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星野リゾート 全従業員のIT人材化から考える日本IT業界の今後

今日から星野リゾート界に、一泊お世話になります。(金曜日夜に執筆中)

せっかくの星野リゾートということで、星野リゾートの事例から色々と考えていきたいと思います。

全従業員のIT人材化を目指す星野リゾート

業界内では有名な事例ではありますが、ITmedeiaビジネスでも改めて取り上げられていました。サイボウズ社のkintoneというツールの事例となります。

「システム構築は現場の業務を知る人間がシステムを理解した上で作るべき」という方針でIT投資を行いつつ、得られた知見を積極的に全社展開することで成長を続けている星野リゾートの例がヒントになる。
中略
同社IT部門の久本英司氏は、「世界の大手ホテル運営会社は、数百人ものIT人材を有している。現場の力を磨いてきた星野リゾートにおいては、全従業員がIT人材化していくのが強い企業になる方法だ。そのためにはITにはイノベーションを推進させるための自由さと、自由さを支える安心・安全な仕組作りが重要になる」と語っている。
引用:ITmediaビジネス ONLiNE

この記事の要約として
・ITベンダーに外注(丸投げ)は自社の競争力を弱める
・だから業務を熟知している自分たちでつくる
・そのために全従業員がIT人材化しないといけない。

これは以前から叫ばれている課題ではあるが、最近はその流れが一層強まっており、自社内におけるIT人材の育成あるいは獲得が加速している。

またユーザ企業が求めるものも、これまでのように一から手作りするシステムではなく、ノーコード・ローコードの開発ツールを駆使して、早く・安く・70点のものを求める傾向が強まっている。

つまり、これまでは仕立てのスーツのようにきっちりと寸法を測って、生地や裏地やボタンなど、どれを使うかじっくり吟味して、自分の体形にピッタリと合うスーツを時間をかけて作ってきた。

しかし、この星野リゾートの事例から読み取れる世の中のトレンドとしては、仕立てスーツではなく吊るしのスーツでいいから、早くて安いそれなりにフィットするものを選択する傾向にある。

▼システムをスーツに見立てて解説した過去note▼

IaaS/PaaS/SaaSをスーツで捉える?※編集後記参照ください。

アメリカ的企業化が進んでいるということ

これまたIT業界内では常識的な内容かもしれないが、この星野リゾートの全従業員のIT人材化は、アメリカ的な企業化が進んでいるということです。

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上の図は、日米の企業におけるIT人材の所属先の比較となります。

見てわかる通り、日本のIT人材の72%がベンダー企業に、28%がユーザ企業に属しています。

一方、アメリカは35%がベンダー企業65%がユーザ企業に属しているというこで、星野リゾートはアメリカ企業のように、IT人材を社内に多く抱え、システムの内製化を行っているということです。


さらに面白いのが、日米のIT企業の特色も上の図を象徴していることが良くわかります。

日本のITベンダーというと、どのような企業があげられるでしょうか?富士通、NEC、NTTデータ、日立、SCSKなど、皆さんも一度は聞いたことがあるでしょう。

一方アメリカには日本でいうITベンダーという企業体は多くはありません。IBMやアクセンチュアがありますが、一般的にアメリカのIT企業というと、Microsoft、Google、Salesforce、AmazonWebService、Oracle、ServiceNowといった企業を想像するかと思います。

しかし彼らは日本ITベンダーのように、システムを顧客向けにインテグレーション(作る)することはありません。あくまでプラットフォームを提供して、そのうえでシステムを作ってください、というスタンスだ。

歴史の中でアメリカ企業はイノベーションを起こし続け、新しいビジネスモデルを生み出してきた結果だと言えます。一方、日本のITベンダー各社は、旧来のビジネスモデル(受託請負)のまま何十年も生き永らえていると言っても過言ではないでしょう。


話しが逸れてしまいましたが、今日本の多くの企業において星野リゾートのように、アメリカ的企業化が進んでいる状況にあります。つまり今後、アメリカンIT企業は必要なパートナーにはなるが、ジャパンIT企業は必要ではなくなっていくのだ。

日本のIT企業の生き残り戦略とは

上述した日本のIT企業は、よくITゼネコンと揶揄され、日本のITにおける癌だと批判されるケースが多くあります。

私もITゼネコンの一味なので、ポジショントークをせざるを得ませんが、これまでは一定の役割を果たし、社会に貢献してきたと思っています。

巨大なビルを作ろうとした時に、町の工務店に発注するでしょうか?行政側で常に職人を抱えていけるでしょうか?もちろん、ビルと違ってITの世界は連続的なものづくりや維持メンテナンスが必要なので、一概に比較はできません。また、ITゼネコン各社だけが悪いというわけはなく、丸投げをしがちなユーザ企業にも責任の一端はあると思っています。
※この論争は永遠に続いてしまうので、一旦ここで打ち切ります。著作やら責任やら開示やら、なんやかんや色々あるんです。

それでは日本のIT企業は、ますますアメリカ企業的にITの内製化が進むユーザ企業とどう付き合っていけばよいのでしょうか。ぶっちゃけた話、どの企業も答えはまだ一つも見つかっていないと思います。

ですが各社を見まわしてみると、幾つかの方向性を出しているパターンが出てきていると感じています。

①外資のメガIT企業のサプライヤーとなり、彼らの軍門に下る。(これが一番多い。もはや奴隷企業だが、日本においてはまだまだ仕事がたくさん取れる)

②運用に特化したサービスを展開する。(要はIT資産のお守りを、ユーザ企業に代わって行う。ストックビジネスなので、企業の業績的な観点から見ても安定的で経営的にはうれしい。けど、なんのイノベーションも無い)

③スパコンやAIなど、ユーザ企業では開発できないものを開発する。(しかし、アメリカや中国企業と比べると投資資金の差が愕然たるものがある。富岳も半年後には性能値としては抜かれてしまう)

④日本発のプラットフォームを開発する。少しずつ芽を息吹きはじめているが、グローバルでの活躍が今後の課題。

なかなか厳しい現実があり、先が見通せない感は否めません。しかし、これはあくまでIT企業としての目線であります。ユーザ企業は国産だろうが、外国産だろうが何でもよくて、いかに新しいITツールを駆使して、自社の利益を上げていくかが重要です。

IT企業は社会の黒子なので、ユーザにどのような新しい価値を与えられるかを常に念頭に置いて事業活動をしていく他ありません。自社の存在意義をもう一度定義しなおし、スタンスをハッキリするこが重要です。


さて、今日からの星野リゾート界!

存分にもてなされて来ようと思います。行ってきます。

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