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vol.22 ラストバイブル3
ドラゴンクエスト5の「倒したモンスターが仲間になる」というシステムは非常に面白かった。これまで敵対していたはずのモンスターがこちらを慕い、共に冒険を続けることでいつしか絆が産まれる。仲間モンスターは豊富で、プレーヤーの数だけドラマがある。
しかしここで「ドラゴンクエスト5の仲間モンスターシステムは斬新だった! これまでにない革新的なシステムだ!」などと口走ろうものなら簀巻きにして川に流されても文句は言えない。この暴言が許されるのはせいぜい小学生までだ。
なぜなら、そのような発言は女神転生シリーズファンの琴線にショルダータックルをしかけるようなものだからだ。ゲーマーとしてこのような軽率な発言は絶対にしてはいけない。基礎教養である。
とはいえ、女神転生シリーズはやや硬派で、ドラゴンクエスト5を子供時代に遊ぶような年齢のプレーヤーには情報が入ってこないゲームであった。3Dダンジョン形式もマップの把握で人により得手不得手がある。
そんな中、スーパーファミコン、かつドラゴンクエストのようなRPGのシステムで登場したのがラストバイブル3である。ラストバイブルシリーズは女神転生の外伝であり、魔物は説得により仲魔としてパーティーに入れることができる。
ラストバイブルシリーズは、それまでに女神転生シリーズを遊んでこなかった筆者と友人たちにとってはなかなか新鮮なゲームであった。会話により魔物が仲魔として加入するシステムも、魔物を合体させるシステムも衝撃的であった。
さらに、3Dダンジョン探索のRPGでは一般的な表現であろうが、同じ敵が奥に複数控えているグループの場合、グラフィック端に数字が表示されるというのも初めて出会ったのはこのゲームだった。
この表示、ぱっと見は理解しにくいようで、友人と言い争いになったことがある。友人は強さの表示だ、3は三倍強いのだと主張した。単純に考えれば耐久力が三倍なのでわからない話ではない。
筆者はゲーム中の会話ダイアログで先生キャラのキャルルが「敵が奥に並んでいる」といった表現をしていたのでそう主張した。議論は平行線に終わったが、筆者としては納得はいっていない。キャルル先生が言ってたじゃないか。先生の話はちゃんと聞くべきだ。
さて、本作は筆者にとって「四大天使」に触れた初めての作品だった。四大天使、すなわちミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルである。多くのファンタジー作品に登場するこの名前、長くゲーマーをやっていれば出会わずに過ごすのは困難であろう。
この四大天使であるが、ゲーム中に「百魔問答」というミニゲームで出会える。これは魔物の好感度を上げ仲間に入れる「会話」に連続で挑戦し、何体を懐柔できるかに挑戦するものである。
この百魔問答、通常にプレイすれば百体目はおろか半分にたどり着くのさえ困難である。女神転生シリーズをプレイしたことがある人物であれば想像しやすいだろう。魔物には人間の常識は通用しない。会話では攻撃的な態度が好まれたり、我儘を通す方が喜ばれたりもする。
交渉は一度でも失敗すれば一体目からやり直しである。いくら何でも困難が過ぎるのだ。この百魔問答では十体成功することに強い仲魔が1体手に入る。その百体目のボーナスがミカエルである。常識の通じない相手と百人連続で交渉することを考えてみてほしい。困難を極める。
百体に到達しなくてはミカエルにたどり着けないのに、筆者はどうやって本作のミカエルと出会ったか。当然百魔問答経由ではない。本作には開発時の消し忘れなのか、戦闘シーンから簡単にデバッグモードに入れる裏技がある。
この裏技を使用することで、戦闘シーンに登場する敵を好きに操作することができる。序盤からラスボスと対峙することすら可能だ。この裏技によってミカエルを呼び出し、百魔問答ではない場面で通常説得し仲魔にしてしまうのだ。
筆者の肌感覚ではあるが、近年の作品ではミカエルには女性のキャラクターが当てられることが多いように感じている。いっぽう、このゲームにおけるミカエルのグラフィックは厳格そうな老人の男性である。
グラフィックは老人男性であるが、このミカエル、実際の会話交渉における会話パターンは「人間(女性)」である。「人間(女性)」は、やや上からの態度でしゃべるお姉さんのようなダイアログになっている。
総合すると、筆者が初めて出会ったミカエルは「厳格そうな老人男性のビジュアルで、こちらを舐めてかかるようなオネエ口調でしゃべる、しかし仲魔にするとやたら強い天使」だったのだ。情報量が多い。
ラストバイブル以降も様々な作品でミカエルと出会ってきた。そこには豊満な女性(バスタード!/グランブルーファンタジー)、屈強な男性(スターオーシャン2)、ブタ(極上パロディウス)など様々であったが、いまだに「オネエ口調の老人男性」のインパクトを超えるものはない。
これからも何らかの作品でミカエルに出会うたび、筆者はラストバイブル3のオネエ口調老人男性ミカエルを思い出すのだろう。デバッグモードは便利ではあるが、筆者の人生に別種のバグを生んでしまったのだ。