中学英語でOK!大人の英書/第1回
「中学英語がわかればたいていの英語は分かる」という言葉をよく耳にします。私も、長年そう感じてきましたが、実際に、何を・どこまで理解できるのか試したことはありませんでした。そこで、今回、noteという公開の場を使って、大人向けの英書を中学英語で読み解く実験をすることにしました。
1.理解度の目標設定
目標とする理解度は「何の話なのかが分かる」レベルとします。大人向けの英書を中学英語で細部に至るまで読解できるとは期待できません。それが出来たら、高校以降も英語を学び続ける意味がなくなってしまいます。語られているトピックがわかるレベルを目指します。
2.ルール設定
技術的なルールを次のように設定します。
2-1.取り上げる英書のルール
2-1-1. 中学英語で「何の話なのか」が分かりそうな英書
(具体的には大学受験問題レベルの英書)
2-1-2. 翻訳されていない英書
(翻訳書の著作権に配慮)
2-1-3. 一冊の英書からその30%未満
(英文原書の著作権に配慮)
2-2.構文についてのルール
2-2-1. 中学英語で教わる構文の知識で読み解く。
2-2-2. 原則として主節だけ読み、従属節は無視。
例外:動詞の目的語の名詞節と間接疑問文
2-3.単語についてのルール
主節の意味を理解するのに必要な単語は、中学英語の範囲を超えるものであっても、読み解く。
(大人向けの英書を読むので、ここは致し方ないと考えます)
3.今回の実験
今回に始まって、当分の間は、次の英書で実験を続けたいと思います。
Barbara Arrowsmith-Young "The Woman Who Changed Her Brain"
自ら編み出した脳トレーニングで学習障害を克服した教育心理学者が半生を振り返りつつ、脳科学的な知見を記した英書です。
ただし、彼女が採用した方法が一般普遍的に有効かどうかについては、専門家の間で議論が分かれています。その点に、ご注意ください。
Babara Arrosmith-Youngについては、こちらの紹介記事が簡潔にまとまっていると思います。
今回は、医師のNorman Doidgeが付した前書きに挑戦します。まず、前書きの第一段落から
英語でも日本語でも、基本の構造は主語と述語です。英語の場合は、この述語に大きく分けて5つの形式があり、英語学習で「基本5文型」と呼ばれています。
ここでは、基本5文型への分類の細部には立ち入らず、大ぐくりに主語と述語でとらえていきます。主語を赤、述語を青で色分けし、その下に和訳を添えたのが次の図解です。
この図解の主語と述語だけをつないでみます。
臨床医は脳は機械のようなものだと教えられていた。このたとえは、まだ私たちとともにあって(まだ生きていて)、ほとんどの臨床医は、このモデルの何かしらのバージョンを教えられていた。一部の臨床医は今も教えられている。
「何の話なのか」を把握するには、十分なレベルだと思います。
第二段落に進みます。
この部分も、先のパートと同じく、主節の主語と述語だけで読み解いてみます。
主語と述語をつなぐと、次のとおりです。
この機械モデルは、破壊的な結果をもたらした。それは運命論をもたらした。私たちは、こうした子どもたちに方法を教えることができた。
うーん、ここは、かなり苦しいです。脳の機械モデルが学習障害を抱えた人たちを苦しめていた話なのに、肝心の学習障害(learning disorder)が、主節の主語・述語の中心的な位置に置かれていないからです。
この第二段落が言おうとしていることをつかむためには、少なくとも、 "devastating consequences for children and adults with learning disorders" を「学習障害を抱えた子どもと大人にとって破壊的な結果」と一括りで理解できる必要があると思います。
この理解があれば、
この機械モデルは、学習障害を抱えた子どもと大人にとって破壊的な結果をもたらした。それは運命論をもたらした。私たちは、こうした子どもたちに方法を教えることができた。
と訳すことができます。これなら、脳の機械モデルが学習障害を克服する上でマイナスになったことをつかめるのではないかと思います。
中学英語でも前置詞句は出てきます。主語と述語をおさえただけでは意味を取りにくいと思ったら、主語と述語に付随する前置詞句の意味を探る必要があると言えるでしょう。
今回はここまでとします。次回も、"The Woman Who Changed Her Brain" の前書きに取り組みます。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
次回はこちら: