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もう帰れと言う

入院は30年ぶりだった。大腸ポリープの検査・切除後、自宅に帰ってから下血した。次の日も止まらず、不安になって切除した病院に駆け込み、2-3日入院した記憶がある。今回も同じ病院だ。

父親が大腸癌だったこともあって、ポリープ検査はほぼ毎年やっている。主治医が他の病院に替わっていなくなり、今回はSドクターになった。72歳、ベテランの名医だそうだ。

7月末の検査だった。スコープでチェックしながら、「1.5㎝くらいありますね、入院できますか?」とSドクターが言う。麻酔でうとうとしながら、患部にカットワイヤーが巻かれるモニター画像を見ていた。「はい、大丈夫です」とうつろなままに答えた。

3個あったらしい。切除したあと、そのまま入院となった。4人部屋、窓際のベッドが空いていた。明るくていい。クーラーも効いてテレビもある。本も1冊持っている。着替えはないが貸与品がある。なんとかなると家人にメールした。ポリープ切除後は2週間の断酒、どう過ごそうか、ゆっくり考える時間ができたと思った.

夕食は6時。温かい魚の煮付けと五分粥、ココアを飲んでベッドに寝転んだ。パリ・オリンピックがゆっくり見れる。500円のチケットが切れる前に眠りこんだようだ。

翌朝6時、看護師さんが来て、「7時に朝食、先生の回診のあと9時過ぎに退院です」と言う。

「もう?」
という顔をしていたのだろう。
「なんなら、お昼ご飯食べて帰りますか?」
と聞かれた。

断酒の2週間どう過ごそうか。気持ちの準備がまだ出来てなかった。ここの快適な環境で考えてから帰りたかったのに。


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