守一体になっていないのは横内さんにしては珍しい試合。おそらくはそれを許容したゲームプランニングだったのでしょう。やれないことではなく、やれることを活かす。
圧を受けて引くと、京都の思う壺。原が飛んでくる。
京都は3TOPで守る分、高い位置でボールを獲れた時に、前線に枚数が多い。
この試合は磐田のボールサイドと反対のハーフスペース、特に高い位置に張り出す西久保と鈴木海音の間を突かれことが多く、ネガティブトランジションで敗走するケースが前半だけでも5回はありました。
しかし、この敗走での最終ラインの対応は見事でした。
セオリー通り、
・抜け出されたボールホルダーに対して減速して中を閉めワンサイドカット。縦に誘導します。
・飛び込まず抜かれないことを徹底。
・最終的にはシュートのタイミングてGKと2対1の関係を作り、ディフェンダーがファーサイドを消してニアサイドをゴールキーパーの川島に託します。
↑内側を締めて、縦に誘導する鈴木海音。
(photo by 神田川さん)
川島がことごとく、この連携からニアサイドへのシュートをストップをしてくれました。
結果論では、ここで失点しなかったことが大きかったことになります。
②前半39分以降
②の時間帯は、京都のパフォーマンスが落ちていきます。
これは、連戦に於ける「疲労」が大きいと思います。ガス欠。
3TOPの規制原則の曖昧さからくる運動量ロス→インサイドハーフの運動量過多。そのため、特に前線の選手の疲労の色が濃いのではないかと仮説を立てています。
有事のサイドバックやウィングとの保険チェーンも見えてこない。
体力的に元気だったのはトゥーリオと松田くらいだったでしょう。
磐田はサッカーなので、当たり前ですが90分で試合を考えるチーム。京都よりテンションを維持できていました。
39:30のプレーで磐田はPKを獲得しますが、直前の場面。
プレッシャーを受けたク・ソンユンの蹴り出しのタイミングで京都はプレスバックが遅く、大きく陣形が間延びしてしまいます。
蹴り出しを拾った上原が前進。
上原が左サイドからクロスをペナルティエリアに届けるが、
「いっせーのーで!」とゆっくりと余裕のある状態、ノンプレッシャーでクロスをあげることが出来ました。
だからこそペイショットはタイミングを合わせやすく、ハンドの反則に直結します。
PKはペイショットがダフり失敗に終わりますが、ここから京都の苦しい時間帯が始まった、始まっていた象徴と言えます。
京都は長いボールを使います。間延びした状態でセンターハーフが根性でボールを拾うことが戦術の核となっていますが、
3連戦の3戦目で、体力が戦術の前提として追いついていなかったとも思います。
前半の終盤は磐田のコーナーキックが連続しますが、京都が凌ぎゴールレスでハーフタイムへ突入します。
後半に入ります。
50:50、西久保がガンガンと味方を追い越し右CKを獲得。松原と同じくリスク許容で走ってOKにしている部分。
キッカーの藤原の右足でのアウトスイングのボールの反応した西久保がペナルティエリア中央からヘディングでゴール左下に決めて磐田が先制。
0-1
ベンチでのオフェンスセットプレー担当の西野コーチへのセレブレーションと試合後の監督、選手コメントから分かるように、トレーニングから準備してやってきた形であるのは間違いないでしょう。
京都のゾーン守備から外れたところでのヘディングでした。この試合のコーナーキックで繰り返し狙っていたエリアでの得点。
京都も試合後の監督コメントからみて、磐田のコーナーキックを警戒していたようですが、これだけコーナーキックが多い試合(14本)だと、どこかで合ってくるもの。
そこに蹴れる藤原と、身体能力と当て感で枠に飛ばす西久保が良い。
京都は 63:25 3枚替え
9MトゥーリオOUT→11山崎IN
18松田天OUT→24宮本IN
16武田OUT→28鈴木冬IN
システムを4-4-2に変更するが、磐田の試合のイニシアチブは変わらなかった。むしろ、混乱したようにも見えました。
64:10 右サイド奥深くのスローインから繋ぎ、西久保がクリーンにクロスを入れる。
これに反応したペイショットがニアサイドでヘディングで合わせ、このボールがゴール左下に決めり磐田が追加点をあげる。
0-2
スローインからのパス交換に関わった磐田の選手が3人居たが、交代直後だったことと前述の通り疲労の影響か、京都の対応する選手は2人しかおらず、西久保は余裕を持ってクロスを射貫くことが出来ました。
スローワーに対しても人数を揃えるのはサッカーの基本。これが疎かになるほど、京都の選手は集中力を失っていた。
合わせたペイショットは待望のJ初ゴール。
コーチングスタッフとのコミュニケーションがポジティブに作用。
上から叩くより、潜り込んでいくヘディングの方が彼には合っていそうだ。
70:50 右サイドから松本がまたもクリーンにクロスを入れる。ペイショットがペナルティエリア中央からヘディングでゴール左下に仕留めて決定的な3点目。
0-3
ここまで松本をフリーにすれば、精度の高いクロスをあげられてしまうだろう。
ペイショットもアピアタヴィアに体をぶつけてからニアサイドに潜り込んだところが素晴らしかった。
磐田は鈴木海音の頭部の流血交代(五輪予選参加は問題ないそうだ)などもあり、急造な最終ラインを終盤に構成したが、危なげなく抑えてクリーンシートでの2連勝をあげた。
最終的には走行距離で磐田が京都を上回りました。
終わりに
曹監督のコメントの通り、エンジンが搭載されていた京都の時間帯①では、ダイナミズムで磐田を圧倒していたと思います。どれかが決まっていればというのは筆者も感じたところ。
ただし、磐田としても、京都が後半に落ちてくるのを分かった上でペース配分しており、ジョーカーもベンチに残していた上でのリードだった。
意外だったのは、京都がアンカーや左利きセンターバックを使いながら地上から丁寧にビルドアップすることがあったこと。
こういった戦術的な側面を京都は見せてくれたが、代わりに曹監督がこれまで指揮していたチームより強度面で劣る部分があるかもしれない。
2024年現在のJ1は強度基盤を持つことが概ねのチームで標準化されている。
強度を高めることで、モダナイズされたわけではなくなった時代になってきた。
高強度を維持しながら、如何に戦術的に振る舞えるかが両チームの課題かとも思いました。
次回対戦を楽しみにしたいと思います。
今回はここで締めにします。
反応(スキ、いいね、RP、フォロー他)大歓迎です。
宜しければポチっとお願いいたします。
お読み頂きありがとうございました!