亡き人がこの世に戻るとき
うちのコーギー犬。
最近、ときどき亡き父の顔をする。
シゲミさん?って聞いても何も答えない。
きっと、人間の記憶を無くしてるんだろうな。
どうしても、戻らなきゃならないとき、人間の時の記憶と引き換えにするのじゃないかな。人魚姫の声のように。
母が、肺がんの手術のあと、うちに来たときにずっとそばから離れなかった。リハビリにボール遊びをして、笑わせていた。
令和天皇の即位の時間に来た犬。
母の術後の回復のために、来たのじゃないだろうか。父がなんとかしたくて、神様にたのんだんじゃないかな。
シゲミさん?て聞いても、知らんぷりなのは、この世の記憶と引き換えに、来たから。
だから、もう父では無い。でも、そばにいたいという気持ちだけが辛うじて残っている。
きっと、ほんとは、生きてた時の大事な記憶とともに天国で過ごせるのに、こちらにどうしても来たい時は、その大事な記憶と引き換えに来るの。
もしかしたら、全部無くなっちゃうかもしれないのに。それでも、来なきゃ行けなくて、大事な記憶と引き換えに。
ときどき、犬の身体を借りてるね。他にも行かなきゃならないところいっぱいあるから。
蝶々のときもトンボの時もある。人間のときの記憶は無いけど、ただそばにいたい気持ちだけ残ってる。
いつか、大事な記憶がなくなっちゃったら宇宙の粒子になって、また宇宙を作るもとになっていく。
この世でいっぱい、大事な記憶を作れば作るほど、大事な人の元に戻ってこれるのだよ。
だから、生きてる私たちは、いっぱい大事な素敵な記憶を作ろう。
そして、周りにふと寄り添ってくるあらゆる生き物たちが、もしかして、亡き人たちが寄り添ってくれてるかもと感謝しよう。きっと、それが幸せにつながると思う。
愛する人が、この世を去っても、きっと、そばに来てくれてますね。
命日の8月がやってきた。父の持ってきた木槿の花が満開になる。あの日も満開だった。
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