風邪で病院行ったら、なんか大事になってしまった
もうかれこれ二週間近く、ゲホゲホしている。
カナダは絶賛医療崩壊中なので、風邪ごときで病院に行くのは非常にためらわれる。実際、風邪で娘が息苦しいというので連れて行った時は、帰るまでに7時間かかった。
だから市販の薬で、ただただ大人しく寝てた。
一週間も経つと、頭痛と咳が残るくらいでだいぶ良くなり、「よかった、よかった」と思ってた。しかし、ある朝、強烈な咳で、ちょっと呼吸困難気味になって、しかも、熱を測ったら『38度』の文字。
せっかく治ったと思ったのに、10日もたって、強い咳&熱はさすがに異常だろ。
そこで重い腰をあげて、病院に行くことにした。
州の医療サイトでの予測待ち時間は、『3時間』。
ゲホゲホしながら待合室で3時間。
他の人に嫌われるだろうな〜、と思いつつ、マスクを持参して赴いた。
受付で症状を伝え、熱と血中酸素を調べられる。
そして、そこからひたすら待つ。
やっと、診察する側のドアの中の待合室に通される。
レントゲンを撮る。
待合室に戻る。
次に血液採取。
待合室に戻る。
今度は心電図。
待合室に......。
かれこれすでに3時間。
ようやくアジア系の女性のドクターが来てくれた。
「うーん。ちょっとプライベートで話したいから、ちょっとこっちで」
と、カーテンで仕切られたベッドに向かう。
なんか、ドクターの様子がおかしい。
「レントゲンで肺に異常はみつからなかったんだけど、心電図がちょっと......」
へ?
でも、さっき、心電図とってくれたナースが、カタカタ出てきた紙見て、「いい感じね」ってにこやかに言ってましたが?
なんか、とにかく、ちょっと異常な感じがあるので、CTを撮ってみる、とのこと。
えー。
ちなみに、医療崩壊中のカナダでは、CTやらMRI撮るのに、何週間、下手すりゃ何ヶ月も待たなくちゃいけない。
それなのに、今すぐCT......。
こえ〜よ〜。
何が起こってんだよ〜。
こちとら心臓に何の異常も感じてないのに?
とにかく言われるがままに、CTをとりにいく。
また待合室に返される。
もう5時間経過。
風邪でツラい上に、お腹も空いてきた。
「あの、何か食べ物売ってるとこありますか?」
パソコンを眺めてる看護師さんに聞いてみる。
「ないわよ。......っていうか、あなた食べてもいいの? ドクターに許可取ってる?」
厳しい目。
「ちょっと待って、食べていいかどうか、確かめるわ」
私のデータを見つけて、
「ああ、CT終わったとこなのね。じゃあ、フラフラ歩き回らないで、そのまま座っててちょうだい」
......。
トボトボとまた待合室に戻る。
待合室といっても、大部屋の一角に椅子が並べられているだけで、そこ以外はカーテンで区切られたベッドが整然と置かれているだけ。
だから、カーテン越しに隣のベッドの女性が、病気になってからどんなに辛い生活なのかを延々話しているのが、まる聞こえ。
そんな中、さっきのドクターがやってきた。
「CTの結果は異常なしだっから、心臓の異常は、この風邪のせいかもしれないし、生まれつきあなたが持っていたものかもしれない。だから、もう一度心電図をとって、さらにもっと詳しい血液検査をしなくてはならない。そして、念の為、心臓のエコーも後日撮りましょう」と、待合室で他の全患者さんに晒されながら、教えてくれた。
さっきは、「プライバシーが」って、他に移ってくれたのに、今回の会話の方がよほどプライバシー気にした方がいい気がするんだけど。
しかし、この時点で空腹と疲れで、わりとどうでも良くなっていた。
結局、全部の工程を終えて帰った時、やっぱり7時間が経過してた。
次の日になると、風邪が辛いのに、考えるのは心臓のこと。
一週間以内にエコーの予約について連絡がくるっていってたけど、このスピード感は、やっぱりただごとじゃないんだろうか?
なんて思ってたら、かかりつけの先生のオフィスから、電話での診察のアポイントを入れろと連絡が入った。
頼んでもないのに何これ?
エコーもまだ撮ってないのに?
ひょっとして、私に伝えないだけで、やっぱり重篤な何かが見つかってるのか?
ビビりながら、2日後の予約をとる。
さらに、前回の病院から電話が入る。
「エコーのキャンセルが入ったから、明日来れるか?」
ひー。
何この、カナダの医療機関と思えない迅速対応。
恐怖が倍増。
次の日、両足首に1トンの鉄球つけられたみたいな気分で、エコーに向かう。
技術者のお姉さんに言われるがままに、腕をあげたり、横向いたり。
なんとか、明るい雰囲気に持ってこうとするも、姉さん、硬い表情でモニターを凝視して、手元のキーボードをカチャカチャし続ける。
「どうしてエコーすることになったんですか?」
しどろもどろで、そもそも風邪で罹ったら、心電図で異変があったから、みたいですと返す私。
シーン。
やっぱり何もいってくれないまま、終了。
一週間くらいで結果を知らせる電話が入るから、と伝えられて、やっぱり鉄球を引きずりながら、トボトボと家路につく。
ここのとこ風邪だし、心臓がどうのこうの言われてから、食事も野菜多めにしたりなんかして、些細な抵抗をしたりして。
結果まで一週間か、なげーなー。
そして次の日、かかりつけの先生からの電話をじっと待つ。
かかってきた。
「ハロー。なんか、色々大変みたいだったわね」
「あ、はい」
「まあ、検査の結果も何もないみたいだし、風邪のせいかもしれないわね。まあ、念の為に2、3週間後に血液検査だけやってくれる? 書類送るから、近くのラボでやってね」
「??? いや、ちょ、ちょっと待ってください。あの、エコーの検査の結果に一週間くらいかかるって」
「あ、エコーの結果ももうきたわよ。問題なしだって〜」
......。
1トンの鉄球がはるか彼方に飛んで行った。
なんか、嬉しいやら、ほっとしたやらで、何か、美味しいものでも食べてお祝いしよう!と思いつき、いろいろ考えた挙句、日本から持ってきてた、とっておきのカップラーメンを食べた。
ずっと、体に優しい系の食事だった反動かもしれないけど、ジャンクな味が何とも、不健康でうまい。
つーか、結局、風邪に関しては市販薬で治せってことで、無理して病院行ったのは、よかったのか、無駄だったのか、判断がイマイチ難しい。
しかも後で判明したんだけど、体温計が壊れてた。
そもそもこの時、平熱だった可能性が大......。
何なんだよ、まったく。
〜終わり