【Thunder Island】(1977)Jay Ferguson アサイラムの能天気な爽快ポップス
1970年代、イーグルスやジャクソン・ブラウンが在籍したアサイラムレコードには、才能溢れる個性的なアーティストが沢山いました。
レーベル発足の1972年にデビューしたジョ・ジョ・ガンというハード寄りのバンドが、マニアックながら私は結構好きなのですが、そこでボーカル、鍵盤、曲作りを担当していたのが、このジェイ・ファーガソンです。
60年代からスピリットという西海岸のサイケデリック寄りのバンドで活躍、その後ジョ・ジョ・ガンとしては4枚のアルバムを発表して解散。1976年にソロ・デビューして、翌年に発表した2ndアルバムが本作です。
このアルバムのタイトルトラック「サンダー・アイランド」が私は大好きで、夏になると決まって何度も聴きたくなるのです〜。
米国アサイラムレコードのUS盤です。
この空に浮かぶ扉?のデザインのレーベル、これです!アサイラムと言えばこの印象が強いですねぇ。
ジェイ・ファーガソンは、ジョ・ジョ・ガンの頃からリフ有りきな作風が多く、特にシンコペーションを多用したエッジのあるリフが得意で、そこにポップなメロディをハメていくような曲が多いです。
鍵盤奏者ですが、メロディを紡ぐというよりリズム重視の作風ですね。
とにかく徹頭徹尾ポップ。そんな作風にリゾート感覚が合わない訳がなく、本作はジャケット通りの ‘’夏男‘’ っぷりに振り切ったような曲のオンパレードです。
本作は何と言ってもオープニングトラックのA-①「サンダー・アイランド」。彼のキャリア史上最大のヒット曲(全米9位)です。
小気味のいいギターストロークから始まり、♪チュルルル、チュルル〜、と爽やかなコーラスが被さった覚えやすいリフレインが、とてもポップで心地良いです!
間奏に入るスライドギターはイーグルスの ジョー・ウォルシュ。
彼とは本作のプロデューサーのビル・シムジックを介して知り合ったと思われますが、非常に繋がりが深く、1stソロ作やジョーのライブ盤でも共演。本作でも数曲でリードギターを弾いてます。
この曲を聴くと私の脳内ではリプレイされ続けます笑 中毒性あります!夏にはピッタリ。ジェイ・ファーガソンも念願のヒット曲が出てメデタシです。
アルバムの流れで耳を奪われるのが、B面頭の2曲なんですが、ここでは何とシンセベースが大胆に割り込んできてビックリ!時代を意識した音作りで一瞬面食らいます。
といっても同時代のスティーヴィー・ワンダーのようなファンキーなものではなく、あくまでポップな味付け。そこら辺が、生まれも育ちもL.A.のこの人らしいかもしれません。
中でもB-②「バビロン」はジョ・ジョ・ガンの1stアルバムからのリメイク。
オリジナルバージョンはメンバー4人だけの素朴な演奏なのですが、ここでは件のシンセベースに加えてレゲエビートを織り込んだゆったりと豪勢なアレンジにアップデート。 結構な様替わりです。
しかし違和感は無く、落ち着くべき所に落ち着いたようなアレンジでなかなか映えてます。ジェイ・ファーガソンの作風には少し過剰な位が良いのかもしれません。
他にもレゲエビートなど裏打ちリズムを強調したアレンジが本作では目立ちます。
軽やかなリズムだけを拝借して、安直な南国リゾート感の演出とも言えなくはないですが…。イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」もリズムギターはレゲエ風でした。流行りでしょうね。
珍しくバラード調のB-③「ラブ・イズ・コールド」も私が勝手に浮かぶのは、都会の夜景ではなく、浜辺から眺める日没の水平線。
明らかに本作はリゾート志向狙いのサウンドプロダクションなのですが、当時のリスナーが味わったであろう南国風情を噛みしめながら私などは楽しく聴いてます。やや単調ですがね笑
レコード会社には何となく各々のレーベルカラーがありますが、アサイラムのある種、陽気で能天気?! な部分をそのまま持ってきたのがジェイ・ファーガソンだと個人的には思ってます笑
陽気な中にも切ない甘酸っぱさがあるのも西海岸ポップス。ジェイ・ファーガソンにもそれを濃厚に感じるのです。