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サーベイの賢い選び方・使い方/Ⅲ. 感覚としてのサーベイ結果は何を物語るか

前回、組織の現状サーベイは、質問項目に対する組織メンバーの感覚的な回答に評価点を割り付けて集計するので、形式上は数字で現れ客観的な体裁をしていても、その実態は感覚的なものだと説明しました。その上で、組織の現状サーベイは「感覚的だから意味がある」とも、お話ししました。今回は、なぜ「感覚的だから意味がある」のかを説明していきます。

1.組織には《ハードウェア》と《ソフトウェア》がある


組織は、外部からのインプット(企業の場合、通常は情報とモノ)を処理(集計、分析、加工、分解など)して、その結果を外部に向けてアウトプットするシステムです。そして、このシステムにはハードウェアとソフトウェアがあります。

管理部のシステム

組織のハードウェアは、情報/モノを処理する職務の組み立てです。インプットに徐々に手を加えてアウトプットの完成形に近づけていくフロー(流れ)形式の組み立てが一般的ですが、逆ピラミッド型の階層構造など、別の組み立てもあります。

この組み立ては手続きやルールによって維持されています。手続きやルールは組み立てと分かちがたい固定的な要素なので、ハードウェアに含めます

組織のソフトウェアは、組織メンバーの職務への取り組み方です。組織の組み立てが変わらなくても、メンバーの職務への取り組み方が変わると、アウトプットの質や量が変わってきます。

組織のソフトウェアの中でも、特にハードウェアに大きく影響するのが、次の3つです。組織のソフトウェアの三本柱と言うべきものです。

(1)組織長のリーダーシップ

(2)組織内の人間関係と組織の雰囲気

(3)メンバーが価値観と目的意識を共有している度合い

したがって、この3つは、どのような組織の現状サーベイでも、共通して主たる評価対象になります。そして、3つともメンバーが感覚的に把握することしか出来ない事象です。

2.組織のソフトウェアに対するメンバーの感覚的な評価がもたらす結果


組織のソフトウェアに対するメンバーの感覚的な評価は、本人の職務への取り組み方を変化させ、それが本人の職務上の成果と組織のソフトウェアの状態の両方に影響します。どういうことなのか、組織長のリーダーシップに対する評価を例に、説明します。

メンバーAは、組織長のリーダーシップを高く評価しています。Aは組織長を信頼してその指示に従うので、職務に迷いなく取り組みます。迷いのなさは熱心さと粘り強さにつながり、その結果、Aは職務で高い成果を上げることができます。

メンバーAの職務への取り組み方も、組織のソフトウェアの構成要素です。メンバーAが職務に迷いなく取り組むことで、組織のソフトウェアの状態は、組織の目的達成に向けたエネルギーが増大する方向に変化します。

メンバーBは、組織長のリーダーシップを低く評価しています。Bは組織長の指示に疑問を抱きながら取り組むので、Aほどの成果を出すことは出来ないでしょう。

メンバーBの職務への取り組み方も、組織のソフトウェアの構成要素です。メンバーBが職務に疑問を抱きながら取り組むことで、組織のソフトウェアの状態は、組織の目的達成に向けたエネルギーが減少する方向に変化します。

これと同じことが(2)組織内の人間関係と組織の雰囲気(3)メンバーが価値観と目的意識を共有している度合い についても成り立ちます。これらの項目を高く評価するメンバーも職務に迷いなく取り組み、高い成果を出すことができます。そして、迷いのない取り組みは、組織のソフトウェアの状態を、組織の目的達成に埋めたエネルギーが増大する方向に変化させます。

(1)・(2)・(3)についてメンバー間で評価のばらつきが大きいということは、組織の中に職務に迷いなく取り組むメンバーとそうでないメンバーが混在していることを意味します。このことは、組織に、次の2つの面でマイナスに影響します。

(ア)迷いなく取り組むメンバーが高い成果を上げても、そうでないメンバーの低い成果と相殺されてしまい、組織としての成果を上げにくい。

(イ)迷いなく取り組むメンバーが組織のソフトウェアに与える正の影響が、そうでないメンバーが与える負の影響と相殺されてしまい、組織のソフトウェアの状態が変わらない(負の影響の方が大きいと、状態が劣化する)。

では、このバラツキを小さくして、メンバーの大多数が迷いなく仕事に取り組み、組織として成果を出せるようになるためには、どうしたらよいのでしょう? それについては、次回のテーマとします。

【注】上記2の議論には、次の2つの穴があります。第一に、組織長の指示が誤っていた場合、および、組織の価値観と目的意識が間違った方向を向いている場合が考慮されていません。第二に、組織内のどのような人間関係、および、どのような組織の雰囲気が組織の成果につながるのかが定義されていません。これらの穴は、次回以降の説明の中で埋めていきます。


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

『サーベイの賢い選び方・使い方/Ⅲ. 感覚としてのサーベイ結果は何を物語るか』おわり

前回はこちらです:





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