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ガチゲキ!! 復活前年祭(伏線編) の感想

(会場:アトリエ春風舎)
共通のテーマで作品を提出するコンペ形式のフェスティバル。10年ぶりの開催となるが、これは2026年の本格復活に備えての前年祭。
なので今回はコンペ形式ではないが、これはこれで特殊な形式での上演。
月9をテーマに3劇団が長編のイントロにあたる短編を伏線偏としてショーケース上演し、翌週から本編にあたるネタバレ編を上演すると言う企画。試食してから本公演を見れる。

なお、公社はネタバレ編の観劇が台風によって吹き飛んでしまったので伏線偏のみの感想を書く。観劇の日に台風来なくたってもいいじゃない。


劇団だるめしあん「ラブイデオロギーは突然に」
作・演出/坂本鈴

 デビュー作がケータイ小説のドラマ化だった脚本家。彼女は原作のトンデモ展開をYoutubeで面白おかしく喋るが、原作者にとっては不愉快で。
 本編は脚本家と原作者がケータイ小説の世界に転生する内容だが、今回は入る前のエピソード0といった形。 ケータイ小説のパロディをし、次々起こる怒涛の悲劇をツッコミなから解説する。ケータイ小説あるある(ちゃんと読んだことはないけれど)を詰め込みやりすぎなくらいの展開に面白がる。
 しかし、その後にちゃんとそれが支持される理由も描かれる。ケータイ小説はネタにされがちだが、時代の遺物ではなく今でも高い人気を誇っており、それを楽しむ少女たちの気持ちを代弁。
 解説と作中作が交互に切り替わるが、空気感の切り替わりをスムーズにやっていて、スピーディーに ユーモアを仕込む。
 なお、伏線偏のみの登場人物がいるので、前半30分というより本当にエピソード0として独立した短編だったのかしら。



くによし組「重い愛」
作・演出/國吉咲貴

 産んだ赤ん坊はありえない重さで日に日に重くなる。夫は口ばかりで手伝ってくれない、知人は様子もおかしくて、女は悩まされる
 重苦しい不条理。出口がどこにもなく息詰まるようだが、きちんとユーモアを入れて風通し。知人がする不審な行動は、面白みと同時に逆にどうしてこの男に助けを求めたのかと。女も女で精神が追い詰められていき、日常がどんどん崩れていく。不条理不気味で包まれているが、その中心は子育てを誰も助けてくれない苦しみ。人間離れした重さで持ち上げることもできない。
 異常な状況下で一番力にならないといけない夫はこんな状況にもかかわらずのらりくらり。
 舞台の中心に、ベビーベッドが置かれ登場人物はそこをのぞき込む。観客からは赤ん坊を見えない形。イマジネーションで得体の知れない不気味がどんどん増幅する。あの中にはいったい何がいるのか。
 ラストの、マンションの床がついに赤ん坊の重さに限界を迎える。絶望的なカタストロフィ。短編として成立しているがこの後どう続いたのか。
でもこれ月9かなぁ?どちらかと言うと土9(世にも奇妙な物語は土曜9時に放送されてる)

松森モヘーの小竹向原ボンバーズ「熱海占い学園伝説からくり人形殺人温泉」
作・演出/松森モヘー
 少女は超能力者と出会い交流の末に消されてしまう。母親は少女を探し続ける。松森モヘーは、タイトルを先につけてしまったせいで月9というテーマと折り合いつかず悩み、更に春風舎が大声禁止なのでギリギリを試す。
 得意技である、松森モヘーをギミックに取り入れたメタ芝居が久々に復活。高速でのせりふ回しで絶叫次々と、タイトルと特に意味がないような
ナンセンス展開続々で、そこの裏にどうすればこれを月9にできんだよというモヘーさんの苦悩が見えてくる、ような。
ショーケースという土台で兎に角やりたい放題。俺は今何を見てるんだ!が、何度もやってくる。 ハイテンポで台詞が飛び交いシーンは切り替わり、劇と作者がアクロバットの錐揉み飛行。
それでいて、空間における役者の立ち位置で面白味を作り上げる

だるめしあん→くによし→モヘーと進むごとに物語の狂い度合いが上がっていく構造がおもろ。ちゃんと月9というテーマに挑んでいるのが、だるめしあんだけなのはご愛敬。
知らない劇団の公演を3000円以上2時間程度捧げるのはこの時代にはギャンブル過ぎる。そんなときに。長編の冒頭だけ見れたら安心でしょというこの企画はとてもいい。

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