中学英語でOK!大人の英書/第2回
中学英語で習う英語構文の知識で大人向けの英書をどこまで読み解くことができるかの実験の第2回です。タイトルを「中学英語で挑戦!大人の英語」から「中学英語でOK!大人の英書」に変えました。やや大風呂敷を広げた感もありますが、「どこまで読めるか」を確かめる実験なので、ポジティブなニュアンスを強めてみました。
1.実験ルールのおさらい
はじめに、前回述べた実験のルールを振り返っておきます。
第1回はこちら:
2.取り上げる英書
前回に引き続き、
Barbara Arrowsmith-Young "The Woman Who Changed Her Brain"
から医師のNorman Doidgeが付した前書きに挑戦します。
Barbara Arrowsmith-Youngについては、こちらの記事をご参照ください。
ただし、彼女が採用した方法が一般普遍的に有効かどうかについては、専門家の間で議論が分かれています。
3.読 解
それでは、読解に進みます。2つの段落を取り上げます。
主節の時制と従属節の時制をそろえる時制の一致が適用されている箇所がありますが、これについては、《見たままの意味⇒時制を一致させたあとの意味》という形で表記しています。
読み解いた部分をつなぐと、次のようになります。
実験が行われた。そうした実験は気づかれなかった。疑い深い科学者たちは次のようにみなした。そうした実験はいい加減な方法に基づいている または そうした結果は動物にだけあてはまる。
実験があって、その結果が疑い深い科学者には受け入れられなかった話だとはわかりますが、肝心の「どのような実験か?」が分かりません。
experiments を説明している部分を見つけて読み解く必要が出てきました。実は、この文はやや変則的で、関係代名詞(主格)のthat に導かれてexperimentsを説明する従属節が主節の述語である were conductedの後に置かれています。この部分の意味を拾います。
これを加えて読み解き直すと、次のとおりです。
変化しない脳という見方をひっくり返す実験が行われた。そうした実験は気づかれなかった。疑い深い科学者たちは次のようにみなした。そうした実験はいい加減な方法に基づいている または そうした結果は動物だけにあてはまる。
これで、どういう話かが、見えてきました。
つづけます。
この文は、The experiments から neuroplastic までの主節をmeaning that 以下の従属節が修飾している形です。今回の読解の原則は主節だけを読み解いていくと申し上げましたが、meaning that は「つまり」を意味し、それに導かれる従属節は主節で述べた内容を言い換えています。その意味で、この従属節は主節にほぼ等しいと考えられるので、初めからこの部分も読み取っています。
読み解いた箇所をつなげます。
これらの実験は、以下のことを示していた。脳は神経可塑的である⇒脳には神経可塑性がある(脳科学の分野ではこちらが一般的な表現です)。つまりメンタルな経験とメンタルな訓練が脳の構造そのものを変化させる可能性がある。
以上の2段落と前回読み解いた部分を併せると、次の展開が見えてきます。
脳は機械のようなもので変化しないという考え方が、学習障害を抱えた人たちに破壊的な結果をもたらした。脳は変化しないという見方をくつがえす実験が登場したが、疑い深い科学者はそうした実験の結果を信じなかった。そうした実験の結果は、人間の脳が神経可塑的である、つまり、メンタルな経験と訓練で脳の構造そのものが変わる可能性があることを示していた。
今回はここまでとします。次回もひきつづき、前書きを読み解いていきます。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。