【After the Gold Rush】(1970) Neil Young 名曲、名演が詰まった代表作3rdアルバム
Buffalo Springfield時代からの盟友だったニール・ヤングとスティーヴン・スティルス。私はこの2人ならスティーヴン・スティルスの方が好きです。
ニール・ヤングって野性的な風貌の割に声がか細いくて何だか貧弱。あの痙攣を起こしたようなギタープレイも味といえば味ですが、ちょっと暑苦しいんですよね。その点、スティーヴンは男前だし(薄毛だけど)、声も渋くてギターも達者!
でも、スティーヴンがニールに敵わなかったと私が思うのが、曲作りのセンスです。上手く言えないのですが、ニール・ヤングの曲って親しみやすいのにホロっと切なくなるようなフックがあるんですよね。沢山のシンガーにカバーされたのはその証拠だと思います。
ニール・ヤングのソロ3作目となる本作【アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ】。楽曲の素晴らしさならば、先ず思い浮かぶ代表作ではないでしょうか。
(アナログレコード探訪)
〜ワーナー8000番台の日本初回盤〜
本作の日本初回盤です。ニール・ヤングの作品(リプリーズ)は2ndが本邦初登場で、発売は日本ビクター。本作から配給先がワーナー・ブラザーズ・パイオニアに変更しています。
ワーナー・ブラザーズ・パイオニアは、米国ワーナー・ブラザーズが50%、パイオニアが25%、渡辺プロダクションが25%を出資して作られた合弁会社で、1970年に設立。最初の発売が1971年1月でした。頭にパイオニアのPが記される規格番号8000から始まる日本盤、所謂ワーナー8000番台がこれよりスタートします。
この頃の貴重なカンパニースリーブとなる内袋があったので紹介します。
本作【アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ】の規格番号は「P-8002R」。つまりワナパイの栄えある第1回発売カタログの1枚だったんですね。
ここでワナパイ初期作品を列記しますと、
P-8001W【スイート・ベイビー・ジェイムス】ジェイムス・テイラー
P-8002R【アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ】ニール・ヤング
P-8003R【いたち野郎】マザーズ・オブ・インヴェンション
P-8005A【レッド・ツェッペリンⅢ】
P-8007W【アメリカン・ビューティ】グレイトフル・デッド
P-8009R【ワシントン・カウンティ】アーロ・ガスリー
P-8010R【キルン・ハウス】フリートウッド・マック
と続いていきます。
規格番号の末尾のローマ字は原盤レーベルの頭文字です。「W」はワーナー、「R」はリプリーズ、「A」はアトランティックです。ワーナー作品だけでなく、当時ワーナーが買収していたアトランティック、リプリーズの作品も発売していたことが分かります。
〜ワナパイはCSN&Yを贔屓??〜
本作の日本初回盤を聴いてみると、なかなか元気が良いです。米国リプリーズ再発盤と比べてみても、ほぼ遜色のない良音盤でした。通常は本国から送られるマスターテープのコピーから製作されるので音質は劣る傾向があるのに、これは日本盤にしては音が良い。何故でしょう?? 私は、最近これに気付きました。
日本盤の内周部を見てみると「P-8002R」の刻印がある一方で、日本製品を証明するJISマークがグチャグチャに消されているのです。どうも日本国内で一から製作した盤ではなく、米国から輸送されたスタンパーかマザーでプレスした盤と考えて良さそうです。
さて、そこで紹介したいのが、ニール・ヤングと関係の深いCSNの日本盤です。3人は共に原盤はアトランティックなのでニールと同じワーナー・パイオニアからのリリースです。その中で私の知る限り、次の写真の2作は米国スタンパー仕様なのでした。
ただし写真をご覧の通り、どちらも見本盤。もしかしたら初回プレスだけの対応だったのかもしれません。
いずれにせよ、当時のCSN(Y)人気は日本でもかなり盛り上がっており、創業間もないワナパイにとってCSN(Y)関連は、最もプッシュしたい強力な売り物だったに違いありません。ならば抜群の音で発売したかった……そんな会社の思惑もあったかと思うんですよね。想像です。今後も探索を続けます。
Side-A
①"Tell Me Why"
ニールのアコースティックギター弾き語り。シンプルで覚えやすいメロディが印象的です。当時バックを務めたクレイジー・ホースのメンバーもコーラスに加わって、CSNYとは違った開放的な雰囲気がイイ。
②"After the Gold Rush"
ニールがピアノで歌い上げる表題曲。何と美しい旋律でしょうか。ちょっと頼りない歌声がここではかえって沁みます。後半フリューゲルホーンが入る所もアクセント。心が洗われるようなニールの名曲です。
③"Only Love Can Break Your Heart"
これも素敵。こういう曲をサラッと書いてしまうニール・ヤングってやっぱり才人です。ジョニ・ミッチェルと破局したグラハム・ナッシュを想って書いた曲だとか。ワルツのリズムに乗ったシンプルな歌ですが、心なしか切なさがこみ上げます。
④"Southern Man"
ニールのザクザクと刻むようなヘヴィなギターが前面に出た代表曲の1つ。南部人は差別的だという歌詞が波紋を呼びました。悲痛な叫びのような歌にもグッときます。クレイジー・ホースの演奏もしっかりとニールの痙攣ギターをサポート。ロックしてます!
Side-B
③"Birds"
これも引き込まれるような美しい曲です。ニールのピアノの弾き語り。祈りにも似た神聖な佇まいが素晴らしい。
④"When You Dance I Can Really Love"
本作 "Southern Man"と並ぶロックナンバー。メンバーはニール(vocal, guitar)にDanny Whitten (guitar), Jack Nitzsche(piano), Billy Talbot(bass), Ralph Molina(drums)という当時のクレイジー・ホースが勢揃い。歌、演奏ともに気心を知れた者同士といった一枚岩のような結束を感じます。これぞロック!
本作は曲の良さもさることながら、クレイジー・ホースとの相性もバッチリ。リラックスした歌声、時に2本のギターが激しく轟くサウンドは、当時ニールが平行して活動したCSNYでは味わえなかった別腹だったのでしょう。シンプル・イズ・ベストの名盤です。