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【Let It Flow】(1977)Dave Mason メロウなデイヴ・メイスンの傑作

元トラフィックのメンバーだったデイヴ・メイスン。本作は私が初めて聴いた彼のアルバムでした。

昔、20代の頃に友人に貸した一万円がなかなか返らず、何度かの催促の末に現物で頼むと泣き付かれ、古びたレーザーディスクプレーヤーと数枚のCDで返済される、なんてことがありました。

仕方ないなと受け取ったCDの中に本作が入っており、聴いてみたらこれが思いのほか良かった! …というショウモない思い出話なのですが、不意に感動したアルバムほど忘れられないもので、以来私にとって本作は愛着あるアルバムなのです。

デイヴ・メイスンって良い音楽やってるのに評価が今ひとつ低いとよく言われます。
英国ロッカーの中でもいち早く米国のスワンプロックに注目して素晴らしいソロアルバムも出しているのに、同じような歩みだったジョージ・ハリスンやエリック・クラプトンと比べるとやっぱり過小評価に感じますね。

そんな風潮なので、以降のデイヴ・メイスンの作品に至っては再評価どころか、ほぼ語られることがないのが残念なところです。
この70年代中期のメイスンもなかなか素晴らしい作品を残しており、見過ごせない時期だと思うのです。

米国コロムビア・レコード初期盤 (AL 34680)

メイスンは1973年に、古巣のブルーサムからコロムビア・レコードに移籍しますが、ここから音楽性も方向転換。この時期はドップリ米国西海岸のサウンドへと傾倒しています。

自ら率いるバンドが奏でる乾いたサウンドと絶妙なコーラスワークは、もう殆ど米国人ではないか?と疑ってしまうほどで、作品では【デイヴ・メイスン】(74年)【スプリット ・ココナッツ】(75年)と佳作を連発。
また【ライブ〜情念】(76年)という傑作ライブ盤も発表しており、自作曲を中心に演奏面でも最も脂がのっていた時代だっただろうと思います。

本作【Let It Flow】(邦題: 流れるままに)は、そんな彼の集大成といえる作品。何よりズバリ、本作は曲がイイんです!
バンドメンバーのジム・クリーガー(ギター)が書いた"We Just Disagree" を始め、ヒット性のあるメロウでキャッチーな楽曲が揃ってアレンジも華やか。デイヴ・メイスンの数ある作品の中でも特に質の高いものになっています。

Side-A
① "So High (Rock Me Baby and Roll Me Away)" (J.Conrad, M.Williams) 4:08
② "We Just Disagree" (J.Krueger) 3:00
③ "Mystic Traveler" (D.Mason)5:00
④ "Spend Your Life With Me" (J.Storch) 3:22
⑤ "Takin’ The Time To Find" (Mason)4:30

Side-B
① "Let It Go, Let It Flow" (Mason)3:16
② "Then It’s Alright" (Mason)4:15
③ "Seasons" (A.Gagliano) 4:48
④ "You Just Have To Wait Now" (Mason)3:06
⑤ "What Do We Got Here?" (J.Krueger) 4:20


A-① "So High (Rock Me Baby and Roll Me Away)"
イントロの乾いたギターからしてまさしく西海岸!ドライな風を感じます〜。
程よくポップなメロディに若干渋みあるメイスンの歌声がマッチ。本作の性格を印象付ける最高のオープニングです。


A-② "We Just Disagree"
2ndギターのジム・クリーガーが書いたメイソン最大のヒット曲(全米12位)。名曲!
美しいメロディをより引き立てているのが、バッチリと決まったコーラスワーク。 演奏もさることながら、この時期のメイスンバンドはコーラスも鉄壁です。
ジム・クリーガーはこの曲のヒットがきっかけとなり独立。メイスンにとっても複雑な一曲だったかと思います。


A-③ "Mystic Traveler"
ようやく英国人らしい叙情的なメロディはメイスン本人の自作曲。良い曲書きます。ここまで3曲の流れが物凄くイイんです(^^)
とはいえ、アレンジ的には派手なストリングスが施され、サビではハープ?の弦を弾く音色などゴージャスな装いです。
曲によって若干オーバープロデュース気味なのが唯一本作の鼻に付く所なのですが、この曲に関してはいいアクセントになっています。ギリギリセーフですね 笑


B-① "Let It Go, Let It Flow"
軽快でライト、いかにもL. A.ポップ風なナンバーです。こちらもこの時期のメイスンを代表するヒット曲。
1978年3月に行われたカリフォルニア・ジャム2でのライブ映像がありました。
ファンキーなオルガン奏者はこの頃のメンバーだったマイク・フィネガンでしょうか。 全体にギターも歌もハーモニーを大切にしているのが伝わる演奏です。しかしやってる音楽はまんまアメリカの音楽ですね。


泥臭いスワンプ・サウンドの頃とも違った、マイルドな爽やかさが魅力のデイヴ・メイスン。春らしくなってくると聴きたくなります。いまの季節にピッタリのアルバムです。


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