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若手演劇人三冠2025(若手演出家、かながわパフォーミング、せんがわ劇場)
若手演劇人三冠とは、若手演劇人が取るべき登竜門的3つの賞
若手演出家コンクール
かながわパフォーミングアーツアワード
せんがわ劇場演劇コンクール
のことである。
東京圏の賞だが全国の劇団が対象であり、上演主体のコンテストで戯曲賞でもお題の戯曲があるわけでも、無名有名バイアスもかからない。そんな賞がこの三つ。
文学賞とかスポーツとか映画にはあるのに演劇には三冠がないから私が勝手に呼び始めた。今年のファイナリストが全て決まったので紹介。
去年の
若手演出家コンクール
2/25~3/2(会場:「劇」小劇場)
三冠の中で最も歴史のある賞。メジャーどころから外れた人選をすることが多いが今回もそういったラインナップ。
● 申大樹(深海洋燈)『野ばら』
つかこうへいやチャップリンなどを上演しておりテント芝居も行っている。今回は小川未明が原作。国は違うが友人同士の老兵と青年兵が母国同士の戦争によって引き裂かれる物語。
● 平田純哉(不条理コントユニットMELT)『赤砂』
作りこんだSFコントで人気上昇中のユニット。火星にリゾート地を作る男と、開発に反対する男。何かが発見された時、全てが変わり人が死ぬ。密星劇サスペンスコメディ。
● 深海哲哉(グンジョーブタイ)『書込み訴え』
芥川龍之介・イプセンから、本谷由希子・横山拓也まで幅広い戯曲を上演する団体。名作専門かと思いきやイマーシブシアターもやっていて手広い。今回は歴代チャンピオンの一人、亀尾佳宏(劇団一級河川)書き下ろし新作で勝負。
● 武田宜裕(INAGO-DX)『着かず離れず』
四国、中国ブロックと2地域の劇王になった男優だらけのユニット。短編の名手だが勿論長編も多数上演し、ゾンビものから家族ドラマまで幅広い作風だが、今回はどんな作品で挑むのか。
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今回はなんと東京(申、平田)vs広島(深海、武田)という二都市抗争の図となっている。また作・演出 VS 純粋演出家という構図でもある。まぁ小説原作を戯曲に脚色している作品もあるので完全な純粋演出家という訳ではないんだけど。
一次審査突破者は上記4人に加え
●青沼リョウスケ(劇想からまわりえっちゃん) ●菊池敏弘(Mido Labo) ●芝原れいち(劇団イン・ノート) ●高山康平 ●山本タカ(くちびるの会) ●吉野翼。
で、吉野がファイナリスト次点だった。
かながわパフォーミングアーツアワード
3/16〜17(会場:KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ)
アート寄りの人選だったが改名後パフォーミングアーツ全体を対象にしたことによって、よりほかの2賞よりアーティスティックになりダンス方面にも拡大(横浜エリアでダンスコンペのヨコハマ・コンペティションがある影響か?)。
このコンクールの特色である高校演劇枠では7校による選抜大会を勝ち抜いた2校が登場。
日々輝学園高等学校横浜校演劇部(3/16)
心踊るさん(神奈川県立大和高等学校創作舞踊部)(3/17)の2校が選出。前座という形で、今後の演劇界を支える才能たちが初めて出会う観客の前で上演。
そして、本選では
● 抗原劇場 Allergen Theatre
せんがわ劇場演劇コンクールファイナリストにして持続可能な演劇づくりをする団体が新作で勝負。
● エンニュイ『きく version PAA』
会話劇を再構築する団体。今回3回目のファイナリストだが2度目の際は、コロナで辞退せざるを得なかった。その際の上演予定作にし、てこりっち舞台芸術まつり優勝作でリベンジ。
● SR/Yuria Onishi「mooR」
大西シャラまりこ、梅田宏明に師事しダンスコンペにも出場する、ダンサー大西優里亜のプロジェクト。一室の部屋を巡る男女5人と客席に座る皆様を描く、再演を繰り返す代表作。
● 一般社団法人ハイドロブラスト「ケアと演技」
映画監督・太田信吾、俳優・プロデューサー竹中香子による芸術団体。竹中は昨年せんがわの審査員で今度はファイナリストとして三冠登場。介護福祉施設に滞在した経験から発想した演技とケアのパフォーマンス。
● Chapter
調べたけどどこのだれか何の情報がないのでHPにプロフィールを乗せてください。かながわは三冠の中で一番HPの情報量が少ない。
● 金子美月「割った」
笠井叡率いる天使館所属のダンサーが、自主公演として行った群舞を再編集 。割ったか割らなかったかを巡るダンス。
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ダンサー2,パフォーミングアーツ1、演劇2、何処の誰かちゃんとプロフィール載せてくれて1というラインナップで、方向性の転換がうまくいっているラインナップかと思う。あとせんがわのファイナリスト、一次審査突破、審査員経験が一組ずつで面白い繋がり。
せんがわ劇場演劇コンクール
5/24~25(会場:せんがわ劇場演劇コンクール)
三冠の中で最もノンジャンル色の強いコンクール。一次審査突破のセミファイナリスト13団体のレベルが高くどこが通ってもおかしくない。何故13団体全部の作品を知っているか。何故ならそう、私は一次審査員。でファイナリスト決める二次審査には無関係なので、このメンツを見てなるほどそう来たかぁと唸った
● お寿司「おすしえジプト」
舞台衣装作家によるユニット。異次元の生き物のような衣装とイマジネーションを刺激する独自の芸術世界。今回は蘇りの国へ行くため母娘でミイラづくりをする物語。
● 劇団不労社「サイキック・サイファー」
作りこまれた脚本による悪夢のような人間模様で高い評価を獲得、昨年の若手演出家コンクールに続き三冠2回目の登場、演劇人コンクール2024のチャンピオンになり勢いに乗る。今回は世の中のありとあらゆるものにメッセージを見出す人物と夜中に騒ぐ集団の物語。
● 7度「いつか来る、わたしの埋葬のためのレクチャー」
戯曲を拡張する解釈によって生み出される演出で利賀演出家コンクール優秀賞受賞。古典・名作専門の純粋演出家だったが今回は劇団員である女優山口真由による新作戯曲で上演。お墓を作るという行為を巡る物語のよう。
● よた「曖昧な朝、海に向かって」
2023年結成、わずか2年でファイナリストの新星。現代生活での感性を瑞々しく描く。町で起こる様々な悲劇、それと自分の距離について描く物語のよう。
● 老若男女未来学園「もういい、俺は死後評価されるタイプの芸術家で」
人間ドラマと映像やロボットといったテクノロジーを融合させる劇団。かながわで2年連続ファイナリストの後、観客賞受賞。そして2冠目に挑む。自分がどうなるか分からない、他人が分かり合うことなんてできないはずだというの描くらしい。
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今回は、東京(7度、よた)VS 京都(お寿司、劇団不労社) VS愛知(老若男女未来学園)という演劇都市による三国志。特に京都勢はU35支援企画KIPPUに選出された2団体でまごうことなき京都の若手劇団 2TOPの襲来。それを迎え撃つ東京愛知の実力派と新星。
なお、ファイナリストへあと一歩だった一次審査通過団体はどれも面白い団体なので彼らも要チェック
●アオガネの杜 ●エンニュイ ●D地区 ●人間の条件
●はちみつ ●マミアナ ●マリアッチ ●令和座
という、感じ
最後に現段階の優勝予想すると
● 若手 平田純哉(不条理コントユニットMELT)
● かながわ 一般社団法人ハイドロブラスト
● せんがわ お寿司
若手は技術評価ではあるのでイマジネーション重視は評価低い(すこやかクラブ、伏木啓とか)。が、意外とオーソドックな人たちは次点までは届くのだが優勝までは行かないことがある。ということでそのバランス取れている人が優勝すると考えると、4人の傾向を見るとここかなぁと。
かながわは去年がダンサー(神田 初音ファレル)が優勝したのでダンサー二組が有力だと思うが唯一演劇ともダンスともくくれないパフォーミングアーツをやりそうなハイドロブラストが評価されると予想。
せんがわは瞬間最大風速が一番強いお寿司を予想。ただイマジネーションの世界なので審査員にどこまで伝わるか、爆発した時は一番強いんだけど。安定感で言うならば不労社が常に高得点をたたき出すので。鉄板予想するならここ。後、公社の私設演劇賞である公社流体力学賞2024の受賞者なので贔屓したい思いがあるが、お寿司も好きなので公社困っちゃう。
事前予想は外れることが多く、せんがわは驚きの5連敗。まぁ評判だけの予想はお遊びなので上演を見た後の予想を当てればいい。
若手は2勝3敗。まぁ今年当てればトントンになるので。
せんがわは1勝3敗。おい!(しかも、去年当たるまでは0勝3敗だった。なお最初の1敗はルサンチカ優勝予想して自分が優勝するという目も当てられない予想敗北っぷり。)
ということで、コンクールなんてもんは本番になってもどう動くかよくわからないので予想というのはお遊びが大変興味深くなる。
皆も気軽に予想して、自分の知らない劇団も積極的に興味を持って素敵な観劇ライフを楽しんでください。