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それはそれとして、時間がないから

日進月歩のAI。ハードルが高かったことがたやすく出来るようになる。たとえば、Google Lens。花の名前や樹木など瞬時に答えの候補が表示される。外国語翻訳も同じ、Lens があればその場で日本語になる。

▼中学校から英語を習ってきたけれど、ちっとも上達しなかった。最初のハードルは日本語訳がひとつじゃないことへの不満だった。数学のように答えが明確じゃなく、いろんな言い方がある。どうしてこの訳ではだめなのか、すっきりしないまま時間が過ぎた。

時が過ぎて英語使いをあきらめた頃、海外出張があった。いまでこそネットで日本のニュースが見れるが、当時はなかった。BBCなどのニュースか英字新聞。記事全部は見れないから、せめて見出しだけでもと思って読んだら、これが実にハードルが高かった。

ひとつ単語がわからずに読み飛ばすと、短文が訳せないのだ。見出しだけでは類推できず、本文を読まなければならなかった。これじゃどうしようもない。

今は、Google Lens。インプットしなくても写真にとれば日本語になる。しかも記事っぽい翻訳文が表示される。短文だから他に言い換えようがない。答え合わせを出来るのが気に入った。トシヨリの手習いで見出し翻訳に再挑戦するかという気になった。

▼先日NHK BSスペシャルで、AIを利用した可視化テクノロジーで考古学にいどむという番組を見た。地表の余分なものを取り除いた地形をから古代遺跡の成り立ちや都市構造にアプローチするというもの。

島根県奥出雲町に住む72歳の同級生4人組。考古学が趣味で、中学時代から地元の古墳を調べてきた。航空測量図を入手し、地形からそれらしき古墳形状を探る。これにAIを利用できないかと島根大学に持ち込んだ。AIがまたたく間にいくつかの古墳候補を描き出した。

「測量図を目を皿のようにして読む、大変楽しい作業ですよね」
「AIを使うとその楽しみが奪われてしまうのでは?」

と島根大学の先生が言うと、同級生のひとりがこう言った。

「それはそれとして。わたしらには時間がないから」

▼Google Lensを使えば答えがすぐに出る。でも、すぐ答えを見たくなって自分で考えなくなり、頭が早くボケるのじゃないかとも思う。でも、

「それはそれとして、時間がないから」

トシヨリは過程を楽しむより、結果が早く欲しいのだ。


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