旬の新ビジネス、元ネタは案外古い

「旬の新ビジネス」は耳新しいカタカナ語で命名され、一躍脚光を浴びます。しかし、その核心となるアイディア、つまり元ネタは、実は、とっくの昔に提唱されていたものだったりします。この投稿では「成果報酬型」のリカーリングビジネスの原型が今から60年前に提唱されていたことを紹介します。

1.「旬」の新ビジネス=リカーリングビジネス

  
 ビジネスの世界には、「旬の新ビジネス」が続々、登場します。最近の「旬」は、サブスクリプションビジネス(定額定期販売事業)、リカーリングビジネス(収益持続型事業)ではないでしょうか?(  )内は楠瀬の勝手訳です。
 サブスクリプションビジネスは元々はインターネット上のサービスに使われていたのが、IoTの進展に伴い、製造業の新事業形態としても使われるようになったコトバ。これを、さらに製造業に寄せて幅を広げて再定義したのがリカーリングビジネスです。

リカーリングビジネス正

 青嶋さんのこの本は、論理明晰かつ具体例豊富で、大変な良書です。ただし、ビジネスのカタカナ語について相当な予備知識が想定されています。正直に言います。私は、かなり「ググり」ながら読みました。

 青嶋さんは、リカーリングビジネスを
  ①定額タイプ(サブスクリプション)、②IoT与信、
  ③マネージドサービス、④成果報酬型、⑤業界プラットフォーム型
の5つに分類しています。

 今回は、こうちの ④成果報酬型 の元ネタが60年前に提唱されていたことを見ていきます。

2.「使用価値」重視のリカーリングビジネス

 青嶋さんは「成果報酬型」リカーリングビジネスとして、次の3例を挙げています。

リカーリングビジネス事例

いずれも、顧客が製品を入手することに対してではなく、顧客がその製品を使用して便益を得ることに対して課金するビジネスです。
 私は、これを《製品の「所有価値」ではなく「使用価値」に課金するビジネス》だと考えています。

3.「使用価値」重視説には60年の歴史


 「所有価値」ではなく「使用価値」に目を向けよというアイディアは、実は、決して新しいものではありません。60年前に提唱されています。

  1961年、ハーバードビジネススクールの教授だったセオドア・レビット『Marketing Myopia(マーケティング近視眼)』という論文を発表しました。
 この論文の骨子を象徴するのが “People don’t want a quarter-inch drill. They want a quarter-inch hole!” という考え方です。「ドリルメーカーさん、顧客がドリルを欲しがっていると思ったら間違いだよ。顧客は穴をあけたがってるんだ」と言っているのです。


 私流に言い換えると「顧客が求めているのはドリルの所有価値ではなくドリルの使用価値だ」となるのですが、さすがはレビット先生、先生のコトバには、もっと深い意味があります。穴さえあけられれば、使う道具はドリルでなくてもいいのです。
 レビット先生は、ここを見誤っために成長機会を失った例として、アメリかの鉄道会社と映画会社を挙げています。

マーケット近視眼事例

4.多田翼さんの革命的発想


 ところで、noteにマーケティング関係の投稿をなさっている 多田 翼 さんは、レビット先生より、さらに深いことをおっしゃっています「穴もまた、何かを得るための手段に過ぎない」というのです。
 DIYでガーデニング用の棚を取り付けるために穴をあけるとき、消費者が真に求めているのは「ガーデニングから得られる心の満足」ではないかとおっしゃるのです。
 本当は、消費者のニーズをここまで追究していく必要があるのだと、「目からウロコ」でした。

 私はマーケティングよりは戦略系に詳しいのですが、それは経営学者たちの縄張り分けに従って勉強してきたからに過ぎず実務上は、両者はひとつながりで考えるべきものです。
 多田さんの考え方は戦略の立て方にも革命をもたらす可能性があると考えます。このことについては、私自身がもっと考えを深めた上で、改めて論じたいと思います。

 本日、ここまでです。お付き合いいただき、ありがとうございました。

〈終わり〉




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