
vol.6 ガーディアンヒーローズ
「異世界おじさん」のおかげで一気に知名度を上げたと信じている、とにもかくにもガーディアンヒーローズ、ガーヒーである。
ユーザーが作った略称のように見えるが、セガサターンのシステム上のセーブデータファイル名がガーヒーなのでオフィシャルの呼称であることはガーヒーファンなら知らないはずはないだろう。
ガーヒーとの出会いは発売頃の「わんぱくこぞう」店頭のデモ版だった。当時の「次世代機」であるプレイステーションやセガサターンはまだ値下げ競争が過熱しておらず、子供にとっても子供に買い与えるか悩む大人にとっても高いお値段の代物だった。
「バーチャファイター」が一世を風靡した時代で、セガサターンを持っているクラスメートが居れば家に集まり、バーチャにいそしんだ頃である。筆者の自宅にセガサターンが来るのは新価格の二万円、白サターンの発売から少しあとまで待つことになる。
だから店頭のデモは憧れのセガサターンを触ることができるいい機会だったのだ。このときのデモで遊べたのがガーヒーである。
まさに脳天直撃だった。オープニングアニメがめっちゃ動いている。キャラにボイスがある。アニメがヌルヌル動く。当時は開発会社トレジャーの名前も知らない、気にすることもない子どもだったが、ガーヒーのすごさはわかった。このゲームは面白いと本能が訴える。
ファイナルファイトみたいだけど連続で叩くとヒット数のエフェクトが出る。奥行は3ラインなので微妙に位置を調整する必要がない。そのうえビームも出るしコンボにもなる。「もりもり増えるコンボ数ってなんかかっこいい」。そんな想いを代弁したかのような気持ちのいい操作感であった。
筆者が好んだキャラは杖術で戦うランディである。弱ボタン連打で簡単にコンボが出る。波動拳で杖をぐるぐる回して叩く。昇竜拳みたいな上昇攻撃もある。魔法としてビームも出る。好きな要素てんこ盛りだ。
何度やってもランディを選んでしまう。当時の筆者のご近所には運よく「セガサターン」および「ガーヒー」を持っている友人がおり、それはもう遊び倒した。
その後、白サターンが家に来てからもガーヒーは改めて買ってもらい、さらに遊び尽くした。ガーヒーと言えば裏技でディップスイッチをオンにしてすべての要素を出現させてからのなんでもあり対戦である。仮にその後に「スマブラ」が発売されていなければずっとガーヒーを繰り返していた可能性すらあるくらい、カオスな遊びが楽しめるモードだ。
ゲーム内容を少し詳しく書こう。ガーヒーはベルトスクロールアクションであるが、キャラが成長するためベルトスクロールアクションでありアクションRPGでもある。さらに選択肢や行動によってストーリーが分岐するため、ADV的な要素もある。てんこもりのゲームだ。
オマケ要素的に対戦モードがあるが、むしろ対戦こそが本丸だ。このモードではストーリーモードで使用するメインキャラの他、NPC、各種敵ボスキャラに加え、モブ敵、人間型でないモブモンスター、戦闘員でない町人など全45キャラまで使用することができるようになっている。当時の水準で考えれば異常なキャラの多さだ。
さらにそれらキャラクターのステータスも設定できるため「めちゃ強くした非戦闘員」と「超弱くしたラスボス」のバトルといった遊び方もできるのだ。さらには使用キャラ・設定ステータスをランダムにして、CPUまで乱入させて遊ぶなら、最高にカオスな遊びが楽しめるのだ。
もちろん、このカオスな遊びにまっとうなゲーム性をもとめているわけではなく「ダウンタウン行進曲それゆけ大運動会」のようなワイワイした遊びである。
本編ストーリー面も遊びごたえはあるのだが、最終的に出会うボスが同じであること、どうしてもプレイヤーの行動は最適解が決まりきってしまうことが難点だった。
オープニングと比較するとエンディングも少し落ち着いた表現になっていて、ロックされている対戦用のキャラクターを開放していく楽しみはあるのだが、クリアを重ねるほど作業感が強くなってしまう。
そして何より全プレーヤーの印象に残っているであろうストーリーの難点ポイントが魔導士「カノン」の長台詞である。どのルートを通ったとしても必ず通るこのカノン、メッセージをスキップしていてもかなりの長さしゃべる。「どうあってもよくしゃべるおじいちゃん」として筆者のゲーム全体の印象のかなりの位置を占めている。
全体で言えば大味なゲームであることは間違いないと思うのだが、それ以上に楽しいゲーム体験をさせてくれることがガーヒーの魅力であり、愛される理由であろう。
XBOX360で復刻したが、それ以降の展開がなかったというのはセガサターンという時代、タイミングが重要なゲームだったということだろうか。もしも今後「セガサターンミニ」的な企画があったならば、ガーヒーは絶対に外せないゲームである。