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公社流体力学賞2024(演劇、年間ベスト)

公社流体力学が自分の好きな演劇が何の賞にも挙がらないので、じゃあ自分が賞を上げるしかないと立ち上げた。公社流体力学が一人で褒めたたえる演劇賞。
受賞者には賞金5248円(コウシヤ円)を上げます。そしてリーディングをします。許可が下りれば。
去年の

ゴキブリコンビナート、東京にこにこちゃん、幻灯劇場、やみ・あがりシアター、令和座、に続く第6回受賞劇団は何処か。
まずは候補作5本から上演順に。



● TeXi‘s『ファジー「theirs」』(候補 2年連続2回目)
6/9~16
作・演出/テヅカアヤノ【会場:アトリエ春風舎】
男女二元論の加害性を考察した三部作の第一部。男性の加害性から家父長制の解体を抽象性とメッセージ性を混ぜ込んで上演。春風舎の横に広い空間を使い、走り、家を模した白いフレームが目の前でダイナミックに動き解体。一秒も止まらない怒涛の空間演出。尚、三部作で一作品カウントしようかと思ったが作品自体は単独で観れるので独立した作品として候補入り。



● 劇団不労社『悪態Q』
(初候補)
9/6~8
脚本/西田悠哉×永淵大河、演出/西田悠哉【会場:BUoY】
空間へのあて書きをテーマにしたシリーズの新作としてBUoYのコンクリート空間の冷徹な質感を照明で引き出し、ホラー、不条理SF、ロマンスと様々な表現を描き出すオムニバス。まさにBUoYでしか作れない空間を作り出していてこんなにコンクリートの似合う演劇はない。短編集だが、4作品で見事な一まとまりになっているため、長編扱いで候補入り。



● ひなたごっこ『みちなる』
(初候補)
9/11~15
作・演出/松森モヘー【会場:元映画館】
上演中止となった演劇を大学生たちによって再現する。それは作・演出していた人がいなくなってしまったので急遽作ろうとしたら迷走してしまった作品で。
現役大学生によるユニットだが、旗揚げ公演を松森モヘーに依頼。今年松森は8本の作品を作ったが今年度の最高傑作。ナンセンスな演劇が断片のように流れ込む。学生たちの練習風景映像と目の前の上演がオーバーラップ。その中で彼らの生活も挟み込まれる。生演奏でたま・知久楽曲を挿入。終盤になって何故この曲なのか分かると途端に深い悲しみ。演劇界の呪術師が学生たちと共にたどり着いたポップアート


● 謎音研究所『謎音-水底から鳴る鐘』(初候補)
10/2~6
作/植村真 演出/植村真、増田義基【会場:墨田区向島地区市街】
存在しないはずの鐘の音を聞いた男が失踪した。家族から依頼された研究所は町中で調査をする。
観客はスマホとワイヤレスイヤホンを使い町中に隠された指示に従い一人で進んでいく。指示は参加者でなければ気づかないように水道や掲示板、お店の看板に擬態しており町に秘密の指令が隠されているというシチュエーションに加えどんどん自分が野外で怪奇現象に巻き込まれていく展開。誰でもラノベ主人公になれる。



●令和座『覚醒 -Awakening-』
(2年連続2回目)
11/27~12/1
作・演出/浅間伸一郎【会場:ときわ座】
引きこもりの兄と家の売却を話しをするため訪れた妹。しかし物言わぬ兄の真意は掴めず、様子を見に来た叔父とも軋轢が見えてきて。
昨年の覇者が2年連続で傑作を作った。今回はときわ座最高傑作として名高い。2階建ての民家という特性を生かしてあえて客席から見え名2階奥の廊下で話を信仰することによって、声だけでなく足音、些細な物音にすら深い意味付けをして言葉で語るよりも饒舌に観客の想像力を引き立てる。この家の異常性に気づいた時にはもう戻れない。なんとも恐ろしい家に迷い込んでしまった混沌の地獄劇。




なお、惜しくも候補から漏れた次点としてしては
B子「精神明晰サバナに没す」「さんぽハイ」「日めくりカレンダーAタイプ読み聞かせ」「日めくりカレンダーBタイプ読み聞かせ」(12時間連続上演)
老若男女未来学園『球(kyu)』
ド・パールシム『斜陽族』
盛夏火『熱病夢見舞』
いいへんじ『友達じゃない』
南極ゴジラ『(あたらしい)ジュラシックパーク』

で、非常にクオリティの高い年だった。若い劇団も有力どころが台頭し、今が小劇場演劇の黄金期(だといいなぁ)。
あと、これを書いている最中に無料公開なので観ていたこたけ正義感の『弁論』は、現役弁護士芸人の面白エピソードトークからやがてあの冤罪事件に話が飛躍する作品で、一人舞台として非常にレベルが高く漫談だがきちんと伏線を配置しこの国の司法の歪みを浮かび上がらせる全力の風刺。一人芝居やる人は見た方がいい

なお、私が主催している演劇クロスレビューでは2024年の若手劇団最前線を書いているのでこちらも要チェック。この2記事を読めば公社支店の最前線が分かります。

さて、好調だったのは何も長編だけでない。短編も非常に豊作。ということで先にやります短編部門。短編作品は3000円 贈呈
(TANPENN→ANPENN→SANNENN→SANNZENN→3000)です。こちらはランキング形式で。

第5位 柿澤大翔(踊れないのに、) 椅子に座るだけのパフォーマンス
作・演出/柿澤大翔「Hi-Fi Poets」
演劇界のツチノコと呼んでいる奇想演劇人はただ椅子を座るだけのパフォーマンス。でもそれだけじゃつまらないので自分の子供時代を語るがそれがやがてなぜ彼が今椅子を座っているかに繋がり、最終的に観客全員が柿澤の死を祈らないといけなくなる異様な展開へ持ち込む。ミニマルで異常。


第4位 Mrs.fictions『およそ一兆度の恋人たちへ』
作・演出:中嶋康太「ミセスフィクションズのファッションウィーク」
ウルトラマンオタクの彼を持つ女子大生は彼氏を喜ばせようと円谷プロの入社試験を受けたら見事合格。ウルトラマンの企画を主導するがそれが彼との間に軋轢を生んでしまう。
ウルトラマン愛に溢れトホホなギャグシーンも挟み込まれ笑いをどんどん取るが、やがてどうしようもなくなってしまう恋の話を描く。タイトルの意味が兎に角うまい。流石ショーケース番長。


ここから3位なのだが正直優劣がない。同率1位と言えるのだがお手々繋いで一等賞が嫌いなので順位をつける。同じくらい面白いのであれば評価軸は私がリーディングをしたい度だ。


第3位 なかないで、毒きのこちゃん『ハオちゃんは、デートです。』
作・演出/鳥川ささみ「ミセスフィクションズのファッションウィーク」
初デート当日。着ていく服に迷う。彼女の脳内では彼女のいろんな感情が喧々諤々の大論争。
テンポのいいコミカルな言い争いに、脳内会議という設定ならではのユニークな演出が次々連発。ただ服を選ぶだけなのにどうしてここまでドラマティックに作り上げられるのか。


第2位 三点倒立『(なみだ)』
作・演出/狩野瑞樹「王子小劇場『見本市』」
友人たちからの話であの日泣いた夜を回想する。
現代口語演劇なのだが、語り手と聞き手と回想が入り乱れていってユーモラス。気づけば時空間も飛び越してしまって一体彼女は今どこにいるのか。一体あの夜何が起こったのか。これこそ演劇というべきギミックを使いながらもそこにあったのは、もう取り戻せない時間。

これらを押さえて見事1位に輝いた短編演劇は
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第1位 B子『チェリー問屋でバナナスマッシュ』
作・演出/B子「Hi-Fi Poets」
フルーツの名前が名付けられた断片が繰り広げられる。やがてその断片が一つになった時現れるのは、果物で人にポイントが付く世界。
今年の1位はオルタナティブ一人芝居B子。脳内をそのまま上演したかのような奇想天外な作品で知られるが今回はよりその奔放なイマジネーションが爆発した作。断片形式の演劇は割と人気がある形式で誰でもある程度の作を作れるが、その代わり大成功が難しい。しかしこの作品は断片の持つ答えのなさとB子のナンセンスの相性の良さが抜群。
言葉で表現できないまさに奇想演劇。

という訳で、短編1位はB子でした。
トップ5を見ると、「Hi-Fi Poets」と「ファッションウィーク」上演作が2作ずつの選出。勿論短編集やコンクールで優れていた作品はあって意図的に上演イベントを散らかそうと思えば散らかせるのだが、完全に自分の好みドンピシャのショーケースだったのがこの2イベントだったので普通に好きな順で並べた結果こうなった。

さて、公社は空間インスタレーションも演劇である論を唱えておりそういう意味では演劇的な展覧会が多かった。
行方不明展
は、フェイクドキュメンタリーの作り手による展覧会で展示されるものはどれも行方不明に関するものだがただ人が消えるというだけでなく存在しない場所だとか行方不明になりたっかた人の手紙。行方不明になる方法、誰かがいたはずだがその記憶が消えてしまうという行方不明など様々な物証が現れやがて、一つの答えが見えてくる。ちゃんと一筋の流れで展示されている。これは演劇だ。

内藤礼 『生まれておいで 生きておいでRei Naito: come and live – go and live』はメゾンエルメスで開催されたが最後の展示が演劇だった。展示を見ていると最後の作品はキャプションはあるが作品は何処にもない。なので近くにいた係員にあの作品は何処にあるんですかと聞くと、ポケットから取り出した。
これは観客から聞かれたときはじめて姿を現す作品。聞かなければ一生気づかないけど、気づいた人は体験できる。この流れ、体験こそ演劇じゃないか。
日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクションは、東京都現代美術館で行われた日本最大級の現代アートの個人コレクションの展覧会。他の展覧会でも見たことのある各作家の代表作が見れるお買い得な展覧会でまぁ演劇要素はないんだけど、
私にとって小谷元彦Phantom limb」(5枚組の写真作品)は初期の作風である“少女と残酷性”に強い影響を与えた作品であり高校生以来十数年ぶりに見れて良かった。
なお、新年一発目本公演はその“少女と残酷” 時代のお蔵入り作品を上演するのでよろしく。【宣伝】

とまぁ、そんな訳でいよいよ決めようじゃないか。

メッセージを込めた空間芸術TeXi’sか、
コンクリートの冷徹さを浮かび上がらせるオムニバス劇団不労社か、
祝祭的ポップアートひなたごっこか、
体験するホラー系ラノベ謎音研究所か、
音で想像力を掻き立てる演劇で2連覇を目指す令和座か、


今年の一位は
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          劇団不労社『悪態Q』

です。
京都の団体が受賞するのは幻灯劇場以来2団体目。
この空間でしかできない作品=空間の魅力を完璧に引き出した作品で正直圧倒的だった。

見事公社流体力学賞を受賞した2団体には賞金を差し上げます。

そして授賞式をします。
1/25(会場:兎亭)
料金1500円
18時開演(会場17時30分)
賞金を受賞者様に差し上げます。そしてリーディング。
あなたが見逃した傑作をたった一人で再現。私がステゴロで悪戦苦闘で上演。
予約

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