見出し画像

【Eat a Peach】(1972) Allman Brothers Band デュアン・オールマン追悼の2枚組

米国サザン・ロックの雄、オールマン・ブラザーズ・バンドの長い歴史もグレッグ・オールマンの死去(2017年)で遂に幕を閉じてしまいました。

これまでも幾度となくメンバーの出入りや解散を繰り返す波瀾万丈の道程でしたが、グループの命運を左右した最大の分岐点と言えばやはり1971年のデュアン・オールマンのオートバイ事故死だったように思います。

あの悲劇さえなければと思うロックファンは沢山いるのではないでしょうか?? 

これ以降のバンドはメンバー間の力関係に振り回され、デュアンの幻影を追い、弟グレッグの存在に至っては時に屋号を守る為だけに借り出されていたような印象さえあります。もしデュアン存命だったならば全く違った運命を辿っていたでしょうね。 

さて本作【イート・ア・ピーチ】はそのデュアンの死を挟んで製作されたアナログ盤では2枚組だった作品です。
デュアン存命中スタジオ録音、フィルモアでのライブ録音、デュアン死後スタジオ録音、と大きく3つの時期に録られた内容です。

ドキュメント性が強く、まだ悲劇から日の浅い追悼作というイメージが色濃い作品ですが楽曲、演奏ともに充実していて、メモリアル盤とはいえ素晴らしいアルバムです。

(アナログレコード探訪)

〜スタジオ録音の曲は音イマイチ??〜

米国キャプリコーン・レコード (2CP 0102)
このベージュ色レーベルが初回72〜74年のプレス。

サザン・ロックのような豪放なジャンルに音質を求めるのも違うかな??と私が持っているのはこの米国盤のみです。

今までに2~3組の米国盤を聴きましたが、どうも本作のスタジオサイドの音はクッキリしないんですよね。正直フィルモアのライブ・サイドの方が音は良いと思います。
それでも何だかんだ米国盤の太い音で聴くのが1番合ってるかと思います(多分)。

キャプリコーンは1980年に倒産しますが、その間のプレスならそこそこ良いと思います。レーベルのデザインだと、ベージュ色の後は山羊(右向き)、山羊(左向き)で終了します。

そう言えばアナログ盤では "Mountain Jam" のB面の続きがD面へと離れているんですよね。最初はプレスミスかと思いました〜。
私はCDの曲順 "Little Martha" のエンディングに慣れているので違和感がありますね。

日本盤の初回はワーナー・パイオニア盤(P-5047~8w)です。私は未聴ですがパイオニア盤のキャプリコーン関連はかなり音がこもっていた印象です。【ブラザーズ&シスターズ】(73年)やウェット・ウィリーの作品などかなりこもり気味です。
その後1975年以降は日本ビクターに版権が移り再発されています。

内ジャケットは夢のような桃源郷。きのこのイラストは後年、オールマンのロゴとして登場します。


Side-A
① "Ain't Wastin' Time No More"(G.Allman)3:40
② "Les Brers in A Minor" (Betts) 9:03
③ "Melissa" (G. Allman) 3:05

Side-B
① "Mountain Jam" (live)(Leitch, D. Allman, G. Allman, Betts, Oakley ,Trucks ,Johanson)19:37

Side-C
① "One Way Out" (live) (James, Sehorn, Willia-mson II)4:58
② "Trouble No More" (live)(Waters)3:28
③ "Stand Back" (G. Allman, Oakley)3:25
④ "Blue Sky" (Betts) 5:10
⑤ "Little Martha" (D. Allman) 2:08

Side-D
① "Mountain Jam" (live)(Leitch, D. Allman, G. Allman, Betts, Oakley ,Trucks ,Johanson)15:06


A-① "Ain't Wastin' Time No More"
A面3曲はデュアン没後の録音です。バンドの新たな決意を伝える曲ですが、グレッグの弾くピアノ、歌にもどこか哀感が漂います。
全編で聴こえるディッキー・ベッツのスライドギターは敢えてデュアンに似せたプレイでしょうか。虚無感ある佳曲です。

A-③ "Melissa" 
生前のデュアンが好きだったというキャリア初期からの曲。ここでは情感込めたグレッグのボーカルが胸に迫ります。

B-①〜D-① "Mountain Jam" 
ドノヴァンの楽曲をモチーフに拡大解釈で繰り広げられる33分のジャム・セッション。
正直私は苦手なのですが、改めてちゃんと聴いてみると、主題の後にデュアン→ディッキー→グレッグ→ブッチ&ジェイモア→ベリーと各ソロを回して主題に戻る展開。
ゆる〜い演奏の中で各楽器が自由に会話をしているようです。少し好きになれたかも(^^)

C-③ "Stand Back" 
ここから3曲、デュアン存命中の録音はどれも良いのですが、中でも粘り腰でいかにもサザン・ロック風味のこの曲が好きです。
手数多いツインドラムをバックにデュアンのギターも冴えまくり。グレッグの声も渋い!

C-④ "Blue Sky" 
ディッキー作のボーカルも朗らかなカントリーテイストの一曲。その後のオールマンに見られる彼らしい楽曲です。長いギターソロはデュアンからディッキーへと繋がります。

C-⑤ "Little Martha"
デュアン&ディッキーによるアコースティックギターのインスト。美しい小品です!
レコーディングの合間に録られた曲なのでしょうか。直後に襲う悲劇を思うと何とも切なく儚いギターの音色です。本作はこの曲の余韻に浸りながら終わりたいですよね。

ジャケットのグラデーション色彩のように、何かフワッとした魅力のアルバムです。
聴くたびに、もしデュアンが生きていたらどうなっていたんだろう…とついつい想像してしまう作品です。
グレッグも逝った今となってはまた別な感慨が浮かびそうです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?