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悪童たちのインヘリタンス(映画「ゴールドボーイ」感想)

岡田将生さんメロメロ部として鑑賞してきました、映画「ゴールドボーイ」

岡田さんは勿論、3人の若き俳優さん達がすごく良かったので感想を残しておきます。


ストーリー

原作は、中国のベストセラー作家・紫金陳(ズー・ジェンチン)氏による「坏小孩」 (邦題「悪童たち」)。
舞台を沖縄に据え、日本版としてリメイクしたのが本作です。

あらすじはこちら。

それは完全犯罪のはずだった。まさか少年たちに目撃されていたとは…。

義父母を崖から突き落とす男の姿を偶然にもカメラでとらえた少年たち。事業家の婿養子である男は、ある目的のために犯行に及んだのだ。
一方、少年たちも複雑な家庭環境による貧困や、家族関係の問題を抱えていた。
「僕達の問題さ、みんなお金さえあれば解決しない?」
朝陽(13)は男を脅迫して大金を得ようと画策する。
「何をしたとしても14歳までは捕まらないよ。少年法で決まってるから」

殺人犯と少年たちの二転三転する駆け引きの末に待ち受ける結末とは……。

公式HPより

キャスト

岡田将生さん(義父母を手にかける婿養子・東)


♡推しです♡
目。口元。異様に端整な顔立ちなのに、ひどく歪んで見えた。鑑賞中「岡田さんも年齢を重ねているんだなぁ…」としみじみしちゃったけど、舞台挨拶ではにこにこツヤツヤしててもう訳が分かりません。魂が歪んでいる人間の皺の寄り方がありえないくらい巧い。役で骨格まで変えてる怖い人。

予告では狡猾で高潔なサイコキラーというような人物造型がなされていますが、結末を知ってから振り返ると本当に滑稽というか、「ここまで頑張って完全犯罪をやったのにこんな事になっちゃって可哀想だな」とさえ感じてしまう。

てかガキたちに舐められすぎていてなんか可愛いまである。「アイツびびってたなw」とか笑われてるし、13歳にガン詰めされて癇癪起こしてベランダに逃げてアイコス吸い始めるのも、奥さん(松井玲奈さん)と刑事(江口洋介さん)の前で猿芝居こいて冷たい目で見られてるのもなんかもう全部が浅ましくて、愚か。
徹底した「被害者ムーブ」があまりにも白々しくて終始ドン引きでした(褒めています)。

映画館のド真ん中の席に鎮座して観る推しの顔は格別でした。衣装特別協賛ということで岡田将生さんによるY'sのLOOK BOOKも楽しめるよ!
「ラストマイル」も本当に楽しみだ~!!

これまでも何度か悪い人を演じましたが、どれも悪役だとは思わず、その人物なりの正当化をしながらお芝居をしてきました。

記事より

羽村仁成さん(東への脅迫を企てる秀才・朝陽)


今年の映画賞の新人部門は全部この方が総獲りします。そう断言できるくらい、凄かった。
正直、展開に薄々予想はつくし突っ込み所も多いシナリオなんだけど、それらを羽村さんの存在が凌駕してきた。
演技力というよりも、説得力という方がしっくり来る。
東に対して「こいつに同情したら終わりだ」と先述しましたが、朝陽に関してはそんな警戒すらさせない。途中でなんとなく違和感に気付き始めた頃にはもう手遅れ。
まだ子どもだから。働き詰めのお母さんを気遣う優しい少年だから。東という圧倒的ヴィランがいるから……。言い訳を脳内に列挙していく中、「嫌な予感」のピントはどんどん定まっていく。

相手の嘘を補完し、正当化し始めたら騙されている証拠とはよく言ったもので……。
つい数ヶ月前に帝国劇場で見たアイドルと同一人物とは信じられない。

これからご覧になる方は、冒頭の朝陽のナレーション台詞を覚えておいてください。

彼が人と関わっていくにつれて変わっていく様を何回も台本を読み込んで研究しました。『ここで感情が切り替わるんだ』と理解しながら、カメラに向かっていました。

記事より


前出燿志さん(朝陽の計画に巻き込まれる不良少年・浩)


前出さんも凄かった……。
朝陽から計画を持ち掛けられた時の目の光に度肝を抜かれた。幼くて無邪気な表情と、やっていることの最悪さのギャップが本当に不快だった。(褒めています)
一瞬、東と心が通い始めていたような描写もあっただけにその後の展開が辛かった。

浩が朝陽と夏月と一緒にステーキを食べるシーンがあるんですけど、ステーキを食べて、店から出てくるまでのシーンの全てが浩の性格そのものを表していると思う。

記事より

星乃あんなさん(朝陽の計画に加担する少女・夏月)


岡田さんが何度も「この映画は子ども達が主役」と発言していた理由を、彼女を見て理解しました。
家から朝陽と逃げるシーン、デートのシーン、朝陽と一緒にいる夏月の可愛さよ。陽の光を跳ね返す沖縄の海の水面よりキラキラと輝いていた。
監督が「デスノート」の人で、当時の戸田恵梨香さんを思い出すような華奢さと透明感に満ち溢れた俳優さんです。

撮影の合間は、ストーリーの伏線を勝手に予想したり(笑)。“この展開だとしたら、あの人切ないね”とか、台本に描かれていない部分まで考察して3人で盛り上がっていました

記事より


沖縄というロケーション


単に景色が綺麗だからという理由ではなく、沖縄を舞台にする意味がシナリオの中にある程度落とし込まれていたように思います。

青い海!高い空!豊かな自然!なのにこんなに閉塞感!朝陽の後ろの空に米軍機が横切るカットが不穏すぎる。

見た目だけではなく、江口洋介さん演じる刑事が島内の狭くて濃ゆい人間関係の辛さを吐露するシーンや、「この地域は東一族のおかげで栄えた土地だから、下手に東一族のスキャンダルには触れられない」と地元警察が尻込むシーンにも閉塞感やジメジメとした空気感が流れていました。あくまでフィクションの沖縄として。リアリティとはまた別の切迫感のようなものはあった。
ウサンミ(法事用のおせちみたいなやつ)美味しそうだったな。

悪童たちの「インヘリタンス」

inheritance
(名)継承 相続 相続権 相続財産 遺産 文化的遺産 伝統 遺伝 遺伝的形質

https://kotobank.jp/ejword/inheritance

本作には遺産の相続を巡る描写が何度も登場し、物語を動かします。義両親と妻から東へ。父から朝陽へ。

また、財産だけではないものを「継承する」物語でもあると感じました。
例えば、東が朝陽に完全犯罪のトリックを教えるシーン。高揚した様子で得意気に語る東の姿は、劇中で最も生き生きとしていました。
そんな東を朝陽は軽蔑している様子でしたが、やがて東と同じ道を辿ることとなり、その眼差しは東そっくりに歪んでいました。

では、東は一体誰から悪意を「継承」してきたのでしょうか。

彼の「狂気的な殺意」が先天的なものなのか後天的なのかということもありますが「なぜこういう子が生まれて、こんな大人になってしまったんだ」という問題提議のようなものが、台本を読んでいて特に伝わってきた部分でした。

記事より

岡田さん自身が仰るように、何の躊躇もなく義両親を崖から突き落とせるほどの「狂気的な殺意」を東は抱えています。

かつては優秀な学生だったようで、当時のトロフィーを今でも大切に自宅に飾っている東。
彼の人生の黄金時代、正気でいられた頃の自分との鎹のようにも思えます。
彼の浅はかな言動の奥にある余白を見つめる時、果たして我々は東昇と他人のままでいられるのでしょうか。

また、かつては賢くて邪悪で大人を出し抜く少年を演じる側だった岡田将生さんが、本作ではそんな少年と対峙する大人側に回っているのも見所の1つだと思います。

作品の外でも、岡田さんから羽村さん、前出さん、星乃さんへ、作品と向き合う姿勢や意志が受け継がれているように感じられました。

作品概要
企画 許 曄
製作総指揮 白 金
原作 紫金陳
監督 金子修介
脚本 港岳彦
主題歌 倖田來未「Silence」
配給 東京テアトル、チームジョイ

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