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チキンライス、オムライスの起源はイギリスにあり その3(東洋経済オンライン記事補足)
(チキンライス、オムライスの起源はイギリスにあり その2の続きです)
チキンライス、オムライスの起源に関する東洋経済オンライン記事を公開しました。
本来なら書籍で一章を費やすべき内容を駆け足で説明したので、圧縮、省略した部分がかなりあります。これからその部分を補足説明していきます。
5.懸賞で一等をとった、ケチャップを使った簡易版チキンライスレシピ
![](https://assets.st-note.com/img/1682628708796-95p5sozrrJ.jpg)
その広告とは、神戸の干しぶどう生産組合が出した広告。この生産組合は、干しぶどう拡販のために、干しぶどうを使ったレシピを懸賞付きで募集していたのです。
この干しぶどう、西アジア(現トルコやイラン)のサフラン炊き込み飯につきものの具材なんです。
そしてグランプリを取ったのが、そのサフラン炊き込み飯を先祖に持つ簡易版チキンライスのレシピ。
ところがこの簡易版チキンライスレシピ、サフランは使わずにトマトソース/ケチャップで代用するは、ご飯は出汁でなく水で炊いたものだわで、干しぶどう以外の先祖の痕跡が全部消えてしまっています。
そして現在のチキンライスは、その干しぶどうすら消えてしまっているのです。チキンライスの先祖が、パエリアやピラフと同じ料理と気づかないのも当然です。
それはともかくとして、この白飯と鶏肉とトマトソース/ケチャップを使った簡易版チキンライスが、一等賞のレシピとして、当時としては大部数(『婦女界』は昭和4年に45万部)を誇った婦人雑誌複数に、(広告なので)くり返し載ったのです。
こうして、現在のチキンライス=簡易版チキンライスが、日本独自の洋食として定着していったのです。
6.ライスオムレツの渡来
さて、イギリス、アメリカにはライスオムレツという、煮た米を具にしたオムレツが存在します。
ベストセラー小説であり明治時代最も売れた西洋料理レシピ掲載書でもある『食道楽』の著者、村井弦斎が所有していたとされる(黒岩比佐子『「食道楽」の人 村井弦斎』による)F.L.Gillette『White House Cook Book』(1887年)にも、ライスオムレツレシピが載っています。
![](https://assets.st-note.com/img/1682629190927-3eKZ6h88Yx.jpg?width=1200)
東洋経済オンライン記事掲載のライスオムレツレシピは甘いデザート系ですが、こちらはしょっぱい系のライスオムレツ。
これを元にしたと思われる『食道楽』の「米のオムレツ」レシピです。
![](https://assets.st-note.com/img/1682629255839-SBaDr9o8b8.jpg)
二行目真ん中の「玉子の黄身~」以降が、ライスオムレツに対応する部分、いろいろアレンジしていますが、玉子とご飯を混ぜ合わせたオムレツです。fold it doubleを柏餅にたとえています。
そして先頭の「手軽」版が、日本化したオムレツでご飯を包むレシピ。現在のオムライスの原型です。詳しい説明がないので、説明不要なほどこの手軽版が普及していたのかもしれません。
村井弦斎は手軽版を「味がありません」と否定的に捉えているので、一般的に普及している手軽版に対し、あらためて本場のライスオムレツを紹介し、啓蒙しようとしたのではないかと考えます。
いずれにせよこの、ベストセラー『食道楽』に掲載された、ご飯をオムレツで包む手軽版rice omeletと、料理書や婦人雑誌に掲載された白飯を利用した簡易版チキンライスが出会い、オムライスとなるのです。
大正15年の小林定美『手軽においしく誰にも出来る支那料理と西洋料理』における牛肉を使った「オム、ライス」。
![](https://assets.st-note.com/img/1682629983897-7MsJoj12cj.jpg?width=1200)