【田端大学】エンジニアが錯覚資産をフル活用する有用性
■前書き
今回は1月の田端大学定例に向け、ふろむださんの著書「人生は運よりも実力よりも、勘違いさせる力で決まっている」
についての話。エンジニア向けです。
ちなみに、Amazonレビューを読んでいる限り、「ハロー効果」や「認知バイアス」と聞いてすぐピンとくる人とっては真新しいことは書いてないかもしれません。
あるレビューに「我慢して読んだが途中で吐き気を催して断念した」と書いてあって僕は「何て純粋な人だろう」と感動を覚えました。
「ハロー効果?何それ?挨拶がコミュニケーションに及ぼす効果?」
とか思った人は完全に僕と同レベルなのでぜひ読むことをオススメします。
ちなみに、ハロー効果とか関係なく、「日本は資本主義社会だ!実力主義最高!エンジニアは実力が全て!」とか思ってる人も完全に僕と同レベルです。是非読みましょう。
5章分までふろむださんのサイトで無料で公開されているので、「まず読んでみたい」という方は是非。
■本の評価
錯覚資産を上手く使いこなせてる人たちは基本的にこの本を評価してる印象です。主にインフルエンサー達ですね。
■本の内容
本の内容を一言でまとめると「結局世の中『できると思わせたもん勝ち』」です。
早速例を見ていきましょう。
本書の中では「容姿の優れた政治家」の例が出てきます。その政治家の「本来の能力」は図1の通り。
図1.ある政治家の本来の能力
縦軸が能力値と思って下さい。
これに対し、周囲の人は直感的に彼を図2のように評価しがちです。
図2.ある政治家の周りからの評価
「容姿」の能力に引っ張られて「この人は他の能力も高そう」と無意識の内に思ってしまうのです。
そして、政治家自身の自己評価は図3の通り。
図3.ある政治家の自己評価
まとめると図4のようになります。
図4.まとめ
ふろむださんは下記のように述べています。
この政治家に関しては、周囲が「容姿に引っ張られて『全ての能力が高い』と錯覚」しており、「自分自身も能力が高いと思っている」という状況です。
つまり、本人なりに嘘はついていないという状況。
そして、「能力が高い」と思われた政治家は選挙に当選し、実務を通して実力を付けていく。そんな流れです。
ZOZO田端さんの著書「ブランド人になれ!会社の奴隷解放宣言 」の
の項でも同じようなことが書かれていますが、「実力を付けてから実務に挑む」のではなく「実務に挑んで実力を付けていく」という順番です。
これに関しては田端大学初代MVPである福本さんのTweetを引用。
まさに僕も言いたかったことで「何で福本さん僕が言いたいこと先に言っちゃうんですか」と思いましたが、手間が省けてラッキーと思うことにします。
■エンジニアが錯覚資産を使う有用性
さて、では「エンジニア」が錯覚資産を使う有用性について話して行きましょう。
先に結論を話してしまうと以下の2つが理由です
・エンジニア経験があれば誰でも使えるから
・意識して錯覚資産を使う人が少ないから
順に見ていきましょう。
■エンジニア経験があれば誰にでも使える
例えば以下質問があったとします。
それに対する回答例は以下の通り。
①②は端的すぎるので置いておきましょう(なら書くなよ)
比較して欲しいのは③と④。
一目見て分かると思いますが③も④も錯覚資産を生み出しています。
③は「LCD駆動回路設計以外にも色々できそうだ」というポジティブな錯覚資産。
④は「自信がなく、LCD駆動回路設計ですら頼りにならなそうだ」というネガティブな錯覚資産です。
図5.図にするとこんな感じ
社会人としてエンジニア経験がある人は、少なからず自分が残した実績があるはずです。
それを「抽象的な概念に一度置き換え、横展開が可能であるということを周囲に見せる」ことで、エンジニアとしての守備範囲が広そうだと周囲に思わせることができるわけです。実績が伴っていると、ただ言葉を並べる場合と比べて説得力は段違いです。
ちなみにこの例は僕の例です。LCD駆動回路設計をデジタル回路設計という一段階抽象的なものに置き換えれば、横展開が可能な状況です。
が、僕は前職(特にカメラ担当時)では④の言い方をしてました。その為、周囲からの評価はあまり高くなかったと認識しています。
一方、転職活動では③の言い方を重視しました。
具体的には
①画像圧縮符号化アルゴリズム開発で得た画像処理とソフトウェア開発の知見
②カメラ電気設計で得たデジタル回路設計の知見
③FPD露光装置の電気設計&組込ソフトウェア開発で得た、アナログ回路設計とミドルウェア開発の知見
④BtoC製品の立ち上げ〜量産までに携わった幅広い知見
⑤BtoB製品の立ち上げ〜量産までに携わった幅広い知見
⑥小型大量生産製品の開発に携わった経験
⑦大型少量生産製品の開発に携わった経験
があり、それらを活かして新たな領域に着手するのも抵抗はないということを主張したわけです。もちろん言い過ぎない様に注意を払いつつですが。
結果として転職に一発で成功しているので、やり方としては悪くないかなという印象です。
当然、誇張し過ぎて実態が伴っていない場合は信頼が地に落ちるわけですが、少し大きく見せる程度なら常時やり続けて良いくらいだと思っています。
「外にあれだけ言っちゃったんだから頑張らないと」
という適度な緊張感も保てますしね。
■意識して錯覚資産を使う人が少ない
さて、では2つ目の理由です。読者がエンジニアと仮定した上ですが、以下のような人は多いのではないでしょうか。
まぁ、全て以前の僕な訳ですが。
前職で周りを見ていても上記のような思想は蔓延してるように思います。特に1つ目に関しては、全業界が人手不足である今の時代、自分に降ってくる仕事を増やしたくない人は多いはず。
ただ、一歩前進して考え方を変えてみて下さい。
「できる」と言おうが「できない」と言おうが、そもそも人手不足なので結局一定量の仕事は降ってきます。
なので、自分に自信を持ち、錯覚資産を有効活用することで、「少し難易度が高いけど、やりがいがあり楽しめる仕事」を自分の手元にぶん取ってしまえば良いんです。難易度や希少性が高ければ高いほど、他の仕事は断りやすくなります。
一度ループに入ってしまえば、飛躍的に能力を伸ばすことができるでしょう。他の人が錯覚資産を活用していないならチャンスでしかありません。
ただし注意が必要なのは、「どうせあいつに任せときゃ良いんでしょ」という空気の中で乱用しないことです。やり過ぎると自分自身が潰れます。
仮にそんな他責文化が根付いている場合は、錯覚資産の活用など考えずにさっさと逃げ出した方が楽です。その辺りを踏まえつつ、使うべき環境で使う、ということを意識すれば良いのかなと思います。
※ちなみに、前の職場は他責文化ではありませんでした。多くのエンジニアがそれぞれ責任感を持って業務に取り組んでいました。もう少しうまく立ち回れたかな、と思ってます。
そして、偽ることに抵抗がある人こそ錯覚資産を使うべきです。一度口から出した言葉を事実にするように必死になります。
今の僕が正にそうです。社内にハードウェア・ミドルウェアを担当できる人が多くはないのでもう必死必死。それでも全く辛くないのは置かれている環境が良いからでしょうね。
以上が僕なりに考えた、エンジニアが錯覚資産をフル活用する有用性です。
あらゆる業界でエンジニアが不足している中で、「錯覚資産」を意識して有効に活用できている人は多くはいないと思います。
これを機会に、意識してみるのはいかがでしょう。
その為の一冊として、「人生は運よりも実力よりも、勘違いさせる力で決まっている」は非常にオススメです。
高石圭佑
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