36. いつ気づくか

お腹がすいて会社帰りに駅ビルのパスタ店に入った。時間的にだいぶ選択肢が狭まっていた。

ディナーセットを選択した。パスタを一覧から選び、サラダとドリンクをつけてもらうことにした。

パスタを選んでいる際に、ペスカトーレにはもれなくエビがついていることを知る。ペスカトーレは魚介のパスタらしいのだが、ここでの魚介はだいたいエビとイカである。
自分はエビアレルギーなので、いくらそれが美味しそうでも食べることはできない。
2019年3月に急に「貴方はエビアレルギーです」と言われてから、エビが食べられない生活が始まった。
最初はショックであったが、だんだんこの生活にも慣れてくるのである。

そしてサラダとドリンクが運ばれてきた。

店員さんが颯爽と去っていったが、テーブルの上に置かれているはずのフォークとスプーンのセットがない。
自分が通された席のすぐ近くにある作業台に、複数セットが置かれていた。
しかし、それを自分で取りに行くのはお行儀が悪いというものだ。
何よりも、お店としては(アルコール消毒はしていても)ばっちい手で触られたくないであろう。

いずれにしてもパスタが来る時に言えば良いや、と思いながら、ストローを袋から取り出しグラスに差してゆったりとオレンジジュースを頂いた。

さて、いつ気づくだろう。

そしてパスタがやってきた。パスタを運びにきた店員さんが我がテーブルの上を見て、ピタっと動きを止めた。作業台からフォークとスプーンのセットを取り、

「大変失礼いたしましたッ!」

と元気よく丁重に言われた。自分としては別に構わなかったので、

「ああ、良いんですよ、大丈夫です」

と笑顔で応対。
その後、空いたサラダのお皿を取りにきた店員さんからもお詫びの言葉をかけられた。

でも、世の中には色々とうるさいお客さんもいるんだろうな、と思いながらパスタをモサモサといただいた。

自分の感情だけで周りを嫌な気分にさせることほどくだらないことはないと思っていること、そして単純に、怒るとエネルギーを使うので自分の人生の中でほとんど怒ったことはないのだった。

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