見出し画像

ミセスフィクションズのファッションウィーク の感想

(会場:駅前劇場)
ショーケース番長Mrs.fictionsによる3団体によるショーケース。15 Minutes Madeシリーズと違い今回はファッションをテーマにした3作でまとめられている
上演作品すべてが傑作というとんでもない当たり企画。 

チケットが洋服のタグのようなデザインで、お洒落。
舞台には大量のハンガーにかかった服が左右に並び洋服屋のような状態そんな中、音楽が流れ男女二人が登場。Tシャツを着ていて後ろを向くとそこには劇団名とタイトルが

なかないで、毒きのこちゃん『ハオちゃんは、デートです。』
作・演出/鳥川ささみ

初デートに何を着ていくか、悩みすぎて少女は右往左往。脳内では乙女心、羞恥心、子供心、探求心などいろんな感情があーだこーだ会議をしまくって、服装は決まらない。
いわゆる、インサイドヘッドもの。個性豊かな女優陣が様々な感情を演じて侃侃諤諤の大論争。漫画的アイデアをノンストップで、そこに役者の個性や演劇ならではの演出を注入し愛嬌たっぷり。左右の洋服列に出たり入ったり、服の中から様子をのぞき見したり。大人数が目まぐるしく入れ替わるスピーディーな演出。
途中でそれぞれの考える理想のデート展開の妄想シーンが入るがそれぞれの感情が前面に押し出され、次の妄想はどんなことになるのかで予測不能でワクワクが止まらない。この時、観客は細胞でその細胞たちに自分たちの理想のデートプランを見てもらうという、劇場でのお遊びでくすぐり。服選ぶだけでこんなに面白いとは。
しかし、自信がなくて不安だからこそ、前に進めない青春の苦しみを描く。だからこその爽やかなエンディング。
ラストの、すべての感情の意見が一つになった服装になるシーン何て最終回で主人公たちが合体技を放つくらいの感動があった。はにかみながら待ち合わせ場所に現れた主人公の光る輝き。

登場人物全員が楽しく服屋にいると冒頭の男女が現れ、交流し皆とバイバイする。残った男女は後ろを向く。背中には

日本のラジオ『浴室にて改』
作・演出/屋代秀樹
酔っ払いの家にお邪魔することになった旅人たち。旅の話を聞かせるが、そこに見知らぬ女。自分こそがこの家の主人だと言い張り始め。
脱臼したナンセンスから不穏が滲み出る不条理コメディ。そもそもその旅人たちも場合によっては棒で人をたたき強盗を働くことも辞さないような異様な価値観を持った男女。たまたま相手が泥酔していて気前がよかったので何もしていないだけでチャンスがあれば殴る、棒で。淡々としている中に独自の言語リズムを挿入。不思議な反復で、耳からもイマジネーションの世界に入り込ませる。
やがて明かされる酔っぱらいの正体、人間を操るディストピアにまで進展しSFホラーのような展開。どろどろになった人体というグロいイマジネーションなのに、なんでか全員のほほんとしている。1から10まで頭のねじが外れている。おかしみ溢れる怪作

全員がマネキンのように固まると男女が現れ片づけを始める。舞台が空っぽになると男女は後ろを向く。背中には

Mrs.fictions『およそ一兆度の恋人たちへ』
作・演出:中嶋康太

女子大生はウルトラマンオタクの彼氏のため円谷プロの面接を受けるが、なんと合格。彼氏に喜んでもらえると日々業務に励むが。
ウルトラマン愛溢れる(?)ロマコメ。 パロディたっぷりで、ウルトラマン話に頷いたり(プラチク星人良いよね)、彼女が作る大人女子向けとしてプラダとコラボした「ウルトラマンPRADA」。なんとそれがトントン拍子で制作されてしまう。
間で挟まれる劇中劇がツッコミどころだらけの恋愛設定に唐突に怪獣要素が含まれる馬鹿馬鹿しさ。更に、ウルトラマンのオープニング影絵の全力パロディ。主題歌流れるだけでオタクはテンション上がる。そしてついに登場するウルトラマンPRADA(シュッとしたティガダークみたいな見た目、訴えられないか大丈夫?)ド派手で視覚的な面白さ沢山。
が、徐々にこの劇団特有の苦味が現れる。舞台がウルトラマンのレギュラー放送がなかった2011年。つまりウルトラの人気が下火になっていた時代。ウルトラマンは、硬派なSFコンテンツであるべきだという彼氏の願いに反して、商業主義に走り捻じ曲げられていくウルトラマンPRADA。彼女は恋人に喜んでもらいたい一心で奮闘するがすればするほど彼氏の心は砕かれていく。私が「ウルトラセブン」のようなSF路線が好きでのちのウルトラ兄弟としてコンテンツ化してしまったウルトラマンに微妙な心情を持っている人間なので、言いたいことわかるし、でもウルトラマンはオタク向け特撮ではなく外に広げないといけないという彼女側の心情もわかる。
ラスト、それまであった左右の大量の服が片付けられていく。がらんどうになった部屋で、地元へ帰る決心をした彼氏は言う。
お前はゼットンだった。
一兆度の火球でウルトラマンを倒してしまった最強の怪獣。彼女の行動がウルトラマンというコンテンツの魅力、そしてカップルの未来を殺してしまった、タイトルの使い方が上手すぎ!痺れるんだけど。

3団体ともコメディだが、ドタバタ、ナンセンス、特撮オマージュ満載のロマコメと個性豊か。服屋のような舞台美術の使い方も三者三様。
その中でもにベストは毒きのこちゃんだけど、ナンセンス好きとしてラジオはいいショーケースにしてくれてありがとうって感じだし、ウルトラ好きとしてはミセスに心打たれた(因みに私はプリズ魔が一番好き)。

なお、タイトルTシャツを着ていた女性こと舞台監督の水沢桃花(箱馬研究所)さんが、Tシャツの写真を上げていたので転載。これを音楽と照明がバチバチに決まる中現れてんだから超カッコよかった。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集